EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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ビジョン実現に必要なもの
軟質プラスチックによる包装の将来的な理想は、次のとおりです。
- サステナブルな包装材は、現在使⽤している素材より安価で、商品の品質保持に優れ、消費者の⽬を引くものである。
- 処分時には、リサイクル、クローズド・ループ・システム、有害・汚染物質ではない有機物へのコンポスト化または⽣分解によって最終的に経済的価値のあるアウトプットが⽣産される。
- 生産に必要な化学薬品や材料が⼗分に確保でき、それらを使用した製品が環境・社会に悪影響を及ぼさない。
- 使⽤技術は検証済みのもので、複雑な機械や設備が正常に機能するよう適切な投資を行う。
- 新しいプレイヤーが既存のプレイヤーと協⼒し、新しいエコシステムが構築される。
- プロセスは、世界的に⼀貫した法令・インフラ環境下で、全地域で⼀様に展開される。
- 回収体制が整備され、リサイクルとコンポスト化が消費者⾏動として定着する。
消費財企業はこの理想郷への道のりを歩み始めたばかりですが、単独で、あるいは孤⽴して問題解決に取り組むことはできません。⾃社、消費者、社会のための⻑期的な価値創出に向けて前進するには、次のような⽅法があります。
- 社内エキスパートを連携させる
現⾏の樹脂フィルムを⽣分解性の材料で代替するにしても、軟質プラスチック⽤クローズドループ・リサイクル・システムを開発するにしても、社内で各分野のエキスパートが⽅向性を同じくする連携が必要です。プロダクトマネジメント、サプライチェーン、研究開発、調達、戦略部隊、そして⾔うまでもなくサステナビリティ部⾨が協働し、最良の移⾏計画を策定しなければなりません。どの選択肢でも新興技術が関連してくるため、⽅向性と試験計画について⾜並みをそろえることが極めて重要です。
- 商品と消費者の見直しを行う
この機会を捉えて基本事項を⾒直し、包装に対する最適な要件を定め、より⾰新的な選択肢や対策を検討しましょう。また、製品にとって何が必要不可欠であるのかを把握することは、消費者の使⽤状況や嗜好の把握と同様に、包装で使⽤する軟質プラスチックを削減する戦略策定の指針となります。
- 法令の一歩先を行く
無数の規則や優遇策、税⾦、法令に首尾よく対応し、政府の措置に対して有利な⽴場を維持するには、絶えず状況の監視を続ける必要があります。理想的なのは、使い捨てプラスチックの禁⽌・プラスチック包装に対する課税、国境炭素調整などの法令に先んじてサステナブルな包装への取り組みを進め、優遇策を利⽤することです。また、⼤規模な移行を進める上で、政府への助⾔やロビー活動を積極的に行うこともできるでしょう。
- 健全なエコシステムを形成するパートナーシップを組む
⾃社にとって適切なエコシステムのビジネスモデルを特定し、⾃ら企画運営に携わるべきエコシステムと、単に参加するにとどめるエコシステムとを⾒極める必要があります。同業・競合他社と協⼒すれば⼤規模展開が可能となるだけでなく、リスクと恩恵を共有するルールを明確に定め、合意することで競争上の懸念事項にも対応できます。⾮営利団体、政府組織、⼤学、研究機関などとのパートナーシップを活⽤すれば、プラスチック削減の取り組みとコストを分担しながら、リサイクル性、コンポスト化、ラベル付けの基準も確⽴できます。消費財企業はバリューチェーン全体でパートナーシップを組むことで、ケミカルリサイクル業者や⽣分解性プラスチックメーカーと共同で投資し、費⽤対効果の⾼い素材と将来的な供給が確保できます。
- 消費者を巻き込みソリューションの一部とする
消費財企業は消費者の⾏動に影響を及ぼすことに熟達していますが、消費者と地域社会がリサイクルにおける役割をきちんと果たせるよう、普及には適切なタイミングを見計らうことが鍵となるでしょう。まず、新しい⾏動や習慣を取り⼊れるよう消費者に働きかけてリサイクル活動に巻き込み、啓発していかなくてはなりません。例えば、軟質プラスチックのケミカルリサイクルを⾏うには、消費者に軟質プラスチックがリサイクル可能であることを学んでもらい、正しくリサイクルに出してもらう必要があります。また、⾃治体には単一ストリーム・リサイクリングの導入と、ケミカルリサイクル業者が再生素材を入手できる分別システムが要求されます。⽣分解性包装の場合は、消費者が各家庭でコンポスト化に協力しなければ、他のプラスチックと同様に埋め⽴て処分をしなければなりません。いずれの場合も、企業は適切なリサイクルの習慣を促し、有益な情報をラベルに表示するなどして、課題解決の一翼を担う必要があるでしょう。
もはや現状維持は許されませんが、サステナブルな包装に関する技術が初期段階であることを考えると、経済面で現実的な⽅策を⽣み出すのは何年も先のことになるかもしれません。開発の初期段階では、複数の技術に投資し、有望な技術の実現可能性と費用対効果を⾒極めることが最も堅実なアプローチでしょう。いったん決まれば、その技術を迅速に⼤規模展開し、必要な材料を問題なく供給するために集中投資が必要となります。
同業他社やバリューチェーン全体で連携することで、特に調達⾯でのリスクとコストの管理が可能となると同時に、需要を押し上げ、事業規模拡張が実現できます。
本稿に関しては、Ernst & Young LLPのMark Weick、Matt Handford、Minhaj Baqai、Morgan Cole、Melissa Harariの諸氏のご協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。