2024年12月期オーストラリア国民経済計算: 厳しい2025年に向け、経済はなんとか落ち着きを取り戻しつつある

2024年12月期オーストラリア国民経済計算:厳しい2025年に向け、経済はなんとか落ち着きを取り戻しつつある


要点

  • 国内総生産(GDP)は、政府支出の増加、家計支出の回復、輸出の持ち直しにより、10~12月期は0.6%増、通年では1.3%増となった。
  • GDPに占める公共部門の需要は過去最高を記録した。
  • 一方、民間投資は低迷を続け、住宅投資は成長に寄与しなかった。

チーフエコノミストより

2024年末のオーストラリア経済は、家計がやや潤い、政府支出が好調で、輸出が持ち直したことで、少し落ち着きました。国内総生産(GDP)は7~9月期の0.8%から1.3%へと上昇し、少し楽観的な見方もできるようになりました。

実質賃金の伸び、2024年半ばからの個人所得税減税、政府支援、利下げへの期待(2025年2月に実現)などにより、裁量支出を含む家計消費は穏やかに好転すると思われます。これらの要因は2025年を通じて続くと予想され、もしかすると、もう少し強力なサポートになるかもしれません。

しかし、企業投資はGDPの数字をほとんど押し上げず、8年ほど前からGDPの11~13%の間で推移しています。

先週発表された設備投資意向調査では、来期の設備投資見通しは非常に厳しく、2024/25年度の設備投資額を最初に試算した時点と比較し、来期は1.8%増にとどまると企業は回答しています。これは建設インフレの鈍化も考えられますが、投資意欲の減退を反映している可能性も大きいでしょう。

米国、カナダ、メキシコ、中国による貿易戦争がここ数日で大幅に悪化していることから、企業、特に輸出企業にとって当面の先行きが不透明であることは間違いありません。熾烈な選挙戦が繰り広げられるオーストラリアの選挙も、その結果を注視している企業にとって支出計画に多少の慎重さを生じさせるかもしれません。

残念なことに、労働生産性は第4四半期にさらに0.1%低下し、年間では1.2%低下しました。実質労働コストは年率2.3%に上昇しました。国内物価上昇率は3.5%でしたが、国際物価はこの上昇率を多少相殺してくれました。インフレは、オーストラリア準備銀行が望んでいるほどには、まだ落ち着いた状態にはありません。発表された数字は、主に労働市場の逼迫がどうなるかという不確実性から、オーストラリア準備銀行が短期的な追加利下げに慎重な姿勢を示していることを示唆しています。

国民経済計算では、政府部門が膨張し続けていること、そしてそれがまだ多少生産能力に制約のある経済状況下で、どのように作用するかについて注意を喚起しています。人口の高齢化と医療ニーズに関連する政府支出に加え、国防費が予算の大部分を占めているため、政府の追加支出は財源とインフレを悪化させるだけです。

このような厳しい時期における政府の役割は、生産性向上を通じて経済の能力を引き上げることに集中することです。競争政策に関する改革など、いくつかの改革はまさにそれを実現しつつありますが、それ以上に税制を含めた改革が必要です。税金がより効率的に徴収され、個人所得や企業所得からの徴収が減れば、投資を促進するためのより良い条件が整うでしょう。

2024年12月期の国民経済計算を10枚のチャートで見る(英語版のみ)

公共部門支出の割合が過去最高を更新

公共部門は引き続き経済に多大な貢献をしており、公共消費と投資は共に10~12月期の成長率に0.3%ポイント寄与しました。GDPに占める公的需要の割合は上昇を続け、28.2%と過去最高を更新しました。次期選挙期間に入り、財政がさらに悪化するリスクがあるため、経済に占める公的需要の割合は引き続き高まっています。

過去最高の投資水準となった10~12月期の公共投資は1.8%増加し、GDPに0.1%ポイント寄与しました。これは、州・特別地域政府が公共交通、道路、水道、再生可能電力インフラに支出したことによります。公共投資は年間ベースで8.1%増加しました。

政府消費は0.7%増加し、GDPに0.1%ポイント寄与しました。主に、保健、教育、警察に対する州・特別地域政府の支出が0.8%増と大きく伸びたためです。公共消費は引き続き年間ベースで増加しており、7~9月期の4.7%から5.1%に増加しました。GDPに占める割合は22.4%と、パンデミック前の10年間の平均18%を大きく上回る高水準を維持しています。

家計消費に回復の兆し

10~12月期の家計消費は0.4%増加し、成長率に0.2%ポイント寄与しました。年率換算では、家計消費は0.7%まで回復しましたが、家計が依然苦境にあるため、パンデミック前の長期平均2.6%を大きく下回っています。

家計貯蓄率は2四半期連続で上昇を続け、10~12月期には3.8%に達しました。とはいえ、家計が必要なときのために蓄えておける可処分所得は、パンデミック前の10年間の平均値である6%超を下回っています。

消費者が家賃や健康への支出を増やしたため、必須支出は0.5%増加しました。これは政府のリベートのおかげで電気料金が減少したことで多少相殺されました。家計は、ブラック・フライデー・セールや音楽、スポーツ、イベントにより、裁量的支出を0.4%増加させました。商品への支出は、3四半期連続の減少の後、10~12月期は0.6%の増加となりました。

家計消費は2025年には回復し、成長により大きく貢献すると予想されます。雇用市場が依然堅調で、オーストラリア準備銀行による追加利下げ(限定的ではありますが)が見込まれる中、消費者信頼感の上昇がこれを後押ししています。

住宅投資は依然コストと労働圧力により低迷

住宅投資は3四半期連続の成長を遂げた後、12月期はGDPへの寄与を果たせず、0.4%の減少となりました。価格圧力と労働圧力、そして着工件数の減少が依然として住宅プロジェクトのパイプラインを圧迫しています。年間では、住宅投資は2.5%増加しました。増改築は今期0.9%減少しましたが、年間では1%増加し、2022年第1四半期以来の伸びとなりました。不動産市場の売買が低調であったため、今期の所有権移転費用は0.2%の増加にとどまりましたが、前四半期の7%超から年間では3.2%へと緩和されました。

生産性の伸び悩みと単位労働コストの再上昇によるインフレリスク

10~12月期の労働時間は0.7%増加しましたが、労働生産性(労働時間1時間当たりGDPで測定)は0.1%低下しました。生産性の伸びは年率換算で1.2%低下し、2四半期連続でマイナス圏にとどまりました。実質単位労働コストは今期0.6%増加し、年率換算では9月の1.8%から2.3%に上昇しました。生産性の伸びは依然、パンデミック前の長期平均の1.2%を大幅に下回っており、単位労働コストを相殺し、インフレの上振れリスクを排除するためには、持続的な改善が必要です。

労働市場の状況は依然厳しく、経済全体の賃金または雇用者報酬(COE)は10~12月期に2%、通年では6.1%上昇し、これは2023年第2四半期以来の高い伸び率です。この指標は、従業員数と労働時間の伸びも反映しているため、緩やかな賃金価格指数(12月までの1年間で3.2%)とは対照的です。

企業利益は四半期ベース(1.1%増)、年間ベース(0.5%増)共に増加しました。鉄鉱石、液化天然ガス(LNG)、金の価格上昇により、鉱業部門が主な原動力となりました。卸売業や運輸業などの非鉱業部門も、穀物輸送の需要増により上昇に貢献しました。

国内価格上昇圧力が続く中、交易条件は改善

オーストラリアの交易条件(輸出価格と輸入価格の比率)は2023年12月以来初めて上昇し、当四半期は1.7%上昇しました。これは、鉄鉱石、金、LNG価格の上昇による輸出価格の2.5%増によるもので、豪ドル安による輸入価格の0.8%上昇により一部相殺されました。

国民経済計算による10~12月期の国内物価上昇率は0.8%で、前期と同水準でした。労働コストの継続的な上昇を反映し、年間ベースでは国内物価は3.5%と高止まりしています。家賃、航空運賃、宿泊費の上昇も引き続き物価上昇圧力となりました。

10~12月期の国際物価は、豪ドル下落による輸入価格の上昇によって、0.8%増加しました。しかし、10~12月期までの1年間では0.5%の下落となり、年率換算では6四半期連続のマイナスとなりました。

10~12月期の基礎インフレ率は年率換算で3.2%に低下し、目標をわずかに上回りました。オーストラリア経済の物価圧力は引き続き国内要因に起因しています。オーストラリア準備銀行は、総需要と総供給が均衡に向かっていることから、物価の緩和が続くとの確信を強めていますが、労働市場の逼迫による影響については依然として懸念しています。

民間投資は引き続き低迷の傾向

民間投資は成長率に0.1%ポイント寄与し、10~12月期は0.3%の穏やかな上昇となりました。通年の民間投資は、7~9月期の1.4%から0.8%へと減速を続けています。

上昇の主な要因は企業投資で、鉱業と再生可能エネルギープロジェクトによる非住宅建設が0.6%増加したため、10~12月期は0.7%増加しました。これは、機械・設備投資の0.3%の減少により相殺されました。

年間を通して、企業投資は前四半期の1.3%増に続き、2020年以来初めて0.1%減となりました。名目GDPに占める企業投資の比率は比較的横ばい(GDPの12%強)です。依然としてパンデミック前の水準を上回っていますが、歴史的なベースではかなり低い水準です。投資は引き続き非鉱業部門に集中し、当四半期は1.1%増加しましたが、鉱業投資は0.9%減少しました。

2025/26年の設備投資計画に関する最初の見積もりは前年比1.8%増となりましたが、これは他の最初の見積もりに比べると低調です。これは名目ベースの数字であるため、建設コストの緩和が影響している可能性もありますが、現在の不透明な環境下で企業が投資計画に慎重になっていることの表れである可能性もあります。

サービス輸出が伸び、純貿易が成長に寄与

純貿易は、輸出の0.7%増を、輸入の若干の0.1%増が相殺し、10~12月期の成長率に0.2%ポイント寄与しました。

10~12月期のサービス輸出は3.4%の堅調な伸びとなりました。これは、製薬およびコンピューターソフトウエア部門における知的財産権サービスの増加や、為替の恩恵を受けた米国からの海外旅行者の増加を反映したものです。商品輸出は0.1%のわずかな増加にとどまりましたが、これは好天に恵まれたことで農作物生産量が増加したため、地方商品が増えたことによります。

商品輸入は、家庭用電気自動車の需要増により1.1%増加しましたが、サービス輸入が2.5%減少したことで相殺されました。サービス輸入の減少は、オーストラリア人の海外旅行先が、7~9月期にはオリンピックのあったヨーロッパに集中したものの、今期は比較的安価なオーストラリア近辺にシフトしたことによります。

一方、在庫は0.1%ポイント増加しましたが、これは主に電気自動車とハイブリッド車の輸入が増加したことによる小売業の増加と鉱業在庫によるものです。


サマリー

10~12月期の経済成長率は0.6%、年率換算では1.3%となりました。オーストラリア経済は、2025年末にかけて、家計がやや潤い、政府支出が堅調に推移し、輸出とコモディティ価格が持ち直したことで、少し落ち着きました。



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