2025年12月期オーストラリア国民経済計算:  需要は回復するも、供給制約が成長の制約に

2025年12月期オーストラリア国民経済計算:需要は回復するも、供給制約が成長の制約に


関連トピック

要点

  • 10~12月期の国内総生産(GDP)は、0.8%増、通年では2.6%増となった。 
  • 公共および民間部門の需要の双方が成長に寄与した一方で、純輸出は成長を押し下げる要因となった。 
  • 経済全体で物価上昇圧力が続く中、供給能力の制約により、潜在的な成長率は抑えられている。


2025年末のオーストラリア経済は、データセンターへの投資に支えられたほか、牛肉輸出の増加や、AC/DC、Metallica、Oasis のコンサート、さらにクリケットの試合シリーズであるアッシュズの開催によって、宿泊業や交通関連分野が押し上げられました。

GDP成長に対するその他の主な要因としては、航空機への投資が高水準で推移したことに加え、集合住宅建設の回復、州政府および連邦政府によるインフラおよび防衛分野への継続的な支出が挙げられます。在庫水準の変動も今期の成長に一定程度寄与したとみられますが、これは主に前期の弱さが反転したものであり、国内需要全体としては堅調に推移しました。

輸入の増加が輸出を上回ったことから、純輸出は成長を押し下げる要因となりました。輸入が増加した背景には、新型スマートフォンへの需要の高まりに加え、連邦政府による家庭用蓄電池への補助金制度を受けたリチウム電池の輸入増があります。一方、鉄鉱石価格の高止まりや金価格の過去最高水準、さらに年末にかけての操業再開が進み生産活動が活発化したことを背景に、鉱業部門の利益は拡大し、所得面から経済活動を押し上げました。こうした動きは一時的な追い風ではあるものの、法人税収の増加を通じて、財政収支の改善にも寄与すると見込まれます。

GDPの前年比成長率2.6%は、パンデミック前の10年間に見られた水準とおおむね同程度です。しかし今回は、高インフレを伴っている点が大きな課題となっています。

これは、経済が潜在成長率を上回って推移しているためです。失業率が4.1%まで低下したことや、設備稼働率の指標が上昇していることも、その兆候を示しています。実際の成長率は、市場予想の中央値や、2月に更新されたばかりのオーストラリア準備銀行(RBA)の予測を上回る結果となりました。

2026年に入り、RBA はすでに0.25ポイントの利上げを実施し、需要の抑制に踏み切っています。今後も、需要の伸びが供給制約のある経済の潜在力に見合う水準に鈍化するまで、引き締め姿勢を継続するとみられます。

さらに足元では、中東情勢の緊張を背景に原油価格が上昇し、国内のガソリン価格や輸送コストの上昇につながる可能性があり、新たなインフレ要因が加わっています。これが一時的なものにとどまるかどうかは、今後の情勢次第です。

経済の供給能力の不足は、これまで所得回復や消費拡大の恩恵を受けてきた消費者の重しとなりつつあります。現状を改善するためには、投資の拡大、イノベーションの促進、そして生産性の向上が不可欠です。

国民経済計算では、労働生産性が近年より改善しており、12月までの1年間で1.0%の上昇が見られました。また、最近のデータでは設備投資計画についても前向きな見通しが示されており、今後の企業投資拡大につながる兆しと考えられます。ただし、こうした改善が一時的なものにとどまらず、投資やイノベーションが経済の供給面の強化につながっていることを経済全体として明確に示す必要があります。

今回の国民経済計算は、政府が今後策定される2026~27年度予算において、生産性向上に向けた取り組みをさらに前進させる必要性を浮き彫りにしています。


2025 年 10~12 月四半期の国民経済計算を 10 枚のチャートで見る(英語版のみ)


家計消費の伸びは引き続き高水準を維持

家計支出の伸びは、堅調な労働市場、2025年を通じた利下げ、そして主に住宅価格上昇による資産効果を背景に、高水準を維持しました。家計消費は前期比0.3%増となり、成長率に0.1ポイント寄与しました。前年比では2.4%増となり、前期の2.6%増をやや下回りました。

家計は裁量的支出を拡大しており、ブラックフライデーのセールや大規模なスポーツイベント・コンサートが開催されたことにより、当該支出は前期比0.4%増となりました。一方、インフルエンザが長く流行したことによる医療関連支出の増加から、必需的支出も0.2%増加しました。ただし、政府支出として計上された電力料金補助の拡大が、こうした増加の一部を相殺しました。

家計貯蓄率は2四半期連続で上昇し、今期には6.9%に達しました。可処分所得のうち貯蓄に回された割合は、2022年7~9月期以来の高水準であり、パンデミック前10年間の平均である6.2%を上回りました。

消費の回復は、賃金上昇や損害保険金の支払い増加を背景とした可処分所得の増加に支えられてきました。しかし、可処分所得に占める税負担(社会保障給付控除後)の今期の割合は11.9%と引き続き高水準にあり、家計消費の重しとなっています。加えて、インフレによる実質賃金への影響や金利上昇を受け、消費者心理が低下していることから、今後1年間における家計消費の回復は限定的になると見込まれます。
 

新築住宅建設の増加により住宅投資が拡大、不動産取引も活発化

住宅投資は前期比0.6%増となりましたが、新築住宅建設の増加が改修・増改築工事の減少によって一部相殺されたため、経済成長への寄与はありませんでした。前年比では、住宅投資の伸びは5.5%増となり、前期の6.3%増から鈍化しています。新築住宅建設は、東部州を中心とした集合住宅の建設増加を背景に、前期比1.1%増、前年比では6.0%増となりました。一方、改修・増改築は前期比0.3%減となりましたが、前年比では4.6%増となっています。

不動産投資家からの高い関心を背景に不動産取引が活発化したことから、所有権移転費用は前期比4.5%増と大きく上昇し、成長率に0.1ポイント寄与しました。前年比では12.2%増となり、2021年10~12月期以来の高水準となりました。

名目GDPに占める住宅投資の割合は5.4%と、パンデミック前20年間の平均とおおむね一致しています。ただし、建設コストや金利の上昇により、今後の住宅投資の成長は制約される可能性があります。住宅着工許可件数は、12月の14.9%減に続き、1月も7.2%減少し、2024年6月以来の低水準となっています。
 

生産性は改善する一方、単位労働コストは依然として高水準

労働時間は前期比0.7%増加しましたが、労働生産性(労働時間当たりGDP)は前期比では横ばいとなりました。年間ベースでは、生産性の伸びは1.0%増となり、パンデミック前20年間の平均である1.2%をやや下回りました。市場部門の生産性は前年比1.5%増となった一方、非市場部門では0.7%減少しました1

労働市場は引き続き逼迫(ひっぱく)しており、経済全体の賃金総額または雇用者報酬(COE)は前期比1.4%増、前年比では6.4%増となりました。この数値は、12月までの1年間で3.4%増となった賃金価格指数(WPI)よりも高く、雇用者数や労働時間の増加も反映しています。

より広範な労働コスト指標である名目単位労働コストは、前期比0.5%増加しました。前年比では3.3%増となり、前期の4.8%から鈍化したものの、依然として高水準にあります。今後、単位労働コストの伸びをさらに抑制し、インフレ圧力を和らげるためには、労働生産性の継続的な改善が不可欠です。

企業利益は前期比2.2%増加し、2023年1~3月期以来の高い伸びとなりました。主な押し上げ要因は鉱業部門で、生産量の増加に加え、鉄鉱石および金価格の上昇を背景に、同部門の利益は前期比5.7%増加しました。年間ベースでは、企業利益は前年比4.4%増となっています。
 

経済全体に広がる物価上昇圧力は依然として懸念材料

消費者物価指数(CPI)の動向と同様に、国民経済計算における物価指標も今期にかけて経済全体で上昇が加速しており、RBAによる利上げの必要性を改めて示す結果となりました。インフレ圧力の多くは依然として国内要因によるものですが、海外物価も上昇しています。国内物価は、供給制約を背景とした建設コストの上昇や、幅広い分野での消費者価格の上昇を受け、前期比0.9%上昇し、前年比では3.1%の上昇となりました。一方、海外物価は前期比1.4%上昇し、前年比では上昇し、前年比では3.1%の上昇となりました。一方、海外物価は前期比1.4%上昇し、前年比では2.7%まで伸びています。中東情勢の緊張や原油価格の上昇を背景に、海外物価は2026年1~3月期にかけても上昇が続く可能性があります。

輸出価格と輸入価格の比率である交易条件は、前期比0.4%上昇しました。オーストラリア産農産物への需要が高まったことから輸出価格は1.8%増となり、国際航空運賃の上昇を受けて1.4%増となった 輸入価格の伸びを上回りました。
 

民間投資の堅調さが成長をけん引

民間投資は5四半期連続で増加し、前期比0.7%増となり、GDP成長率に0.1ポイント寄与しました。企業投資と住宅投資のいずれも増加しています。民間投資は前年比で5.0%増となり、前期の4.9%増を上回り、2021年10~12月期以来の高い伸び率となりました。

企業投資は前期比0.2%増、前年比では3.9%増となり、前期からはやや伸びが鈍化しました。年間の成長をけん引した主な要因は、ビクトリア州およびニュー・サウス・ウェールズ州におけるデータセンター投資で、非住宅建設や機械・設備投資として計上されています。企業投資の回復は前向きな動きではあるものの、名目GDPに占める比率は12.3%にとどまっており、パンデミック前20年間の平均である14.6%と比べると、依然として低い水準にあります。

企業投資の先行指標である設備投資計画は、2025~26年度について約2,000億豪ドルへと上方修正されました。2026~27年度の設備投資計画の初期見積もりも、前年同時点比で7.3%増と、これまでの見通しを上回る内容となっています。非鉱業部門が引き続き設備投資計画の増加を主導しており、前年比10.8%増となった一方、鉱業部門の設備投資計画は減少しました。なお、これらの数値にはコスト上昇の影響も含まれているものの、投資の回復基調は2026年にかけて維持されると見込まれます。


公共需要は高水準を維持し、当面は継続する見通し

公共需要は大きく増加し、政府消費および政府投資の双方に支えられて、GDP成長率に0.3ポイント寄与しました。名目GDPに占める公共需要の割合は約29%と高水準を維持しており、パンデミック前10年間の平均である24.4%を大きく上回っています。公共インフラ事業の継続的な実施、防衛関連計画、そして政府サービスに対する根強い需要を背景に、この状況は今後も続く可能性が高いとみられます。

政府消費は前期比0.9%増加し、前期の1.1%増からはやや鈍化したものの、成長率に0.2ポイント寄与しました。名目GDPに占める政府消費の割合は23.3%と、2020年のパンデミック期のピーク以来の高水準となっています。州・特別地域政府による電力料金補助や医療、救急、治安維持などの最前線の公共サービスへの賃金支出の増加に加え、連邦政府による防衛支出の拡大が主な押し上げ要因となりました。年間ベースでは、公共消費は前年比3.3%増加しています。

公共投資は前期比0.9%増加したことにより、GDP成長率に0.1ポイント寄与しました。州政府および地方政府による一般政府支出は、交通インフラや医療分野を中心に引き続き増加しています。また、連邦政府による防衛関連資産への支出は7%超の増加と、最も大きな伸びを示しました。連邦公共企業による支出も堅調で、6%超増加しています。公共投資は前年比では0.9%減少しましたが、名目GDPに占める割合は5.6%と依然として高水準を維持しています。


在庫増が成長を支える一方、純輸出はやや減少

輸入の増加率が輸出を上回ったことを背景に、純輸出は成長率を0.1ポイント押し下げました。これは、輸入が前期比1.8%増加したのに対し、輸出の増加が1.4%にとどまったためです。

商品輸入は、家庭が「安価な家庭用蓄電池プログラム(Cheaper Home Batteries)」を活用したことによる小型蓄電池の輸入増を背景に、前期比2.7%と堅調に増加しました。また、金への需要増加も、当期の財輸入の押し上げ要因となりました。一方、サービス輸入は、国際航空運賃の上昇を受けて海外渡航を控える動きが見られたことから、前期比0.4%減少しました。

商品輸出は、中国からの鉄鉱石需要の増加を背景に、前期比1.4%増加しました。サービス輸出についても、オーストラリア国内で開催された大規模な音楽イベントやスポーツイベントを目的とした短期滞在の観光客が増加したことから、前期比1.1%増加しました。

在庫の増減は、GDP成長率に0.4ポイント寄与しました。これは、鉱業生産の増加や石炭在庫の積み増しが進んだことによるものです。また、公的部門による金の輸入増加も、在庫の積み上がりに寄与しました。




  1.  非市場部門に分類される3つの産業(教育・研修、医療・福祉、公共行政・安全保障)には、一部に市場ベースの活動が含まれており、必ずしも「政府」と同義ではありません。


サマリー 

今期の経済活動は堅調な持ち直しを示しており、前年比の経済成長率は2.6%となりました。企業投資や家計消費を含む民間需要が成長に大きく寄与した一方で、公共消費および公共投資も引き続き高水準を維持しています。ただし、供給制約や高インフレに加え、RBAによる金融引き締めの影響を踏まえると、投資や生産性が一段と向上しない限り、今後の経済成長は限定的なものにとどまると見込まれます。



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