EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
今回の国民経済計算では、7~9月期までの年間成長率は2.1%、当期のGDPは前期比0.4%増となりました。1人当たりでは成長率は横ばいで、人口増加に依存した成長構造が浮き彫りとなっています。これは予想を下回る結果であり、最近の消費者物価指数報告で指摘されているように、望ましくないインフレ懸念を伴っています。
しかし、詳しく見ると明るい材料もありました。
在庫を取り崩してコモディティ輸出を支援したことや、小売業の値引き、金需要の増加に加え、資本財輸入が増加したことで、統計上はGDPは押し下げられました。しかし、こうした動きは、企業が新しい生産や投資に向けて準備を進めていることを示しており、景気回復の兆しと一致しています。輸入の増加は、オーストラリアドルの上昇によって後押しされました。通貨高により、海外からの購入が企業や家計にとって割安になったためです。トランプ政権の関税が貿易部門を混乱させるとの懸念は薄れましたが、まだ完全に消えたわけではありません。一方、中国の景気刺激策が下支えとなり、オーストラリア産鉄鉱石の需要は維持され、価格も堅調に推移しました。
ニュー・サウス・ウェールズ州とビクトリア州でのコンピューター機器やデータセンター拡張に関連する民間投資が堅調に増加し、住宅建設も上向きました。
再生可能エネルギーや水インフラに関連する公共部門の支出も成長に寄与しました。防衛関連投資や州政府による交通インフラ投資も成長を押し上げました。公共部門は経済に占める割合を拡大し続けており、活動を下支えする好材料となる一方で、民間投資が持ち直す中で、供給制約のある経済にさらなる負荷をかける可能性があります。
家計消費も適度に増加しましたが、4~6月期ほどの勢いはありませんでした。一部の電気料金補助金の失効により、光熱費の負担が増加した消費者もいました。一方で、金利の低下や家計可処分所得の増加が下支えとなった可能性があります。さらに、従業員の退職年金拠出率(Superannuation Guarantee)が11.5%から12%に引き上げられたこと、株価や住宅価格の大幅な上昇による資産効果も消費増加に寄与した可能性があります。
鉄鉱石価格の上昇と輸入価格の低下により交易条件が改善し、その結果、国民所得の増加が政府歳入の押し上げにつながっています。連邦政府は最近、10月までの税収が予測を上回っていると報告しました。
GDPの結果はまずまず良好です。7~9月期の経済ニュースで最も懸念されたのは、事前に予測されていたインフレ率の上昇でした。オーストラリア準備銀行(RBA)は国民経済計算をおおむね前向きに評価するでしょうが、強い関心は示さないと考えられます。今回のGDPの結果は、RBAの予測とほぼ一致していますが、インフレ率は予測と異なりました。現在の最大の課題は、再び高まったインフレを抑えることです。
RBAは、当面、政策金利を据え置き、高水準のインフレが一過性なのか、あるいは経済が構造的な供給制約に直面しているのかを慎重に見極める方針です。現状、単位労働コストの持続不可能な上昇と生産性の低迷が続いており、後者のリスクが高いと判断しています。このような環境下では、利下げの可能性は極めて低く、2026年には利上げが検討課題となる可能性も視野に入ります。
7~9月期における家計支出の回復ペースは鈍化しました。家計消費は前期比0.5%増と、4~6月期の0.9%増から減速し、GDP成長率に0. 3ポイント寄与しました。金融サービス、電力、医療への支払い増が必需支出を押し上げ、1.0%増となったことが要因です。一方で、裁量的支出は、イースター休暇の延長や年度末セールによる4~6月期の1.5%増の反動で、0.2%減少しました。
年間ベースでは、家計消費は2.5%増と、2023年6月以来で最も高い伸びを示しましたが、パンデミック前10年間の平均(2.6%)をわずかに下回りました。この増加は、裁量的支出(+2.3%)と必需支出(+2.6%)の双方の堅調さを反映しています。消費回復の背景には、金利低下と前年に比べたインフレ率の低下により、可処分所得が増加したことがあります。一方、税負担から社会保障給付を差し引いた可処分所得比率は今期に0.4ポイント上昇し、高水準を維持しており、家計消費の重しとなり続けています。
家計貯蓄率は今期に6.4%に上昇し、前期の6.0%から増加、パンデミック前10年間の平均6.2%を上回りました。
生活費の圧力が緩和されたことで家計消費は回復しましたが、今後の利下げは見込み薄であり、住宅ローン金利の高止まりや高水準の債務負担が将来の消費成長を抑制する可能性があります。さらに、最近のインフレ加速が続けば、家計予算を圧迫する恐れがあります。消費者信頼感は最近改善したものの、パンデミック前10年間の平均を大きく下回っています。労働市場は依然として比較的窮迫していますが、徐々に緩和の兆しも見られます。この傾向が続けば消費成長をさらに抑える要因となり得ます。
住宅投資は成長率に0.1ポイント寄与し、7~9月期には前期比1.8%増加しました。これは住宅建設の増加によるものです。前期の伸び率は0.4%と低調でしたが、改善が見られます。年間ベースでは、今期までに住宅投資は6.5%増加し、前期の5.6%から上昇しました。名目GDPに占める住宅投資の割合は、パンデミック前20年間の平均である5.4%に近い水準となっています。
新築住宅建設はこの四半期で2.6%増加し、2023年4~6月期以来の最大の伸びとなりました。通年では新築住宅建設は5.9%増加しました。改築・増築は今期に0.5%増加し、前期の1%から鈍化しました。所有権移転コストは不動産市場の活発化に伴い5.0%増加し、投資家の関心が高まりました。
新築住宅の建設コストが再び上昇し始めているほか、住宅建設許可件数も横ばいで推移していることから、住宅投資の一段の改善には限界があると見込まれます。さらに、インフレの再加速を踏まえると、金利がこれ以上引き下げられる可能性は低いと考えられます。供給が大きく増加しない限り、住宅の手頃さ(アフォーダビリティ)をめぐる問題は引き続き残るでしょう。
7~9月期の労働時間は0.2%増加し、労働生産性(GDPを労働時間で割った指標)も同様に0.2%増加しました。通年では生産性成長率は0.8%と、2024年6月以来最も高い成長率となりました。ただし、生産性の伸び率は依然としてパンデミック前の平均成長率1.2%を下回っています。市場部門の年間生産性成長率は1.0%増加した一方、非市場部門1では0.3%減少しました。
経済全体の賃金総額を示す指標である従業員の報酬(COE)は7~9月期で1.7%増加しました。公共サービス部門は医療、教育、警察分野の労働者の賃上げにより2.2%増加し、民間部門は1.6%増加しました。年間ベースではCOEは7.1%増加し、前期の6.7%を上回り、労働市場の窮迫した状況が続いていることから、引き続き高い伸び率となっています。
名目単位労働コスト(労働コストのより広範な指標)は今期で1.3%上昇しました。年間ベースでは、名目単位労働コストは前期の4.2%から4.9%へと上昇し、高水準を維持しています。RBAは高い単位労働コストを相殺し、インフレ圧力を緩和するために、労働生産性の改善が継続することを期待しています。
非金融部門の企業利益は7~9月期に1.0%増加しました。これは主に、鉄鉱石および一般炭の価格上昇と輸出量の増加を背景に、鉱業部門が押し上げたものです。
年間ベースでは、企業利益は0.9%の伸びとなりました。
国内経済における価格上昇圧力は、電気・ガス、食品、旅行の値上がりを背景に、7~9月期に前期比0.8%加速しました。労働市場の窮迫により、労働コストも引き続き上昇しています。今期の消費者物価指数(CPI)と同様、インフレ圧力が幅広い分野に及んでいる点は懸念材料です。年間ベースでは、国内価格は3.1%上昇しました。一方、国際価格は今期に0.4%下落し、通年では2.4%まで緩やかに低下しています。
交易条件(輸出価格と輸入価格の比率)は7~9月期に0.3%上昇しました。これは液化天然ガス(LNG)需要の低迷により輸出価格が0.1%下落した一方、豪ドル高の影響で消費財および資本財の輸入価格が0.4%下落したことを反映しています。
民間投資は、機械設備および住宅への投資を背景に、7~9月期に前期比2.9%の堅調な増加を示しました。これは2021年1~3月期以来、最も高い四半期成長率であり、GDP成長率に0.5ポイント寄与しました。年間ベースでは、民間投資は前期の1.3%から加速し、4.7%増となりました。
名目GDPに占める企業投資の割合はわずかに上昇し12.4%となりましたが、歴史的には低水準であり、パンデミック期や1990年代の低水準に近い状況です。一方で、前向きな兆しとして、企業投資は7~9月期に3.2%増加し、2四半期連続の減少から回復しました。主な要因は、データセンターの拡張に伴う機械・設備投資が7.6%増加したことです。通年では企業投資は3.7%増加し、2023年末以来で最も強い成長となりました。
投資の増加は非鉱業部門が 主な要因で、7~9月期に4.4%増加しました。一方、鉱業投資は0.5%減少しました。
企業は2025-26年度の設備投資計画を見直し、1,900億豪ドル超に引き上げています。これは企業投資の先行指標であり、投資の回復が継続する可能性を示唆しています。この水準は、前回の2025-26年度見積もりより9.4%高く、前年同時期比で7.6%高い水準です。非鉱業部門の設備投資計画は10%増加し、全体の押し上げ要因となりました。一方、鉱業部門の設備投資見通しは前年同期比で0.5%増にとどまっています。なお、この指標は名目ベースであり、コスト上昇の影響を含みますが、非鉱業部門の設備投資計画の増加はポジティブであり、実質的な活動の拡大を示しています。
7~9月期の公的需要は大幅に増加し、GDPに0.3ポイント寄与しました。この増加は、政府の消費と投資の双方の堅調さによって支えられています。
主に経常的な支出を反映している政府最終消費支出は、今期に0.8%増加し、前期の0.9%増に続き、GDP成長率に0.2ポイント寄与しました。この増加は、州・特別地域政府による支出が1.0%増加したことが主な要因で、医療や教育への支出拡大が背景にあります。連邦政府の支出も0.5%増加し、メディケアおよび医薬品給付制度への支払い増が要因です。年間ベースでは、公共消費の成長率は前期の3.5%から今期には2.6%へと鈍化しました。名目GDPに占める政府消費の割合は、23.3%と高水準を維持しています。
公的投資は7~9月期に前期比3.0%と堅調に増加し、GDP成長に0.2ポイント寄与しました。この堅調な結果は、国・州・特別地域政府による支出増を反映しており、防衛分野に加え、再生可能エネルギーや水インフラプロジェクトへの投資拡大が主な要因です。年間ベースでは、公共投資は今期までの1年間で3.1%減少しましたが、名目GDPに占める割合はパンデミック前10年間の平均と比較して依然として高水準を維持しています。
総じて、公的需要は7~9月期に名目GDPの28.9%と高水準を示し、パンデミック前10年間の平均値24.4%を大きく上回りました。公共インフラの強力なパイプラインや、需要の高まりに対応した政府サービスの継続的な拡充を背景に、公共需要は今後も高水準で推移する見込みです。
純輸出は7~9月期の成長率を0.1ポイント押し下げました。これは輸入が1.5%増加した一方で、輸出の増加率が1.0%にとどまり、その影響が一部相殺されたことを反映しています。
商品輸出は、データセンター拡張に関連したコンピューター機器への投資増加を背景に、資本財の輸入が増えたことで前期比2.1%と堅調に増加しました。中間財輸入も、アジアからのディーゼル輸入増により増加しました。一方、サービス輸入は、オーストラリア人による海外の航空会社の利用が減少したため、当期に0.2%減少しました。
商品輸出は、前期の天候不順による影響からの回復を背景に、石炭輸出の増加により7~9月期に前期比1.3%増加しました。一方、サービス輸出は、アジアからの短期観光客の増加が、留学生による支出減少で相殺され、今期は横ばいとなりました。
一方、在庫の取り崩し額は19億豪ドルに達し、成長率を0.5ポイント押し下げました。これは、石炭輸出需要の増加に伴う鉱業在庫の減少が主な要因です。また、小売業では、今期にかけて割引期間が延長されたことから在庫が取り崩されました。さらに、前期に積み上げられた金の在庫についても、公的機関による需要増が取り崩しに寄与しました。
国民経済計算による最新の経済動向では、7~9月期までの年間成長率は2.1%、当期のGDPは前期比0.4%増となりました。民間投資の堅調な増加と家計消費の着実な伸びが明るい材料となり、公共部門からの支出もプラスとして寄与しています。一方で、単位労働コスト の高止まりと生産性成長の停滞を背景に、インフレリスクが依然として懸念されています。
EYの関連サービス
ジャパン・ビジネス・サービス(JBS)は、日本企業の海外事業展開をサポートするため、アシュアランス・税務・アドバイザリー・トランザクションの分野で幅広くサービスを提供するEYのグローバル・ネットワークです。JBSオセアニアは、日本企業のオセアニアでの事業展開を総合的に支援するプロフェッショナルグループです。
続きを読む