EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
2020年6月、「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議」報告書が公表されました。続いて2022年6月には、第1の柱の標準モデルの考え方について、新規制の暫定的な結論と基本的な方向性を示す「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する基本的な内容の暫定決定」が公表されました。2023年6月には、基準の最終化に向けた課題を整理した「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する基準の最終化に向けた検討状況」が公表され、その後、2024年5月に、国際資本基準(ICS)に関する議論を踏まえ、フィールドテストの結果分析や保険会社等との対話を通じて新規制に関する各論点の方向性を整理した「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する残論点の方向性(以下、「基準案」)」が公表されました。
そして2024年10月に、これまでの⽅向性に従い、新規制に関する法令等について、所要の新規制定または改正を行うため、「保険業法施⾏規則の⼀部を改正する内閣府令(案)」等が公表されました。
2025年1月には、保険監督者国際機構(IAIS)においてICSが採択され、ICSと米国合算手法(米国AM)の比較可能性評価に関する結論が示され、告示案等にこれらの変更を反映するため、「経済価値ベースのソルベンシー規制(第1の柱)に関する告示案」等が公表されました。
2024年5月公表の「基準案」において示された各論点の方向性から大きな変更はみられませんが、主な特徴は以下の通りです。
2024年10月公表の「保険業法施⾏規則の⼀部を改正する内閣府令(案)」等からの主な更新点は以下の通りです。
※「控除合算手法」とは、一定の海外子会社を連結の範囲から除いて親会社等の所要資本及び適格資本を算出し、当該海外子会社については、現地規制に基づく所要資本及び適格資本に所定の調整(係数を乗じる等)を行った上で、親会社等の所要資本及び適格資本と合算することで連結 ESR を算出する手法。
新規制の導入に向けたタイムライン案は以下の通りです。
出典 :「経済価値ベースのソルベンシー規制の概要 2025年1月31日 保険課 保険モニタリング室」より (2025年2月20日アクセス)
www.fsa.go.jp/news/r6/hoken/20250131-2/00.pdf
2026年3月末の経済価値ベースのソルベンシー規制等の適用に向けて、保険会社は自社の態勢整備を進めることに加え、明確になった取扱いへの対応が求められます。初回報告に向けて、本規制に関する算出方針の検討、ガバナンスの態勢整備などを進めていくことが重要となるでしょう。
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寄稿記事
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