病院経営改善に向けて実践したい20の集患対策

病院経営改善に向けて実践したい20の集患対策


経営が苦しくなる中で多くの病院が経営改善に取り組んでいます。数多くある改善取組みの中で、最も基本的でかつ最も効果的な集患対策について、改めてその重要性を振り返り、最優先に取り組むべき内容をチェックリストとして整理しています。


要点

  • 経営改善に向けた20の集患対策。
  • 職員が一丸となった取組みには、行動力のある事務系職員の成長がカギとなる。

Ⅰ. はじめに

つい20年前までは診療を丁寧に実施していれば、病院は黒字経営ができていた時代でした。それが今では全国に8,000近くある病院の約8割が赤字経営であると言われており、全ての病院で経営改善に向けた取組みを行わなければ、倒産への道を進んでしまう状況になりました。いまだに多くの病院では経営のプロとしての職員が十分に育成されることなく、さまざまな取組みを手探りで行い、試行錯誤を重ねながら対応しています。

本記事では、病院経営における最も基本的かつ効果的な集患対策について、特に日常業務の中で取り組むべき内容について、チェック項目としてまとめます。

Ⅱ. 20個の集患対策チェックリスト

1. 地域医療機関との関係強化

(1)地域連携担当による開業医定期訪問の実施

全ての病院が取り組むべき対策ですが、地域連携部門の担当職員の人員が不足し、戦略的なターゲット設定ができていない病院も少なくありません。地域連携担当に求められるスキルは病院を代表して開業医との関係構築を行い、優先的な紹介先として選ばれるだけの説得力が必要です。どのような患者を送ってほしいのか、その患者に対してどのような治療を行える体制が整っているのか、自院へ紹介することがその開業医にとっても安心して紹介できる医療機関として認識してもらう必要があります。院内外に対して積極的な橋渡しができるような担当者の育成が非常に重要であることを改めて認識する必要があります。

(2)医師同行訪問

開業医訪問時の医師の同行は双方の医師同士の顔が見えるだけでなく、実際の診療内容についても具体的な協議ができるため非常に効果的です。ただし医師には可能な限り診療時間を確保してもらう必要があるため、その代わりを少しでも担えるくらいの地域連携担当の知識向上を進めていかなければなりません。

(3)新規開業医への早期訪問

いまだに診療所の開業は総量規制がかかっていないため、日々新しい診療所が開業しています。開業情報をいち早くつかみ、特定の紹介先が定着する前にまずは自院のことを知ってもらう動きは必要となります。

(4)医師会との連携強化

医師会との結びつきについては当然重要ではありますが、せっかくの結びつきを有効に活用できていますでしょうか。病院情報の定期的な発信や医師会メンバー向けの交流会や勉強会を率先して実施するなど、強固な関係性を築いていくことも必要です。

(5)開業医向け懇談会開催

前述のように医師会メンバーである開業医だけでなく、市町村を超えた開業医へのアプローチを行っていく必要があり、自院が率先して勉強会や懇親会を開催していくことも必要です。
 

2. 診療機能・専門性の情報発信

(6)診療科別強み診療資料の作成

診療科ごとの医師や診療内容の具体的な説明資料を作成できている病院はまだまだ少ない状況です。営業活動がうまくいっていない病院はよく「病院のことを知ってもらえていない」と話されますが、開業医が知りたいことは自分の患者が紹介先でどのような医師にどのような医療を提供されるのかということですので、診療科別の説明資料が作成できていない病院は優先的に取り組むことが望まれます。

(7)診療実績レポートの定期配信

上記の診療科別説明資料に加え、自院で日々診療している患者層について、できるだけ詳細な実績レポートを発信することも重要です。医局人事で毎年医師が変わるような病院こそ、定期的なレポートの配信により地域とのつながりを継続できるようにしておかなければなりません。

(8)地域向け情報配信

地域住民に向けても、日頃から積極的な情報発信を心がけておく必要があります。近年では診察予約アプリやLINEなどで病院と患者のコミュニケーションが取りやすくなっています。それらのツールなどを活用しながら、メールマガジンやSNSなどで情報発信していく方法も考えていくべきです。

(9)Webサイトの地域連携ページ強化

病院のホームページは何年も更新されずに、古い情報が掲載されていることが非常に多いです。このようなところまできめ細かく対応できているという安心感から患者紹介につながることもあるだけでなく、改めてPRやコミュニケーションのツールであることを認識する必要があります。

(10)診療科別勉強会開催

これまで述べた交流会や勉強会は、施設間同士のつながりを高める目的で開催されることが多いですが、やはり重要なのは同じ診療科の医師同士がつながることを目的とした勉強会の開催も非常に有効です。医師同士の顔が見える関係性の構築を重視する必要があります。
 

3. 紹介受付の利便性向上

(11)紹介専用電話の設置

患者を紹介したい開業医は1秒でも早く紹介先が決まることで安心することができます。そのためには円滑な手続きを行うことが重要で、紹介専用の電話番号を設けて、待たされるストレスを極力少なくすることが大切です。

(12)FAX即時予約システム導入

いまだに多くの医療機関において、FAXで患者紹介関連の書類のやり取りを行っています。そのためFAX連絡であっても前述のように予約を取ることに要する時間を最低限にする取組みが必要であり、FAXからの即時予約が可能となる仕組みの導入も検討要素ではあります。

(13)web紹介予約システム導入

前述のFAXとは別に、病院ホームページの地域連携ページから患者の受診予約が取れる仕組みもできてきました。特に若い開業医にとっては非常に利便性がよく、紹介方法の案内も分かりやすいため、今後はweb紹介予約システムの活用が重要になると考えています。

(14)医師ホットライン整備

診察予約にあたり最も理想的なことは、医師同士がホットラインとなる直通電話にて会話ができる環境を作ることです。特に強化したい領域におけるホットラインの設置は開業医へのアピールにもつながるため、ぜひ検討しておきたい内容と考えています。
 

4. 受け入れ体制強化

(15)当日紹介枠の確保

多くの病院にて当日の紹介患者を受け入れるための診察枠を設定しています。重要なことは医師ごとに極端な受け入れ枠の偏りがないようにし、医師の負担に差がないように配慮する必要があります。

(16)紹介患者優先外来の設置

総合診療科を中心に、紹介患者のトリアージを目的とした診察枠を設置する病院が増えてきました。「まずはどんな患者でも受ける」という姿勢の表れでもあり、患者の取りこぼしを防止することにもつながります。曜日ごとに担当診療科を決めて、ローテーションしながら対応している病院もあります。

(17)判断に迷う患者の総合窓口設置

紹介患者優先外来の設置が困難な場合でも、医師もしくは看護師が紹介問い合わせの窓口となり、症状を確認し院内につなげるという仕組みを構築している病院もあります。医師同士の判断により他科の医師も患者を断りづらくなり、医師単独判断による紹介断りを減らすことも期待できます。

(18)地域開放病床の設置

開放病床の活用は紹介数の増加につながるだけでなく、病床稼働率の向上にも寄与します。開業医サイドからも病院に患者を取られるという心配が減り、双方の良好な関係性の構築によりさらなる紹介も期待することができます。
 

5. 紹介後フォロー強化

(19)返書100%実施

本来ならば紹介患者に対する返書は必ず実施しなければ、開業医からの信頼度も下がってしまいます。現在ではAIなどの活用により医師の返書作成にかかる負担も少なくすることができ、地域連携部門が中心となって、返書率の向上を目指す重要な取組みと考えます。

(20)逆紹介の徹底

急性期病院であるほど逆紹介は徹底し、さらなる重症患者を受け入れる余力を確保することが必要です。また紹介を受けてばかりではなく、率先して開業医に紹介し、お互いのメリットを循環させるような考え方を持たなければなりません。

Ⅲ. 職員の経営マインドの醸成

病院では日々多くの医療従事者が患者のことを第一に考え医療技術を研さんし、医療として正しいことを追求する姿勢である「医療マインド」を磨いています。一方で経営層と現場従事者との距離が遠く、現場従事者が経営に触れる機会が極端に少ないことも特徴的で、経営のために自分がすべきことについて真剣に考える時間もほとんど取れていません。しかし、現代の病院経営においては現場従事者一人ひとりの改善意識の積み重ねにより経営改善に取り組んでいかなければならない状況にあるため、職員の「経営マインドの醸成」が求められています。

そこでEYでは、さまざまな支援業務の中で職員の「経営マインドの醸成」を目的として、中堅から若手職員を対象として病院経営に向き合うための検討チームの組成を提案しています。検討チームは「増収」「費用削減」「集患」という3つのテーマに対して1チーム4名程度の複数チームを設定し、複数回に渡る集中審議を行います。この取組みは直接的な改善効果を期待するというよりも、病院一丸となって経営改善に取り組む素地(そじ)を育み、経営改善策の実行力を発揮する環境を作ることが目的となっています。

Ⅳ. 伴走型コンサルタントの役割

病院経営においては、急激な収益改善となるような、即効性のある特効薬のような取組みは存在しません。そのため病院の経営改善には、まずは今回記載しているような目先のやるべきことを丁寧に実践し、経営基盤となる集患力を徹底的に養っていくことが重要です。そのような中で外部コンサルを利用するメリットは他事例の情報収集にとどまるのではなく、集患における取組みについて外部の目線でできていることとできていないことを示唆すること、取組みの優先順位をつけて効果の出る具体的なアクションプランを考えること、そして共に実行していくことだと考えています。われわれ専門コンサルタントは病院と共に「全職員経営者マインドを育てる」一翼を担えるようなご支援をしてまいります。

サマリー

集患は一つ一つの取組みを丁寧かつ着実に実行することが効果につながりますが、多くの病院で人手不足や日々の業務に追われて、なかなか実施できていない状況にあります。思い切った人員体制の見直しなどにより最優先で取り組むべき内容について解説します。


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