EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
今後10年の間で保険業界が目指す方向は根本的に変わっていくでしょう。また、今まで重視されてきた保険商品、保険契約、保険金請求から、焦点はサービスやエクスペリエンス、価値創造へと移るでしょう。別の言い方をすれば、保険会社が販売したい商品やこれまで通常販売してきた商品ではなく、顧客が望み、必要としているものが、イノベーションと成長の主要ドライバーとなるということです。
保険会社においては顧客との関わり⽅や、販売とサービス提供に使⽤するチャネルも同様に、劇的に変化すると考えられます。多くの場合、保険における消費者との接点は、銀⾏、製造業者、医療提供者、そして、業界外の有名ブランドを含む、流通上のパートナー企業となるでしょう。
顧客に対する洞察を深めることが、商品、サービス、エクスペリエンスの改善につながることをより多くの⼤⼿保険会社が認識する傾向にあります。その意味では、消費者のニーズと期待の変化は、保険会社をイノベーションへと導くものであると同時に、変⾰プログラムの完成予想図を構築するものでもあります。
保険会社は、⾼まる消費者の要望に応えるとともに、新規顧客を引き付けながら既存の顧客を維持していかなければなりません。そのため、低い顧客満足度や、顧客ニーズに対応していない標準的な保険商品や従来型のチャネルを重視しているといった評判は、改善する必要があるでしょう。
EYの最新レポートであるNextWave Insurance: Consumers & Small Businesses(PDF)では、2030年までの期間に保険市場を定義付ける鍵となる9つの顧客タイプに焦点を当てています。これらの顧客のカテゴリーは、極めてダイナミックな市場で保険会社が直⾯する難しい課題とそれぞれの顧客タイプに固有のビジネスチャンスの双⽅を⽣み出しています。もちろん、それぞれの保険会社がこれら9つの顧客グループ全てに焦点を定めることはないでしょう。しかし、保障(補償)内容のカスタマイズやサービスのパーソナライズ、デジタル体験の向上が求められていることなど、各グループ共通するテーマがあり、これら全てが価値の向上につながります。9つのグループを以下に⽰します。
全ての保険会社があらゆる顧客層にサービスを提供できるわけではないとしても、競争力を獲得するのは、顧客をビジネスの中核に据える保険会社です。加えて、以下に示す重要な諸機能の取得も必要となるでしょう。
保険会社の経営層が問いかけてきたこと:これらのトレンドを読み解き、それに沿って進み成長を追求するには、どうすればよいのか。それには、まず、さまざまな顧客のニーズと期待に応える方法を考案する必要があります。インテリジェントな顧客属性のマイクロセグメンテーションとハイパー・パーソナライゼーション(個人ごとに最適化した情報の提供)の機能を開発し、提供商品、業務モデル、トランスフォーメーションへの投資を調整し、極めて競争の激しい環境で優位に立つことから始めます。
本レポートでは、活性化が進む市場において保険会社が成長機会を捉えることのできる具体的な行動を提言しています。適切な人材とスキルの活用、データの統合、テクノロジーの向上、プロセスの効率化により、保険会社はあらゆる機能のパフォーマンスを向上させることができます。とりわけ高い成果が得られるのは、効率の向上とエクスペリエンスの拡充を結び付けるという変革です。
本稿は主に、EY Americas Insurance Technology Leader、Chris Raimondoが執筆しました。
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