A construction designer reviews an architectural model prototype printed by a 3d printer machine at an architect's office.

EY Global IPO Trends 2025

世界のIPO市場、2025年のハイライトと2026年の展望


2025年の世界の株式市場は回復力を示し、AI関連企業が上昇をけん引した一方で、ボラティリティやバリュエーションに対する懸念が、市場の注目点となりました。


要点

  • 過去数年間にわたりマクロ経済の不確実性と地政学的な逆風が続いたが、2025年の世界のIPO市場では安定化と再調整の動きが現れた。
  • 2025年のIPO市場は、市場動向が複雑化する中、非線形性・加速性・変動性・相互接続性を特徴とする「NAVI」の環境の影響を強く受けた。
  • 今後を見据えると、世界のIPO市場のセンチメントは慎重ながらも楽観的で、IPO活動は着実な増加が見込まれる。

2025年、世界の株式市場は回復力を示しました。多くの国でインフレが鈍化し続ける中、米国のテクノロジーおよび人工知能(AI)関連の大型株がリターンを主導し、おおむね堅調な経済環境が市場を下支えしました。全体的には好調だったものの、地域やセクターによってパフォーマンスにばらつきがあり、2025年が進むにつれて、特にAI分野の一部ではバリュエーションに対する懸念が徐々に強まりました。

S&P500やNASDAQなどの主要株価指数は、主要テクノロジー企業の堅調な業績と強固なキャッシュ・フロー創出、さらにインフレ鈍化に伴う、マクロ経済に対する市場心理の改善を背景に上昇しました。多くの地域で市場の強さが見られた一方、その強さには地域差がありました。欧州では、工業や金融サービスなどの一部の市場やセクターは堅調な伸びを示したものの、地政学的要因や政策面での不透明感から伸び悩む分野もありました。Asia-Pacific(アジア・パシフィック)の一部では、テクノロジーや半導体セクターがAI関連需要の恩恵を受け、米ドル安や有利な国内政策が追い風となる局面も見られました。

ボラティリティは、金利見通しの変化や地政学的緊張の継続、貿易・関税リスク、AI関連のバリュエーションをめぐる議論などを受け、引き続き断続的な動きとなりました。

年初以降、AIが市場動向に与える影響は一段と明確になりました。AI関連投資は米国のGDP成長の大部分を占め、今後の経済環境を形づくる上で、同技術が極めて重要な役割を果たしていることが明らかになりました。

このような背景から投資家の間では、健全な財務基盤と持続可能なキャッシュ・フローを備え、マクロ経済の不確実性に対応してきた実績を持つ企業を選好する傾向が見られました。

こうした動きは、「NAVIワールド」と合致します。

AIの生産性をめぐる見通しが大きく揺れ動く中、市場のストーリーは非連続的(Nonlinear)に変動しました。リスクも加速(Accelerated)し、地政学的ショックやAIモデル規制、金融政策のサプライズが、数カ月にわたる堅調な上昇を数日で相殺しかねない状況となりました。ボラティリティ(Volatility)は不規則に急上昇し、表面的な強さとは裏腹に、市場の確信がなお脆弱なままであることを示しました。そして、相互接続(Interconnected)はあらゆる変化を増幅させ、AIのエコシステム、サプライチェーン、貿易政策、金利予測が連動する傾向が一段と強まりました。こうしたNAVIの環境において、戦略的柔軟性や多様な収益源、信頼性の高いAI統合を備えた企業に、投資家の関心が一段と集中する展開となりました。

同様に、2025年のIPO市場にもNAVIがもたらす圧力がありました。

特にAIインフラや半導体、クラウドネイティブ型ソフトウェア、エネルギー転換技術といった分野でIPOパイプラインは増加し続けたものの、発行に適した局面が突発的に訪れたり消えたりしました。断続的なボラティリティの高まりにより、多くの企業が上場延期やバリュエーションの再調整を余儀なくされたのです。投資家の選別姿勢は一段と厳しさを増し、収益性の道筋、ガバナンスの厳格性、AI収益化の明確性が不可欠な条件となりました。その結果、市場は完全な正常化には至らなかったものの、時間の経過とともに機能を徐々に回復させました。質の高いキャッシュ創出力と持続可能な見通しを持つ企業は成功することが多かった一方、投機色の強い案件やストーリー先行型は苦戦しました。

EYの世界のIPO市場動向レポート2025の詳細は、以下をご覧ください。

クランベリーがトラックに積み込まれる様子を上空から見たところ
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第1章

世界のIPO市場:2025年の振り返り

数年にわたる逆風を経て、世界のIPO市場は安定しつつあります。市場動向が変化する中で、投資家心理が回復し、より質の高い案件へと戦略的シフトが進んでいることがその背景にあります。

マクロ経済と地政学の逆風が続いた数年間を経て、2025年の世界のIPO市場は安定化と再調整の局面を迎えました。世界全体では1,293件のIPOが実施され、総額1,718億米ドルを調達しました。2024年と比べて件数はほぼ横ばいだったものの、調達額は39%の大幅増となりました。こうした回復基調は、投資家心理の回復と、質の高い案件へのシフトが進んでいることを示しています。

地域別の動向を見ると、EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)が案件数で世界のIPO活動をリードし、全体の42%を占めました。一方、Asia-Pacificは、香港市場の堅調な動きと中国本土のIPOパイプラインの持続的な強さを背景に、調達額では全体の43%を占めました。これにより浮き彫りとなるのは、香港が上場先として再び注目を集めていることです。特に中国本土の企業が香港でのIPOを選択する動きが強まっています。

Americas(北・中・南米)は、件数と調達額ともにEMEIAとAsia-Pacificに後れを取ったものの、米国は依然として世界有数の活発な市場でした。潤沢な投資資金にアクセスしたい外国の発行体にとって、米国は依然として魅力的な上場先であり、世界のIPO市場におけるその重要性を改めて示しています。

国別・取引所別に見ると、インドが取引件数でトップとなり、米国、中国本土がそれに続きました。調達額では米国がトップで、香港、インドがそれに続きます。こうした動きが示すのは、市場ごとに異なる強みが存在することや、企業が流動性の厚みやバリュエーションの可能性、規制環境との適合性を踏まえて上場先を戦略的に選択していることです。

2026年に向けて、市場の本格的な再活性化に向けた基盤が強まりつつあります。IPO準備を最優先し、アジリティを発揮する企業は、訪れる好機を確実に捉えることができるでしょう。

「2025年のIPO活動は世界のIPO市場に対する信頼回復を示すもので、選別的でスピード感のある市場環境が特徴でした。投資家が重視したのは、規模、透明性、レジリエンスです」と、EY Global IPO LeaderのKarim Ananiは述べています。「2026年に向けて、市場の本格的な再活性化に向けた基盤が強まりつつあります。IPO準備を最優先し、アジリティを発揮する企業は、訪れる好機を確実に捉えることができるでしょう」


砂漠にあるラグジュアリーな宿泊施設のプールサイドを歩く女性の写真
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第2章

2025年の地域別IPOハイライト

世界各地域のIPO市場は、厳しい環境下にありながらも回復力を示しました。調達額では米国が首位となり、香港がそれに続きました。件数ではインドが首位でした。

Americas(北・中・南米)

Americasでは、米国のIPO市場が2022年に落ち込んだ後、回復基調が続いています。2025年の幕開けは、堅調な株式市場やAI関連インフラへの旺盛な投資、上場準備企業の厚いパイプラインを背景に、IPO活動の拡大への強い期待感が広がりました。しかし、4月上旬の米国政府による新たな関税発表と、年後半に発生した米国史上最長の政府機関閉鎖という2つの大きな混乱を受け、多くの企業は2026年に焦点を移さざるを得なくなりました。

課題のある年にもかかわらず、米国のIPO市場は堅調に推移し、件数は前年比27%増、調達額は38%増となりました。市場活動は、より大規模で質の高い取引に偏る傾向が見られました。注目すべきは、10億米ドル超を調達した取引が2024年の7件から11件へと増え、これら11件だけで調達額全体の40%超を占めた点です。全体では、1億米ドル超を調達したIPOが70件に上りました。最大のけん引役はAIで、暗号・デジタル資産や航空宇宙・防衛技術も市場活動を後押ししました。

特別目的買収会社(SPAC)は勢いを取り戻し、2025年のSPAC IPO件数は2023年と2024年の合計を上回りました。しかし、SPACの新規設立が進む一方でSPAC合併がそれに追いつかず、パフォーマンスや資金面の課題が依然として続いていることが示されました。その結果、合併先を公表しないまま、買収先の選定期限が6カ月以上残る「アクティブなSPAC」が、現在100社以上存在しています。

Americas全体でも前向きな動きがありました。カナダのトロント証券取引所(TSX)では、5億米ドル超の案件が2件成立し、メキシコでは総額10億米ドル超の大型案件が2件ありました。

総じて、Americasでは今後のIPOパイプラインが豊富に控えています。IPOが公開後も好調を保ち、マクロ経済環境が良好であれば、IPO活動は加速すると見込まれます。

このように変化の激しい環境では、準備態勢が極めて重要です。着実に準備を進めている企業は、市場の好機に迅速かつ戦略的に行動できる有利なポジションを確保できるでしょう。

「2025年、AmericasのIPO市場はめざましい回復力を示し、大きな課題を乗り越えつつ、質の高い企業による有望なIPOパイプラインを確保してきました」と、EY Americas IPO LeaderのRachel Gerringは述べています。「このように変化の激しい環境では、準備態勢が極めて重要です。着実に準備を進めている企業は、市場の好機に迅速かつ戦略的に行動できる有利なポジションを確保できるでしょう」

Asia-Pacific(アジア・パシフィック)

2025年、Asia-PacificのIPO市場は力強い動きを示しました。件数は横ばいだったものの、調達額は前年比106%増と大きく伸び、調達額の世界トップ10のうち7件がこの地域で実施されました。こうした動向は投資家の信頼回復と、より強固なマクロ経済基盤の形成を示すものです。

成長の原動力は引き続き中華圏であり、香港は世界有数の好調市場として再び存在感を示しました。香港の強さは、上場先として香港を選好した中国本土の企業によって下支えされたものです。

域内で進んだ規制面の動きも、好調を後押ししました。香港と中国本土の当局は、上場制度の見直しを進める一方で、情報開示や所有権分散の要件によるガバナンスの強化と、効率性向上やイノベーション支援を目的とした施策との両立を図りました。こうした改革により、香港はグローバルなハブとしての地位を強化するとともに、投資家保護の優先事項との整合性も一段と高まりました。

中華圏以外では、日本、ASEAN、オセアニア、韓国がそれぞれ独自の市場動向を示しました。日本はIPO件数では前年比24%減となったものの、2025年の世界トップ10に入った2件の大型案件が寄与し、調達額は33%増と大きく伸びました。特筆すべきは、日本において2018年以降で最大規模となる上場が実施されたことです。

ASEAN全体では、IPO件数は前年比15%減となったものの、調達額は61%増と大きく伸びました。けん引したのはシンガポールで、2件の大規模な不動産投資信託(REIT)上場では、合わせて15億米ドル近くを調達しました。オセアニアでは前年から取引活動が持ち直し、複数の大型案件が控えるなど、好転の兆しが見え始めています。韓国では、韓国総合株価指数(KOSPI)が上昇し、注目されるIPOパイプラインが複数進行する中、年末に向けて勢いが増しています。

Asia-Pacificの市場は、今後も安定した勢いを維持できる見通しです。中国本土と香港では有望なIPOパイプラインが控えているほか、有利な金利環境や地政学リスクの緩和、イノベーション主導の継続的成長が、今後の活動を下支えすると見込まれます。

Asia-PacificのIPO市場の底堅さは、各地域の強固なIPOパイプラインと、イノベーションを主導するセクターの継続的な強さが相乗的に作用したものです。

「Asia-PacificのIPO市場の底堅さは、各地域の強固なIPOパイプラインと、イノベーションを主導するセクターの継続的な強さが相乗的に作用したものです。この勢いは2026年に入っても持続すると見込まれ、この地域が成長の次の段階に進むための基盤が整いつつあります」と、EY Asia-Pacific IPO LeaderのRingo Choiは述べています。

EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)

2025年、EMEIAのIPO市場は控えめながら堅調さを示し、世界でも特に活発で地理的多様性に富む上場地域としての地位を維持しました。調達額では前年比8%減ですが、年間IPO件数では引き続きAmericasとAsia-Pacificを上回り、この地域のIPOを実施する発行体の層の厚さと多面性を浮き彫りにしています。特筆すべきは、IPO調達額で今年第3位となる40億米ドル超の案件がスイスで、また第11位の17億米ドルを調達した案件がインドで実施された点です。いずれも10月の案件です。

欧州全体では、IPO活動は縮小というより、むしろ構造的な再調整の1年となりました。IPO件数は前年の131件から20%減の105件となり、調達額も前年比10%減の173億米ドルでした。こうした変化の多くは、公開市場とプライベート市場の継続的な競争に起因するもので、プライベート市場に潤沢な資金があるため、企業が上場を先送りする傾向が続いていることが背景にあります。そのため、欧州ではIPO活動が減少する一方、市場に出てくる案件は、よりレジリエントなキャッシュ・フロー重視型のビジネスモデルや強固なガバナンス、明確な価値創造ロードマップを備える傾向があります。さらに、欧州のIPOパイプラインは、AI導入や先進製造、エネルギー転換、サプライチェーンの再設計といったテーマを軸に、より変革色の強いものへと移行しています。

2025年の英国IPO市場は、前年からは成長したものの依然として比較的静かな状況が続き、5億米ドル超の案件が2件でした。

インドは、記録的な年となった2024年に続き、2025年もIPO件数367件(前年比8%増)、調達額229億米ドル(前年比9%増)を記録し、EMEIAで最も活発な成長エンジンの1つとしての地位を維持しました。こうした好調を下支えしたのは、堅調な経済成長、底堅い市場心理、そして規制環境の改善でした。インド市場は依然として中小型のIPOの裾野が広いことに加え、一定の大型のIPOも多様なセクターから出ている点が特徴です。案件の多くが比較的小規模にもかかわらず、インドはIPO調達額で世界の上位に入り、その資本市場の厚みと強さを示しています。

中東・北アフリカ(MENA)地域では、IPO件数は50件(前年比14%減)、調達額は66億米ドル(前年比48%減)でした。大幅な減少の理由には、主に前年のような大型案件がなかったことが挙げられます。市場は世界的なボラティリティや地政学的な不確実性、原油価格の変動に直面し、いずれも投資家心理の抑制要因となりました。サウジアラビアのタダウル全株指数(TASI)を含む地域の株価指数は下押し圧力を受ける局面もあり、最近のIPOにおいて公開後のパフォーマンスにはばらつきが見られました。こうした逆風にもかかわらず、サウジアラビア王国(KSA)は依然としてIPO活動の主要なけん引役であり、10億米ドル超の大型案件を含め、件数・調達額ともに地域をリードしました。

総じて、EMEIA全域にわたるIPO活動は幅広く多様であり、市場環境が選別的・質重視へと移行する中でも、この地域が世界のIPO発行の中心的役割を維持していることがわかります。

EMEIAは依然として世界でも特にIPOが活発な地域であり、特に欧州がその厚みに大きく貢献しています。

「EMEIAは依然として世界でも特にIPOが活発な地域であり、特に欧州がその厚みに大きく貢献しています」と、EY EMEIA IPO LeaderのDr. Martin Steinbachは述べています。「質の向上と変革に注力する企業は、いま準備に投資することで、2026年にボラティリティの霧が晴れたときに最も有利なポジションを確保できるでしょう」


自動プラスチック射出成形機のベルトコンベア上に積み重ねられたポリプロピレン容器
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第3章

「NAVIワールド」におけるIPO

NAVIワールドでは、発行体の対応や投資家需要が進化するに伴って、IPO環境が変容しつつあり、十分な準備と適応力を備えた企業には大きな機会が生まれています。

NAVIワールドでは、セクターの移り変わりとともにIPOが進化、スポンサーもそれに適応

NAVIの環境では、世界のIPO環境が変化し、その動きが発行体の対応や投資家需要を大きく変えつつあります。急速な技術の進歩や地政学的環境、資本配分の変化がこうした動きを後押ししており、その影響はさまざまなセクターや地域、スポンサー支援の活動など多岐にわたっています。AIはその中で極めて重要な役割を担っています。

加速するセクターの動きには、ばらつきや地域差も

NAVIの環境ではテーマ別にばらつきが強まることから、2025年のセクター別パフォーマンスは市場ごとに明確な違いが生じました。

IPO活動の構成は、こうした変化する情勢を反映しています。世界全体では、工業(22%)とテクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム(TMT)(21%)が2025年のIPO調達額を主導しましたが、その影響度は地域によって異なりました。米国ではTMTが調達額の40%近くを占め、その多くはAIインフラを支える企業によってけん引されました。対照的に、欧州では、工業、金融サービス、不動産、ホスピタリティ、消費財など、多様なセクターが混在する構成となりました。Asia-Pacificでは、ロボティクス、モビリティ、工業分野のAIシステム関連が大口の発行体となりました。

スポンサー支援案件は選別的かつ戦略的

スポンサー支援型IPOの動きは、現在のIPO市場におけるNAVIの影響を端的に示す典型的な例です。プライベート・エクイティ(PE)支援案件は、件数としては全体に占める割合は小さいものの(2025年はわずか103案件、全体の8%)、調達額では621億米ドル(36%)を生み出しました。この傾向は、地域別に見るとさらに顕著です。欧州では、PE支援案件は件数ベースでは13%を占めましたが、調達額では60%近くになりました。米国でも同様に、件数は16%でしたが、調達額では65%を占めています。Asia-Pacificでは、スポンサー案件は量としては中程度ながら、この地域の大型案件のポジショニングと規模を決定づける役割を果たしています。こうした傾向は、PEがIPO市場の推進力を強める存在であることを浮き彫りにしています。

先行きが読みづらい(non-linear、非線形性)市場では、スポンサーは投資家心理の揺れに左右されにくい、大型で明確なナラティブを持つ案件に注力します。ボラティリティが高い(volatile、変動性)局面では、スポンサーは選択肢の確保を重視し、戦略的手段としてデュアルトラックの柔軟性を維持します。さらに、相互接続性のある(interconnected)資本市場環境では、世界の金利動向、M&Aの状況、セクター固有の資本フローがPEのエグジットを左右するようになり、スポンサーは市場の重要な参加者であると同時に、安定化要因としての役割も果たします。

AIの変革力とバリュエーションをめぐる議論

AIが持つ変革力は明白ですが、現在のバリュエーションは「バブル」領域に入りつつあるのではないかという議論を呼んでいます。AI関連企業が2025年の株式パフォーマンスに大きく影響したこともあり、この議論は市場センチメントにおいて中心的なテーマとなっています。米国では、2025年のS&P500上昇の約半分を大手テクノロジー株がけん引しており、わずか数社のAI関連メガキャップ銘柄だけで指数上昇の約3分の1に貢献しています。こうした集中はAIの潜在力を示すと同時に、市場感応度を高める要因になっており、少数の発行体のバリュエーションがわずかに変動するだけで、広範なアセットクラスに波及する可能性があります。

「AIバブル」議論の核心は、AIが産業を再編成するかどうかではなく(それは確実とみられるので)、現在のバリュエーションが、近い将来の収益創出と現実的な導入タイムラインに整合するかどうかにあります。リスクはAIの進展が失速することではなく、市場がその将来の利益を過度に先行して織り込みすぎる点にあります。NAVIの環境では、こうした不整合はAIの構造的な成長ストーリーを損なうものではないものの、一時的な混乱を招く可能性があります。

「NAVIワールド」におけるかじ取り

セクター、スポンサー、新たなバリュエーションテーマを横断して導かれる結論は、2025年のIPO市場は均衡状態への回帰ではなく、ニューノーマル(新たな常態)への適応であることです。市場が急速に進化する中、アジリティを欠けば計画が頓挫しかねない一方、十分に準備を整えた企業には依然として大きな好機が残されています。

発行体が成功を収める鍵は、戦略的な柔軟性、説得力のあるエクイティストーリー、そして好機を捉えて迅速に行動する能力にあります。こうしたNAVIの環境では、IPOに向けた準備と取引のオプショナリティ(状況に応じた柔軟な選択)が、ボラティリティへの耐性を高める上で引き続き重要となります。


モダンなオフィス環境でノートPCを手にたたずむ女性
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第4章

世界のIPO市場の見通し

今後の展望では、マクロ経済指標の改善を背景に、世界のIPO市場には慎重ながらも楽観的なムードが広がっています。アジリティと十分な準備を重視する企業は、成功に向けて有利な立場を確保できるでしょう。

「慎重な楽観論」の広がり

2026年を展望すると、マクロ経済指標の改善、より予測可能になった金融政策、そして投資家需要の裾野拡大を背景に、世界のIPO市場には慎重ながらも楽観的なムードが広がっています。勢いを増すAIおよびテクノロジー分野への投資は、引き続き重要なけん引役になるとみられ、拡張可能なビジネスモデル、強固な基盤、商業化への明確な道筋を示す企業に資本を呼び込むと予想されます。企業はインフラ投資、バリュエーション規律、市場の吸収力といった課題を乗り越える必要がありますが、全体的なセンチメントは依然として建設的です。

大型案件、スポンサー支援案件、クロスボーダー上場に対応した候補が相次いで準備を進めており、多様なグローバル・パイプラインが形成されつつあります。ボラティリティがこのまま抑制された状態で推移すれば、2025年に築かれた基盤が2026年のIPO活動の本格的な拡大を後押しする可能性があります。

変革期における機動力の維持

2025年のIPO環境は、多様な課題と機会が複雑に交錯する構図を示していました。発行体にとってアジリティは重要な差別化要因となりました。主要なIPO候補は、タイムラインを調整しエクイティストーリーを磨き上げ、資本調達に向けた複数の選択肢を模索しながら、急速に変化する市場の好機に備えて準備を進めました。2026年に向けて、このような適応に注力することが、企業にとって一段と重要性を増すでしょう。

IPOを目指す企業は、IPO準備に加え、ガバナンスや財務報告、内部統制、戦略の明確さといった面を強化できるよう、主体的に取り組む必要があります。投資家の間では、規律ある企業運営、事業のレジリエンス、そして信頼性の高い価値創造ロードマップを示す企業を高く評価する傾向が強まっています。早くから準備を進めておけば、オプショナリティを最大限に高めることができ、市場に一瞬の好機が訪れた際にそれを確実に捉えることができます。

2026年のIPO活動に影響を与える要因

2026年にIPO活動が着実に増加するかどうかは、グローバル市場を取り巻く複数の要因がどのように絡み合うかにかかっています。金融政策の道筋の明確化が今後も中心的なテーマであり、市場ボラティリティの抑制も同様に重要です。投資家の信頼回復に向けては、地政学的緊張の緩和が不可欠であり、加えて経済成長を下支えする消費者の健全性と堅調な労働市場も求められます。株式市場のパフォーマンスの安定も重要な要素です。さらに、AIの進化と実装、そしてテクノロジーの普及拡大は、特にAIのアプリケーション層が成熟するにつれて、取引供給に今後も継続的な影響を及ぼします。

 

こうした動きを踏まえると、2026年には世界のIPO回復が次の局面へ移行する可能性があります。特に、十分な準備、戦略の明確さ、市場環境の好転に迅速に行動できるアジリティを備えた企業にとっては、その流れを捉える1年となるでしょう。


株式公開の手引き

株式公開の手引きは、IPO前、IPO期間中、そしてIPO後において、企業が戦略的に検討すべき事項を取り扱っています。

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サマリー

数年にわたる不確実性を経て、2025年の世界のIPO市場はNAVIの環境の影響を受けつつ、安定化と再調整の段階へ移行しました。案件数ではEMEIAがリードし、調達額ではAsia-Pacificが大半を占めました。AmericasはEMEIAとAsia-Pacificに後れを取ったものの、米国は依然として世界有数の活発な市場でした。今後の見通しとしては、世界のIPO市場には慎重ながらも楽観的なムードが広がっています。準備とアジリティを重視する企業は、市場に一瞬の好機が訪れた際に、それを確実に捉える有利な立場を確保できるでしょう。

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