日本の新規上場動向 - 2023年1月~12月

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EY Japan

2024年2月2日
カテゴリー IPOの動向

EY新日本有限責任監査法人
企業成長サポートセンター
シニアマネージャー 税理士 左近司 涼子

1. 新規上場市場の概況

2023年1月~12月の国内株式市場は、年明け日経平均株価終値25,716円でスタートし、円安・ドル高基調などの影響を受け徐々に上昇を続け3月には28,000円台となりましたが、米国での銀行破綻をきっかけとした欧米の金融システム不安などから一時26,000円台に下落。しかし、その後は再び安定した上昇を続け5月中旬には30,000円台となり、12月最終日終値は33,464円となりました。そのような市場環境の中で、新規上場企業数は、128社(TOKYO PRO Marketを含む。以下同様)となりました。前年同期(2022年1月~12月)と比較した場合16社増となっております。市場別に見ると、全体の51.6%にあたる66社が東証グロースに上場し、新興市場合計で全体の79.7%を占めています(表1)。

表1 最近5年間(1月~12月)の市場別新規上場企業数

表1 最近5年間(1月~12月)の市場別新規上場企業数

(注1)東証(1部、2部、マザーズ、JASDAQスタンダード)及び名証セントレックスについては、2022年1月から4月3日の実績、東証(プライム、スタンダード、グロース)及び名証ネクストについては4月4日から9月の実績となっています。
(注2)集計期間中に市場区分の変更があったため、市場区分ごとの増減比較は省略しています。
(注3)対象期間に新規上場実績のある市場のみを上記に記載しています。
(注4)東証と同日に他の市場に上場している場合は、東証の実績に含めています。

2. 新規上場企業データの分析

業種別では、情報・通信業48社(昨年同期37社)、サービス業34社(昨年同期36社)、となっており、それぞれ新規上場企業全体の37.5%及び26.6%を占め、他の業種社数との開きが昨年同様に見られます。(表2)。

表2 2023年(1月~12月)の業種別新規上場企業数

表2 2023年(1月~12月)の業種別新規上場企業数

本社所在地別では、全体の60.9%にあたる78社の本店所在地が東京都であり、依然として東京都が中心です(表3)。東京都以外に本店所在地がある場合でも上場市場は東証に集中しています。

表3 2023年(1月~12月)の地域別新規上場企業数

表3 2023年(1月~12月)の地域別新規上場企業数

赤字上場(直前期の当期純利益が赤字で上場した会社)数はグロースに上場した21社、TOKYO PRO Marketに上場した3社ありました。またTOKYO PRO Marketを除いた新規上場企業においては、初値が公募価格を下回った会社は26社ありました。

直前期の売上高の分布を見ると、10億円未満の企業が28社(21.9%)、10億円以上50億円未満の企業が54社(42.2%)であり、全体の約3分の2程度を売上高50億円未満の比較的小規模な企業が占めています(図1)。売上高が200億円を超える新規上場企業は、東証プライム2社、東証スタンダード5社、東証グロース4社、TOKYO PRO Market2社の合計13社となっています。

図1 2023年(1月~12月)新規上場企業・直前期売上高

図1 2023年(1月~12月)新規上場企業・直前期売上高

初値時価総額の分布を見ると、50億円未満の企業が50社(39.1%)、50億円以上100億円未満の企業が22社(17.2%)であり、全体の2分の1程度を占めています。500億円を超えた企業は12社(9.4%)あり、昨年同期(4社、3.6%)と比較して増加しています(図2)。なお、初値時価総額が最も高かったのは、株式会社KOKUSAI ELECTRICの4,875億円でした。マザーズ市場とジャスダック市場及びグロース市場の平均初値時価総額は216億円と、前年同期の148億円と比較して大幅に増加しました。

図2 2023年(1月~12月)新規上場企業・初値時価総額

図2 2023年(1月~12月)新規上場企業・初値時価総額

監査法人別では、有限責任監査法人トーマツ18社(14.1%)、EY新日本有限責任監査法人15社(11.7%)、有限責任あずざ監査法人が11社(8.67%)、となり3法人合計で全体の1/3程度で、中小規模等のその他の監査法人の割合が増加しており、新規上場において担う役割が大きくなってきていることがうかがえます(表4)。

表4 2019年~2023年月の監査法人別新規上場企業数

表4 2019年~2023年月の監査法人別新規上場企業数