ニュースリリース

2023年1月12日 東京, JP

EY調査、2022年の世界のIPO市場、記録的活況から停滞期に移行

EYは、2022年のIPOに関する調査結果を発表したことをお知らせします。世界のIPO市場は、2021年に過去最高水準を記録しましたが、その様子は2022年に一転しました。

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関連トピック IPO 成長 起業家精神
  • 2022年(12月初旬時点)において世界のIPOは前年比で件数が45%、調達額が61%の減少
  • 新型コロナウイルス感染拡大前と比較するとIPO件数は16%増加
  • 全世界のIPO調達額の67%をAsia-Pacificが占める
  • 日本のIPO件数は、91件と2021年の125件には及ばないが、2020年(93件)と同程度


EYは、2022年のIPOに関する調査結果を発表したことをお知らせします。世界のIPO市場は、2021年に過去最高水準を記録しましたが、その様子は2022年に一転しました。わずか1,333件のIPOが、1,795億米ドルを調達したのみとなり、昨年と比べて、調達額が45%、件数が61%減少となりました。企業価値評価の低下と株式市場の不振により、ディールの平均規模が縮小し、2022年に大規模なIPOはあまり見られませんでした。これらを含む調査結果は、EYの四半期レポートEY Global IPO Trends 2022で公表しています。

2022年を通して世界のIPO活動は、市場のボラティリティの上昇やその他の市場の悪材料、そして2021年以降にIPOを行った企業の株価低迷のあおりを受けました。インフレの高まり、金利の上昇に特徴づけられる市場環境において、投資家は新規上場企業に背を向け、リスクのより低いアセットクラスへ流れています。それと同様にPEファンドやベンチャーキャピタル(以下、VC)が、スポンサーとなっているIPO活動は件数で77%、調達額で93%の激しい落ち込みを示しました。2020年末以降に上場されたSPAC(特別目的買収会社)の大半が、買収・合併を完了させるべき2年の期限を迎えるため、現在SPACは、ターゲット企業を見つけるか、投資家にIPOで調達した資金を返還するかのいずれかの選択を迫られています。世界のIPOは活動は2021年と比較すると著しく低下したように見えますが、それでも2019年の新型コロナウイルス(以下、コロナ)感染拡大前に比べると件数で16%増加しています。

IPO市場活動は大半の業種や地域で低調でしたが、ささやかな成功を収めた業種や地域もいくつかありました。2022年において、テクノロジーセクターは引き続きIPO件数でトップを走り(全体の23%)、エネルギーセクターが調達額で他をリードしました(全体の22%)。メガIPO(調達額10億米ドル以上の大型案件)により上場した企業をみると、2022年の平均調達額は、2021年と比較して45%上昇しました。これは今年実施されたエネルギー業界のメガIPOが高い評価額を付けたことに起因しています。世界的に市場が著しく低迷しているなかで、中華圏、中東、一部のASEAN諸国は、比較的好成績を収めました。

各地域の業績の概要:2023年のIPO活動再開とより堅調な市況への回復を待つ

AmericasのIPO活動は世界金融危機以来初となる不調を記録しました。マーケットは、ボラティリティとインフレ対策の影響を受けて、件数では13年間で最低、調達額では20年間で最低の結果を記録しました。IPOの件数も調達額も共に急降下し、130件(前年比の76%減)のIPOが90億米ドル(前年比の95%減)を調達するという結果に終わりました。これは想定内のことですが、Americas(北・中・南米)のIPOの大半(69%)が米国の証券取引所で実施されました。

Asia-PacificのIPO市場は、世界的な経済減速と地政学的緊張からの影響が最も小さく、845件のIPOを通して合計1,206億米ドルを調達しました。これは2022年の世界全体のIPO件数の63%、調達額の67%に当たります。中華圏は、2022年末までに最高年間資金調達額を更新する見込みです。

EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)のIPO活動は昨年に比べ件数で53%、調達額で55%減速し、358件のIPOが499億米ドルを調達する結果となりました。地政学的混乱により、欧州のIPO活動は78%減少したものの、MENAでは、大手エネルギー企業のIPOや他のIPOが完了したこと、さらに政府の民営化計画で展開された施策の恩恵を受けて、調達額が115%増加しました。EMEIA全体ではまた、2022年世界で上位10件のIPOのうち5件が実行されています。

2023年の展望:ファンダメンタルズとESGにフォーカスしながら適切なチャンスを待つ

2023年に目を向けると、そこには強大なIPO案件が控えています。IPO活動は、少なくとも第1四半期の終わりまでは停滞し続けるかもしれませんが、同年後半になると世界のIPO活動がこれまで以上の勢いを取り戻すのに必要な好条件が整う見込みです。

IPO市場が再び活況を取り戻すためには、景況感の改善、株式市場のパフォーマンス向上、インフレ緩和、金利上昇の終了、地政学的緊張の緩和、コロナ禍の世界経済への影響の縮小、といった多くの条件が揃う必要があります。

IPOを検討している企業の多くは依然として、「様子見」の姿勢を取りながら、適切なチャンスが到来するまで、IPOを延期することにしています。現段階では、投資家は成長可能性にフォーカスするよりは、売上高向上、収益性、キャッシュフローなどの企業のファンダメンタルズにより注目すると思われます。

そして、IPOを行った企業のESG(環境、社会、ガバナンス)戦略の説得力とIPO後の株価の値動きには正の相関性があるため、投資家は企業のESGアジェンダにもますます注目していくことでしょう。
 

EY Global IPOリーダーのPaul Goのコメント:

「2021年に過去最高を記録したIPO活動ですが、地政学的緊張の高まり、インフレ加速、金利のさらなる引き上げ、これらが原因で発生したボラティリティの高まりの波にのまれてしまいました。そして、株式市場の下降、企業評価の低下、IPO後の株価の低迷が、投資家をさらにIPO投資から遠ざけています。パイプラインが引き続き積み上がっていく中で、多くの企業はIPO計画を再開させるのに適切な時期を待っています。それでも、市場の資金流動性がタイトになっているため、投資家は以前よりリスクを避けるようになっています。こうした投資家が投資先として好んで選ぶのが、収益性とキャッシュフローの面でレジリエントなビジネスモデルを持ち、かつEGSアジェンダを明確にわかりやすく説明している企業です」
 

EY Japan IPOリーダー兼 EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター センター長の齊藤 直人(さいとう まさと)のコメント:

「2022年の日本のIPO件数は、91件と昨年の125件には及ばないものの、一昨年の93件と同程度になりました。昨年からの減少要因としては、世界的な金融引き締めにより、特に海外投資家からの投資が抑制されたことやグロース市場の株価が軟調であったことが挙げられます。一方で未上場企業の資金調達は、前年同期比で24%増加(1月~9月ベース)しており、相変わらず旺盛な資金調達環境であることから、来年以降のIPOマーケットも一定の水準を維持するものと考えられます」

 

図1:2013 – 2022 global IPO activity

2013年から2022年は通年のデータです。
出典:EY、Dealogic

図2:全世界のセクター別IPO件数
図3:全世界のセクター別IPO調達額(US$b)

出典:Dealogic、EY
四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。

※本プレスリリースは、2022年12月15日(現地時間)にEYが発表したプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

英語版ニュースリリース:
Global IPO market went from record-breaking to full-on abating

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データについて

本レポートに示されたデータは、ey.com/ipo/trendsでご覧いただけます。本レポートで2022年は暦年を指し、2022年1月1日から12月5日時点で完了しているIPOおよび2022年12月末までに完了すると予想されるIPOをカバーしています。データは英国時間2022年12月5日営業日終了時点のものです。本レポートに含まれるすべてのデータは、特に断りのない限り、Dealogic、Capital IQ、SPAC InsiderおよびEYの分析を出典としています。SPAC(特別買収目的会社)に関するデータは、特に記載のない限り、本レポートのすべてのデータから除外されています。

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