ニュースリリース

2023年4月21日 東京, JP

EY Japan、行動経済学・心理学による社会課題解決型の行動促進で創出される市場規模は約11兆円強と試算

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 聡)は、行動経済学・心理学など行動科学を活用し、健康増進、環境配慮、エシカル消費、老後資産形成、保険加入、デジタル活用、ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス(DE&I)、ワークライフバランス充実など社会課題解決型の行動を促した際に生み出すことができる市場規模が、11兆1229億円であるという結果をまとめました。また、この試算を受け行動経済学・心理学を起点とした経営コンサルティングサービス「BX Strategy (Behavioral Insight Transformation Strategy)」を本格化します。

プレス窓口
EY Japan

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

  • 行動経済学や心理学など行動科学により、社会課題を生み出す行動を抑制し、健康増進、環境配慮、エシカル消費、老後資産形成、保険加入、デジタル活用、DE&I、ワークライフバランス充実など社会課題を解決する行動を促すことが可能
  • 行動科学を取り入れ、競争優位性の高い変革を目指すクライアントを支援する経営コンサルティングサービス BX Strategyを本格展開


EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤 聡、以下EYSC)は、行動経済学・心理学など行動科学を活用し、健康増進、環境配慮、エシカル消費、老後資産形成、保険加入、デジタル活用、ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス(DE&I)、ワークライフバランス充実など社会課題解決型の行動を促した際に生み出すことができる市場規模が、11兆1229億円であるという結果をまとめました。また、この試算*1 を受け行動経済学・心理学を起点とした経営コンサルティングサービス「BX Strategy (Behavioral Insight Transformation Strategy)」を本格化します。

近年、顕在化している主要な社会課題においては、行動経済学や心理学といった行動科学を活用して、人が生まれながらに持つ本能のメカニズムを理解することにより、社会課題を生み出す行動を抑制できる可能性が高まっています。*2 例えば、脂っこい食べ物や味の濃い食べ物など、不健康だと分かっていても食べ過ぎ・飲み過ぎる生活習慣病は、「健康に悪い影響を与えないように脂っこい食べ物は控えよう」といった正論のコミュニケーションだけでは解決に至りません。「脂っこくて」「味が濃い」食べ物を否定するのではなく、血糖値や血中脂肪の上昇を抑制する飲み物と同時に摂取する、また減塩食品の選択を推奨するなど、偏食や過食を一定程度認める不完全さを許容するコミュニケーションが有効です。また、環境に配慮した行動を促したい場合は、「環境にやさしい行動をしよう」といった正論をぶつけるのではなく、「子供の教育上良い行動をしよう」のように、人が生まれながらに持つ強力な本能(例:わが子びいきの本能)とひも付けたコミュニケーションが有効です。実際に、環境を理由に家庭内での節電行動をしない人でも、子供への教育的影響を考慮して節電行動をするようになる可能性が示されています。*3

BX市場の規模

EYSCは、企業や組織が、ビジネスや商品、サービスに行動科学を活用して、社会課題解決型の行動を促した際に生み出すことができる市場規模を試算し、11兆1229億円という試算結果をまとめました。

さらに、2022年6月に閣議決定された今後10年間での150兆円規模のグリーントランスフォーメーション(GX)投資*4や、グリーンウォッシュ(見掛け倒しの環境対策)への警鐘*5、CO2削減貢献への要請の高まり*6などから、企業による「消費者のサステナブルな消費行動への転換に対する責任」は、ますます大きくなり、企業が社会課題解決型の行動を促した際に生み出すことができる市場はさらに拡大すると考えられます。

EYSCは、この行動科学による社会課題解決型の行動促進によって生み出される市場をビジネスチャンスと捉えるクライアントを支援するため、経営コンサルティングサービス「BX Strategy(Behavioral Insight Transformation Strategy)」の本格的な提供を開始します。ビジネス、組織、商品・サービスに対して行動科学の理論・モデルを組み込むことで、社会課題解決型の行動を促し、競争優位性の高い変革を目指すクライアントを支援します。
 

サービスの名称:BX Strategy

サービスの特長、強み:

  • 行動経済学や心理学など行動科学に関するアカデミックな知見や手法をバックグラウンドに持ち、かつビジネスにも精通した経営コンサルタントのチームが、経営上重要な課題を科学的なアプローチによって解決する支援を行います。
  • 行動変容のメカニズムを科学的に特定・分析できるEY Japan独自のモデル(ARMS:Auto-response、Realization、Motivation、Self-efficacy)や、企業経営への行動科学の適用を容易にするパッケージ化されたソリューションにより、さまざまなビジネスシーン、政策に対して、短期間で精度の高い支援が可能です。
  • 単純なデータドリブンやビックデータの解析(無作為なデータ収集・解析と、探索的な答えの導出)ではなく、行動科学の知見に基づき精度が高い仮説を立てた上で、必要不可欠なデータのみを科学的手法に基づいて取得・解析することで、不要な試行錯誤を回避します。

支援例:

  • 官公庁:再生可能エネルギー利用を促すコミュニケーション・サービス(アプリ)の検討支援
  • 電機:パーソナルデータの取り扱いに関するレピュテーションリスクとその対応策の検討支援
  • 金融:安全運転アプリの開発支援、代理店における営業力の強化支援、個人顧客向け金融サービス開発支援、コミュニケーション・ガイドライン策定支援
  • 自社:新卒採用におけるインターンシッププログラム、リテンション施策の支援

主なプロフェッショナル:

EYSC ストラテジック インパクト リーダー パートナー Prof.國分 俊史
社会課題および経済安全保障を起点としたルール形成戦略の第一人者。BX Strategy が属するストラテジック インパクトのリーダーであり、安全保障、経済、環境、金融を掛け合わせた視点で、米中冷戦や気候変動などの世界の構造変化がもたらすインパクトを分析し、必要な社会システム改革や企業変革の推進に従事。

EYSC ストラテジック インパクト シニアマネージャー 伊原 克将
気候変動・省エネルギー分野を中心として、国の制度設計から企業の事業戦略の立案まで、行動科学トランスフォーメーション(BX)を切り口とした官民の戦略・構想プロジェクトを多数手掛ける。

EYSCストラテジック インパクト マネージャー 伊藤 言
研究機関の研究員、心理学系シンクタンク等を経て現職。大学教員を兼任。頑健な行動科学的知見を応用し、エビデンスに基づいた行動変容施策をデザインする、学術的専門性の高いコンサルティングを多数手掛ける。
 

サービス詳細については以下のページをご参照ください。
行動経済学・心理学を起点としたコンサルティングサービス – BX Strategy

*1 試算方法について
試算に当たっては、「A.社会課題を解決する行動に関連する市場規模」×「B.行動変容による市場規模の拡大率(=一律10%と仮定)」として算出。

「A.社会課題を解決する行動に関連する市場規模」について
図表の「社会課題を解決する行動」を対象とし、それぞれの行動が以下のAの対象となる市場を拡大させると仮定。(例:これまで健康を意識しない消費行動をしていた人が、行動科学を用いたアプローチにより、健康食品を購入するようになるなどして市場規模が拡大)

Aの対象となる市場

社会課題を解決する行動 社会課題を解決する行動に関連する市場
健康増進 ヘルスケア(健康保持・増進に働きかけるもの)
環境配慮 クリーンエネルギー利用(家庭用ソーラーシステム、新エネ売電ビジネス)、省エネルギー化(次世代省エネルギー住宅、省エネラベル付き冷蔵庫・エアコン・液晶テレビ、LED照明)、エコカー、リサイクル素材(廃プラスチック製品、PETボトル再生繊維、レアメタルリサイクル)、資源有効利用製品(中古自動車・家電・住宅、エコマーク認定文房具、電子書籍)、エコカーレンタル、カーシェアリング、長寿命建築、国産材使用(建築用・容器・家具・装備品)、エコツーリズム、環境教育
エシカル消費 フェアトレード、植物性代替食品、サスティナブルフード、プラントベースフード、植物性代替食品、オーガニック加工食品、自然派・オーガニック化粧品、地産地消、自転車
老後資産形成 iDeCo(個人型確定拠出年金)
保険加入 自動車保険、損害保険(自動車以外)、生命保険
デジタル活用 業務効率化、サイバーセキュリティ、情報セキュリティ
DE&I 女性活躍、LGBTQ+活躍
ワークライフバランス充実 ウェルネス市場

「B.行動変容による市場規模の拡大率(=一律10%と仮定)」について

①行動科学的な手法を用いた介入には、平均して約15%程度の行動変容効果があることを複数の研究が示している。
(メタ分析と呼ばれる、複数の研究結果の統合的な解析による)

具体的には、

  • ナッジを用いた介入の平均的な行動変容効果は16.6%(440の介入結果を統合)*7
  • ナッジ以外の介入手法も含んだ、身体活動の平均的な行動変容効果は16.6%(224の介入結果を統合)*8
  • 介入研究に限定されないが、社会心理学分野全体の効果の中央値は14.1%(6,447の実証結果を統合)*9

②他方で、学術的な実証ではなく、リアルな現場で大規模な介入を行った際には、行動変容効果が弱まることを示唆する研究も出始めているため、15%という行動変容効果の推定値に対する下方修正が必要である。

具体的には、

  • カーボンニュートラル(温暖化阻止)行動を促進するための介入の、フィールドでの平均的な行動変容効果は約7.1%(430の介入結果を統合)*10
  • 一部のナッジをフィールドで適用した際の平均的な行動変容効果は約1.4%(126の介入結果を統合)*11

③下方修正した結果として、行動変容による市場規模の拡大率を一律10%と仮定した。

※なお、行動変容効果を%に換算する際には、CohenのU3という指標を用いている。

*2 出典:Griskevicius, V., Cantú, S. M., & van Vugt, M. (2012). The Evolutionary Bases for Sustainable Behavior: Implications for Marketing, Policy, and Social Entrepreneurship. Journal of Public Policy & Marketing, 31(1), 115-128.
*3 出典:伊藤 言他「心理的個人差によるクラスタリングと省エネ行動への介入効果との関連 第6回気候変動・省エネルギー行動会議(BECC JAPAN 2019)」、2019年8月
*4 金融庁「今後のサステナブルファイナンスの取組みについて」、令和4年9月20日、https://www.fsa.go.jp/singi/sustainable_finance/siryou/20220920/02.pdf(2023年2月3日アクセス)
*5 経済産業省「令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(グローバル・サプライチェーンの環境対応等に関する分析)」、2021年3月31日、https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000172.pdf(2023年2月3日アクセス)
*6 “IWA 42:2022 Net zero guidelines”, ISO, https://www.iso.org/standard/85089.html(2022年11月29日アクセス)
*7 出典:Mertens, S., Herberz, M., Hahnel, U. J. J., & Brosch, T. (2022). The effectiveness of nudging: A meta-analysis of choice architecture interventions across behavioral domains. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(1), e2107346118.
*8 出典:McEwan, D., Beauchamp, M. R., Kouvousis, C., Ray, C. M., Wyrough, A., & Rhodes, R. E. (2019). Examining the active ingredients of physical activity interventions underpinned by theory versus no stated theory: a meta-analysis. Health Psychol Rev, 13(1), 1-17.
*9 出典:Lovakov, A., & Agadullina, E. R. (2021). Empirically derived guidelines for effect size interpretation in social psychology. European Journal of Social Psychology, 51, 485-504.
*10 出典:Bergquist, M., Thiel, M., Goldberg, M. H., & van der Linden, S. (2023). Field interventions for climate change mitigation behaviors: A second-order meta-analysis. PNAS, 120(13), e2214851120.
*11 出典:DellaVigna, S., & Linos, E. (2022). RCTs to scale: Comprehensive evidence from two nudge units. Econometrica, 90(1), 81-116.

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