EYSCの提言:電化一辺倒から、日本企業の強みを生かせるカーボンニュートラル戦略へ
今回の試算結果は、CO2排出削減を理由にEVがエンジン車に取って代わるべきという考え方に疑問を投げかけました。エンジン車へのリマニ導入はカーボンニュートラル実現の着実な一歩となり、さらに、燃料を合成燃料(e-fuel)に移行できれば、EVの優位性を上回ることになります。日本の自動車業界はグローバル市場での競争力を高めるため、エンジン車のリマニ化、および、これに伴うサプライチェーン改革を経営戦略に組み込むことを検討していくべきと提言します。
EYSC ストラテジック インパクト パートナー 國分 俊史のコメント:
「地政学リスクの高まりを受け経済安全保障はさまざまなルールとなり、企業の経営環境の前提条件を非連続かつ抜本的に変化させるため、今後少なくとも30年から40年は予見が非常に難しい状態が続きます。ゆえに、経済安全保障政策への対応を最優先した企業戦略の立案は持続的な成長に不可欠です。
EVは最も重要なバッテリーを懸念国に依存している問題の解決が見込めないことに加え、50%リマニ化したガソリン車にCO2排出量で劣るのであれば、ガソリン車のリマニ化に積極的に取り組むべきと考えます。日本の自動車業界が経済安全保障とカーボンニュートラルの観点からリマニの有効性を認識し、自動車のリマニ化を踏まえた戦略を検討することを提言します」
EYSC EYパルテノン ストラテジー(Mobility & Commercial Vehicle) パートナー 早瀬 慶のコメント:
「リマニの対象は9産業にまたがり、特に航空・宇宙・船舶・建機では従前から事業・市場として成立してきました。自動車産業においても、欧米企業を中心に水面下での活動を含め70年以上の歴史がありますが、昨今、国際的緊張が高まる中、リマニ先進企業はすでに母体国である欧米地域に回帰し、拠点やリソースを再配置しています。
今回の試算は、やみくもにEVを担ぐ潮流に対して思想・感情論ではなく定量的に疑問を投げかける点で意義があります。「普通車であっても」前述の定量効果が得られることが明らかになり、世界の保有車両の約33%を占める大型ピックアップやトラック・バスなどの商用車では言うまでもなく、さらに大きなインパクトが創出可能です。
自動車産業は、長期的には、さまざまなパワートレインや燃料の組み合わせで、地球環境を維持していくことが必要ですが、リマニは、一足飛びには、また、0/100には成り得ない、パワトレ×燃料課題の現実解として、大きな意味があると考えます」
*1 ‘Report on the current status, impacts and potential of the European automotive component remanufacturing industry’, CLEPA, clepa.eu/wp-content/uploads/2022/01/CLE09_European-remanufacturing-market-study_v6_public-view-.pdf(2024.7.10アクセス)*2 ‘What is remanufacturing?’, Rochester Institute of Technology, www.rit.edu/sustainabilityinstitute/blog/what-remanufacturing(2024.7.10アクセス)
*3 Nikkei Tech Foresight「編集者の視点 『ボルボが注力するリマニ』など3本」www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC126JP0S3A011C2000000(2024.7.10アクセス)
*4 リマニ化によるエネルギー消費量は製品・部品の修復度合いによって異なりますが、ここでは試算の簡略化のため、エネルギー消費量をゼロ(全ての部品が再使用可能)と仮定しています。
*5 ‘Global EV Outlook 2020’, IEA, June 2020, iea.blob.core.windows.net/assets/af46e012-18c2-44d6-becd-bad21fa844fd/Global_EV_Outlook_2020.pdf (2024.2.22アクセス)、経済産業省「グリーンイノベーション基金事業『次世代蓄電池・次世代モーターの開発』プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画」、2021.11.11、
meti.go.jp/press/2021/11/20211111004/20211110004-2.pdf (2024.2.22アクセス)を基に試算しています。
*6近年、一般的なメーカー保証期間が終わる3年後や5年後の買い替えを見据えて残価設定ローンを選択する消費者数が増加傾向にあることが確認されています。