2021年12月1日
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2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策の方向性

執筆者 EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

EY Strategy and Consulting Co., Ltd.

2021年12月1日

現在、石油・天然ガスを取り巻く環境は大きな転換点を迎えており、石油・ガス業界に位置付けられる企業は今後さまざまな対応が求められます。本稿では、それを考察する上で参考となる情報を提供するために、経済産業省の石油・天然ガス小委員会が2021年4月に公表した「2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策」に係る報告書の要点および実際に石油・ガス業界の企業が取り組んでいる事業内容の一部を紹介します。

本稿の執筆者

EY ストラテジー・アンド・コンサルティング(株)
ストラテジー・アンド・トランザクション(SaT)
トランザクションディリジェンス Oil & Gasセクター 公認会計士 大川拓也

監査法人において会計監査業務などに従事した後、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(株)に転職。現在は主に財務デューデリジェンスをはじめとするM&Aトランザクション関連業務に従事している。

要点
  • 経済産業省の石油・天然ガス小委員会は「2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策の方向性」についての議論を踏まえた報告書を公表しています。
  • 報告書には①石油・天然ガスの低廉かつ安定供給確保と、②カーボンニュートラルの実現に向け、石油・天然ガス政策の戦略的転換が求められることが示されています。
  • 石油・天然ガスを取り巻く環境は大きな転換点を迎えており、石油・ガス業界に位置付けられる企業は今後さまざまな対応が求められます。

Ⅰ はじめに

経済産業省の石油・天然ガス小委員会は、2020年12月から計3回にわたって開催した「2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策の方向性」(以下、石油・天然ガス政策の方向性)についての議論を踏まえ、21年4月に報告書を公表しています。報告書では石油・天然ガスを取り巻く環境は大きな転換点を迎えていることを踏まえて、①石油・天然ガスの低廉かつ安定供給確保と、②カーボンニュートラルの実現に向け、2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策の戦略的転換が求められることが示されています。

本稿では、報告書で示されている「石油・天然ガス政策の方向性」の要点を押さえるとともに、実際に石油・ガス業界の企業が取り組んでいる事業内容を紹介します。

Ⅱ 石油・天然ガスの低廉かつ安定供給確保

わが国は、以前から石油・天然ガスのほぼ全量を輸入に依存しており、中東情勢や新興国の需給構造の変化による影響を受けやすいという構造的な課題を抱えています。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大に端を発した石油価格の変動や、世界的な石油・天然ガスからのダイベストメントの動きの加速化による上流投資の減少、中国やインド等の新興国の石油・天然ガス需要の増加に伴うわが国のマーケットにおける相対的な地位低下等の不安要素が出てくる中、石油・天然ガスの低廉かつ安定供給確保がより重要となります。

報告書において、石油・天然ガスの低廉かつ安定供給確保のために以下の点が必要であると挙げられています。

  • 石油・天然ガスの自己開発比率(石油・天然ガスの輸入量および国内生産量に占める、日本企業の権益に関する取引量および国内生産量の割合)の向上
  • 中東内外を含む石油・天然ガスの供給源の多角化
  • アジア地域での緊急時における原油・石油製品の相互融通を含む備蓄協力の推進
  • アジアLNG市場の創設・拡大(詳細はⅣで後述します)

Ⅲ 石油・天然ガス政策の戦略的転換

20年10月、日本政府は50年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しています。カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーやアンモニア、水素等のゼロエミッション燃料の導入・拡大により、中長期的には一次エネルギーにおける石油・天然ガスの総需要は減少する見込みですが、これには多くの革新的技術開発の実現が前提となっており、不確実性がある中で引き続き石油・天然ガスの重要性は変わりません。

また、報告書おいて、カーボンニュートラルの実現に向けて以下の点から天然ガスが特に重要な役割を担うとされています。

  • 天然ガスは石油、石炭と比較してCO2の排出量が少ない
  • 電力を計画通りに供給できないリスクのある再生可能エネルギーの導入が加速した場合、それを補う調整電源としての期待
  • アンモニア、水素の原料としての期待(詳細はⅣで後述します)

Ⅳ 石油・ガス業界の企業の取り組み

ⅡおよびⅢにおいて報告書の要点を紹介しました。具体的に石油・ガス業界に位置づけられる企業(上流開発企業だけでなく、商社、エンジニアリング企業および電力ガス企業も含む)は今後どのような対応が求められるかを考察する上で参考となる情報を提供するために、実際日本企業が取り組んでいる事業内容を簡単に紹介します。

1. アジアLNG市場の創設・拡大

今後アジアのLNGの需要拡大が予測されており、日本企業は日本国内だけでなくアジア諸国(特に東南アジア)による海外からのLNG調達取引(外・外取引)に積極的に関与することが重要になります。なぜなら、外・外取引が活発になりアジアLNG市場が拡大することは、日本国内のLNGの需要が逼迫(ひっぱく)した場合にスポットでLNGを調達することができ、LNGの低廉かつ安定供給確保に資するからです。日本政府もこれを資金面から支援しており、(株)国際協力銀行(JBIC)は18年に優遇条件での融資提供を日本以外の第三国を仕向地とするLNG関連インフラプロジェクトにも拡大しています。また、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は20年6月におけるJOGMEC法の改正に伴い、海外におけるLNGの積替・受入事業への出資・債務保証業務を新たに開始しています。

こうした中、実際に進行しているプロジェクトがあります。インドネシアにおいて、総合商社A社、B社および海運会社C社は現地国有石油・天然ガス関連企業との協働出資により、ガス焚き火力発電所およびFSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)の建設プロジェクトを進めており、21年の操業を予定しています。また、フィリピンにおいて、電力ガス企業D社は現地大手発電事業会社と協働してFSRUを活用できる浮体式LNG基地の建設プロジェクトを進めており、22年の操業を予定しています。

2. アンモニア、水素の原料としての期待

カーボンニュートラルの実現に向けて、燃焼してもCO2を排出しない水素・アンモニアの利用が不可欠です。将来的には水素・アンモニアの製造時においてもCO2が発生しない再生可能エネルギー由来の水素・アンモニア(グリーン水素・グリーンアンモニア)の利用が期待されますが、当面の間はコスト競争力があると見込まれる天然ガス由来の水素・アンモニア(ブルー水素・ブルーアンモニア)を利用されることが予想されます。

実際にカナダにおいて、総合商社E社は現地インフラ企業および現地国有石油・天然ガス関連企業と協働で燃料用アンモニアの商用生産プロジェクトを進めています。総合商社E社は現地インフラ企業と新会社を設立して燃料用アンモニア工場を建設し、現地国有石油・天然ガス関連企業から調達した天然ガスを原料にアンモニアを製造し、日本の電力会社等に販売することを計画しており、23年に燃料用アンモニア工場建設の着工、26年に燃料用アンモニアの商業生産を予定しています。また、ニュージーランドにおいて、総合商社F社は現地水素エネルギー開発企業が設立した新会社に出資し、燃料電池大型車両向けのグリーン水素の製造から販売に至るまでの商業化プロジェクトを進めており、22年までに現地4都市に水素ステーションを設置することを計画しています。

Ⅴ おわりに

本稿においては、経済産業省の石油・天然ガス小委員会が公表した報告書で示されている「石油・天然ガス政策の方向性」の要点を押さえるとともに、実際に石油・ガス業界の企業が取り組んでいる事業内容を紹介しました。ただし、これらは一例にすぎず、企業にはさまざまな対応が求められています。また、その対応には多くの時間、労力および多額の投資が必要になります。そのため、企業として石油・天然ガスを取り巻く環境の変化に対応するための中長期的な戦略を立案・実行するとともに、必要に応じて中長期経営戦略、財務、税務、法務および関連技術等に知見のある外部専門家へ相談することをお勧めします。

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サマリー

経済産業省の石油・天然ガス小委員会が2021年4月に公表した「2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策」に係る報告書の要点および実際に石油・ガス業界の企業が取り組んでいる事業内容の一部を紹介します。

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