EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 テクノロジーセクター
公認会計士 小島 慎一/牧野 幸享/松本 貴弘/眞鍋 雅彦/渡邊 裕介
コンシューマ産業の取引慣行として、家電量販店をはじめとした顧客企業にリベートを支払うことがあります。リベートは売上割戻とも呼ばれ、ボリュームディスカウント、販売促進費、販売助成金、協賛金などの名目で支払われるものです。
各企業のリベートの支払目的は様々であるものの、会計処理については、「収益認識に関する会計基準」(以下、収益認識基準)において、顧客企業に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合を除き、取引価格から減額することとなっています(収益認識基準第63項)。また、この対価は、顧客が企業に対する債務額に充当できるもの(例えばクーポン)の額も含みます。
そして、顧客に支払われる対価を取引価格から減額する場合、「関連する財又はサービスの移転に対する収益を認識する時点」又は「企業が対価を支払うか又は支払を約束する時点(当該支払が将来の事象を条件とする場合も含む。また、支払の約束は、取引慣行に基づくものも含む)」のいずれか遅い時点で収益を減額することになりますが、収益を認識するタイミングでリベートの額が確定していないケースがあります。この場合、リベートとして収益を減額する金額(変動対価:顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分)は、過去の実績等に基づいて、期待値又は最頻値のいずれか適当な方法を用いて見積もり、見積もった取引価格を各決算日に見直す必要があると考えられます(収益認識基準第63項、50~54項)。
リベート取引は、契約締結時に販売価額の減額又は代金の支払が確定していないことが多いと思われます。そのため、事後的にリベート金額を決定する場合において、リベート取引自体の正当性及び金額の妥当性を確保するために、適時かつ適切な外部交渉、及び社内承認を行う内部統制を整える必要があります。
また、リベート取引は販売実績等に基づいて計算することも多いため、リベートの計上漏れが発生する可能性があります。この計上漏れを防止するために実績計算にシステムを導入し、結果を人為的にチェックする統制を実施する企業もあります。
これまでに解説したとおり、電機産業は非常に幅が広く、すべての製造業の要素を何かしら含んでいる業界といえます。今回解説した会計論点以外にも、例えば国際的な動向の影響等を背景に、2025年3月にSSBJ基準が公表され、2027年3月期以降東証プライム市場上場企業において順次開示が義務化されることもあり、こういった非財務情報に関する基準にも留意していく必要があります。今後はこういった非財務情報の重要性が増し、その適切性も今まで以上に問われることとなるため、各企業においては、これまで構築した内部統制について再検討することが必要となるものと考えられます。
会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。