旬刊経理情報 連載『女性リーダーからあなたへ』 第85回 キャリアビジョンは「わがまま」でいい―女性のキャリアを豊かにする方法

やまざき ひとみ
Ms. Engineer 株式会社 代表取締役 CEO


Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2024年5月10日・20日合併号に掲載された記事をご紹介します。


女性の社会進出が広がり、女性でもキャリアを長期的に描くことが当たり前になっていますが、実はこのような流れになったのは20年ほど前からだと思います。少し前まで、女性個人も社会もある女性が働くことは一時的なものだと捉えながらキャリアを描いていましたが、令和の女性にとって、長く働くことが前提になり、その結果、現代の女性はロールモデルとなる存在も少なく、漠然とキャリアへの不安を抱いている方が多いように思います。

日本はOECD加盟国のなかでジェンダーギャップ指数が常に最下位を更新していて、依然として男性はリーダーとして引っ張る存在に、女性は男性をサポートする役割というステレオタイプが強い傾向にあります。多様性の時代といわれるなかで、「女性の役割」が揺れ動いている現代の女性は、今の仕事が本当に人生を豊かにしてくれるものなのか、周りに流されずに自分軸で判断していくことが重要だと思います。

私はAIの進化によって、今後足りなくなるといわれているIT専門職の女性比率を増やすことをミッションに、Ms. Engineerという女性ITエンジニアの育成事業を立ち上げ、運営しています。会社を経営していくなかで感じるのは、女性が仕事を決める際の判断軸が「自分にできそうな範囲だから」、「親に勧められたから」など、なんとなく自分のなかにみえている知識をもとに、重要な意思決定をしてしまう人が多いということです。今後一生をかけて関わる可能性のある仕事は、私自身としては、‟社会や世の中に必要される需要のある職種につく”という考えも、生存戦略として大切だと考えています。必要とされる分野にいけば、まるでエスカレーターに乗っているかのように、働きやすさややりがいが訪れやすくなるものです。ITエンジニアは需要の高い職種だからこそ、女性にとって働きやすい仕事でもあります。具体的に、ITエンジニアに一度なると、技術が身に付くため、その後の転職で仕事に困る心配もないのはもちろん、全職種のなかで一番リモートワーク比率が高い仕事であるため、経験と実績を積めば、時間と場所の制限なく自由に働くことも可能です。さらに平均給与が他の職種に比べて平均200万といわれるほど高いので、女性が経済的な自立を目指しやすいのです。恩恵を受けられるのは、やはり職種としての需要が高いからこそ感じています。

このようなことも踏まえ、みなさんに送りたいメッセージは、「自分の夢をわがままに描いてほしい」ということです。結局は、人は自分が描いたものにしかなれない。だからこそまずは自分の理想をわがままに描くことが大切です。目指す地点が決まると、達成するまでの頑張り方が変わっていきます。「いくら稼ぎたい」、「こういう働き方をしたい」等できるだけ具体的かつ、わがままにビジョンを描き、そこから逆算して自分のキャリアに対して、今やらなければいけないことを決めて進んでいきましょう。みなさんが人生を豊かにしてくれる仕事と出会えることを応援しています。



やまざき ひとみ

やまざき ひとみ
Ms.Engineer株式会社 代表取締役 CEO

略歴

1984年生まれ。東京都出身。2007年にサイバーエージェント入社。「アメーバピグ」立ち上げプロデューサー、大人女性向けキュレーションメディア「by.S」編集長などを担当し、2015年に独立。2016年にHINT inc(現在は株式会社アタラシイヒ)を設立し、代表取締役に就任。女性向けメディア「C CHANNEL」編集長などを経て、2021年4月より、IT業界のジェンダーギャップ解消のため、女性エンジニアを育成する女性のためのプログラミングブートキャンプ事業を行うMs. Engineer株式会社代表取締役CEOを務める。


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