Social insurance and labor update vol. 4 ― インターンシップへの労働関係法令の適用と社会保険の適用について

大学等の夏季休暇にあわせてインターンシップを実施される事業主の皆さまも多いと思いますので、本ニュースレターではインターンシップ参加者に対する労働関係法令の適用と社会保険の適用について記載します。

インターンシップは職場見学や職業体験的なものから数カ月にわたって業務に従事する実践的なものまでさまざまです。インターンシップであっても参加者が労働基準法などの労働関係法令や社会保険の適用対象となるケースがあるので注意が必要です。

労働関係法令の適用

ここでポイントになるのはインターンシップ参加者(以下、「学生」)が労働基準法上の「労働者」に該当するか否かです。この判断基準として学生の法的地位に言及した通達を紹介します。

  • 直接生産活動に従事する場合などで当該作業による利益・効果が当該事業所に帰属し、かつ、事業所と学生の間に使用従属関係が認められる場合は、当該学生は労働者に該当するものと考えられる(平成9年9月18日基発636号)。
  • 大学等の教育課程の一環として行われるもので、学生が直接生産活動に従事することがなく、勤怠管理は最終的には大学等において行われ、支給される手当も実費補助的ないし恩恵的な給付である場合は原則として労働者ではないものとして取り扱って差し支えない(昭和57年2月19日基発第121号)。

上記通達から以下のような実態がある場合には「労働者」に該当すると考えられます。

  • 学生が直接生産活動に従事している。
  • 当該作業による利益・効果が会社に帰属する。
  • 使用者から業務内容の具体的な指揮命令を受けている。
  • 会社が勤怠管理を行っている。
  • 労働時間数や日数に応じて報酬が支払われている。

5点目について、報酬の支払いが無くても労働者性が肯定されることがあります。なぜなら、労働者性の判断は総合判断であり、報酬の支払は(重要ではあっても)その考慮要素の一つに過ぎないからです。

労働者に該当する場合、労働基準法をはじめとした労働関係法令が適用され、労働時間、割増賃金、最低賃金などにおいて社員と同様の取り扱いを受けることになります。

社会保険の適用

ここでもポイントになるのは学生が「労働者」に該当するか否かです。学生が前述の「労働者」に該当する場合、以下の各保険制度の適用条件を満たせば被保険者となります(逆に、学生が前述の「労働者」に該当しないのであれば、以下の検討を経ずして、被保険者とはならないとの判断が基本的には可能です)。

①健康保険・厚生年金保険

適用事業所に使用される従業員(労働者)が以下の要件を満たす場合に適用となります。

  • 使用期間が2カ月以上、かつ
  • 1週の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上

以前は当初の2カ月以内の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合、その時点から被保険者資格を取得し、最初の雇用契約期間は適用除外とされていました。しかしながら、平成22年10月以降は2カ月を超える使用が見込まれるに至った日に被保険者資格を取得することになりました。「見込まれるに至った日」とは、2カ月を超えて使用することに労使双方が合意した日とされています。

【参照】日本年金機構「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行 (令和4年10月施行分)に伴う事務の取扱いに関するQ&A集」、https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/20150518.files/kinmukikan-qa.pdf(2023年6月7日アクセス)

②雇用保険

昼間学生は被保険者とはなりませんが、休学中の場合や卒業後も引き続き同一の事業所に勤務することが予定されている場合、以下の条件を満たせば被保険者となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ
  • 31日以上の雇用見込みがある

【参照】厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き 第4章 被保険者について」、https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000637955.pdf(2024年9月3日アクセス)

③労災保険

「労働者」に該当する場合は法律の適用を受けて被保険者となります。学生が「労働者」に該当しない場合も、会社は学生に対して安全配慮義務を負いますので、万一のリスクに備えた対策をしておきましょう。

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