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本ガイドブックには、チェコ共和国の会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでにチェコ共和国へ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。
チェコ共和国は旧共産圏の国でありながら、資本主義の導入、欧州連合(EU)加盟を経て、順調な成長を続けています。ドイツへのアクセスが容易であるという地理的な優位性などから、特に自動車関連を筆頭に日系企業を含む多くの外資系企業が進出しています。また、経済・政治運営が相対的に安定していることもあり、世界銀行が定期的に行っている調査・レポートにおいては良好なビジネス環境が整った国として、上位の評価を受けています。
チェコ共和国の会計制度は、Czech Accounting Standard(CAS)と国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下IFRS)から成り立っています。国内上場企業、銀行・保険会社などの一部金融機関、特定の基準を満たす大規模企業などにおいては、IFRSに基づく財務報告が義務付けられています。一方で左記を除く、非上場企業においては現地会計基準に基づく財務報告が一般的となっています。また会計監査については、銀行、投資信託会社などの金融機関に加えて、売上、総資産、従業員数に基づく判定基準により、基準を満たしたす大企業は会社法にて公認会計士による監査が義務付けられています。
チェコ共和国の主な税金には、法人税(源泉所得税を含む)、個人所得税、付加価値税(VAT)、環境税、関税などがあります。コロナ禍明け後の財源確保が必要なことから、税務監査が強化される傾向にあり、指摘件数、金額ともに増加傾向にあります。税制優遇を含む投資優遇の面においては、低い失業率などを背景に、労働集約的な産業ではなく高付加価値な品目の製造、R&D機能、環境負荷を軽減する品目などに注力する傾向が顕著となっています。
項目 | チェコ共和国 |
非上場企業(日本企業の子会社)のIFRSの適用の可否* | 可能 |
IFRSと現地会計基準の主な差異 | チェコ共和国会計基準(CAS)は改正が重ねられ、IFRSに近づきつつあります。一方で、CASに具体的な定めがない事項についても、比較的IFRSでは定められていることが多いことから、取り扱いに差異が生じています。 |
決算期の変更 | 可能 |
決算期末の選定 | 可能 |
会社法で作成が求められる財務諸表 |
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提出する財務諸表 | 同上 |
保存期間 | 年度財務報告書は商業登記所,税務当局への提出義務があり、会計帳簿および関連書類は一般的に10年間の保存義務があります。 |
機能通貨適用の可否 | 可(条件あり) |
法定監査 | 国内上場企業,金融機関,公益事業など特定の業種,一定規模以上の企業に法定監査の義務があります(次ページ以降参照)。 |
IFRSに基づく財務諸表を作成することは、特定の条件が満たされる場合に可能となっており、非上場企業であってもIFRSに基づいて連結財務諸表を作成する親会社が存在する法人の財務諸表は、IFRSに従って作成することができます。ただし、親会社がEUの採用するIFRSに基づいて連結財務諸表を作成していることが条件であり、日系企業が採用するIFRSとの差異があることから、実際には条件を満たすことは困難となっています。
チェコ共和国会計基準(CAS)は改正が重ねられ、IFRSに近づきつつあります。一方で、CASに具体的な定めがない事項についても、比較的IFRSでは定められていることが多いことから、取り扱いに差異が生じています。
主な相違事項は以下の通りです。
※上記はIFRSとCASの典型的な相違事項のサマリーであり、相違事項を網羅するものではないことにご留意ください。
企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。
チェコ共和国では決算期は基本的に自由に選択することができ、多くの日系企業では12月31日または3月31日が採用されています。
機能通貨については、現地通貨(チェココルナ)を採用している企業が多いものの、一定の要件を満たし事前の届け出を行うことで、その他の通貨を選択することが可能となっています。チェコ共和国に進出している日系企業では、主要な販売取引,仕入取引がユーロ建てで行われていることを主な理由として、ユーロを機能通貨として選択する企業も一定程度存在しています。機能通貨と取引通貨を整合させることで、為替変動による予期しない決算への影響を排除することができるとの現地マネジメントの意向が反映したものと推測されます。
国内上場企業,金融機関,公益事業など特定の業種,一定規模以上の企業に法定監査の義務があります。
多くの日系子会社が該当する非上場,非金融の会社においては以下の一定規模の要件を満たす場合に、法定監査が求められます(日系企業の多くが採用するSpolečnost s ručením omezeným, (s.r.o.)の法人形態の場合)。
対象年度および前会計年度において、以下の条件のうち少なくとも 1つが満たされている場合
法定監査の期限は期末日後6カ月となっていることから、12月決算会社の場合は6月末,3月決算会社の場合は9月末が期限となっています。
法定監査期限が期末日後6カ月以内と、日本に比べて長い期間が許容されているため、期末日後に生じた事情による決算への影響(いわゆる修正後発事象)に留意が必要です。具体的には貸倒引当金,賞与引当金,在庫評価などにおいて、決算作成時の見積もりと実績に乖離(かいり)が生じていないか留意が必要です。
また、EU加盟国でありながら独自通貨(チェココルナ)を使用していることから、ユーロ建て取引とコルナ建て取引が企業内で混在することが一般的であり、為替変動は当期損益に影響するだけでなく、減損や引当金の見積もりに使用される将来計画にも影響を与えることに留意が必要となっています。
法人所得税率(%) | 21 (a) | |
キャピタルゲイン税率(%) | 0/21(b) | |
支店に対する税率(%) | 21 | |
源泉徴収税(%) | 配当金 | 0/15/35 (c)(d)(e) |
利息 | 0/15/35 (c)(e)(f)(g) | |
ロイヤルティー | 0/15/35 (c)(e)(g)(h) | |
リースによる賃貸所得 | 5/15/35 (c)(e)(g)(i) | |
欠損金(年) | 繰戻 | 2 (j) |
繰越 | 5 | |
(a)投資ファンド(basic investment fund)は5%の税率による課税の対象となります。また、年金基金には0%の税率が適用されます。
(b)チェコ共和国または欧州連合(EU)/欧州経済地域(EEA)の親法人が子法人の株式の譲渡において獲得したキャピタルゲイン(チェコ共和国の税法に定義された通り)は、特定の条件を満たす場合、課税を免除されます(セクションBを参照)。
(c)これらの税率は、適用される租税条約により軽減される可能性があります。
(d)配当金は15%の税率による源泉徴収税の対象となります。EU親会社・子会社指令(Parent-Subsidiary Directive)(No. 2011/96/EU)の原則の下で、チェコ共和国法人がEU/欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国に立地する親法人に支払った配当金(同指令およびチェコ共和国の法律に定義された通り)は、連続する1年以上の期間にわたり当該親法人が分配法人の10%以上の保有を維持している場合、源泉徴収税を免除されます(追加的な条件の適用あり)。2社のチェコ共和国法人の間、または外国子法人とそのチェコ共和国親法人の間における配当金の分配は、類似の条件に基づき課税を免除されます。以下の状況のいずれかが存在する場合、課税の免除は適用されません(追加的な条件の適用の可能性あり)。
(e)35%の源泉徴収税は一般に、チェコ共和国との二重課税防止条約、またはチェコ共和国と該当の外国の双方に対して拘束力を有する2国間もしくは多国間租税情報交換協定を締結していないEU/EEA域外の国を本国とする、チェコ共和国における税務上の非居住者において発生したチェコ共和国源泉所得に適用されます。また、チェコ共和国の所得支払者が該当の所得受益所有者に係る税務上の居住区分を証明できない場合にも、35%の源泉徴収税率が適用されます。35%の税率が適用される場合、これは源泉徴収税の対象となる全ての種類の所得(例えば、配当金、利息、ロイヤルティーまたは賃貸所得)に影響を及ぼします。ただし、5%の源泉徴収税率が適用される場合におけるファイナンシャルリースによる賃貸所得(脚注(i)を参照)には影響を及ぼしません。
(f) 非居住者への利息の支払いは一般に15%の税率による源泉徴収税の対象となります(一部の債券には特別なルールの適用あり)。EU指令2003/49/ECの原則の下で、チェコ共和国法人がEU/EFTA加盟国に立地する関連法人に支払った利息(同指令に定義された通り)は、特定の追加条件を満たす場合、源泉徴収税を免除されます。
(g)特定の種類の所得について、EU/EEAの税務上の居住者は、当該所得を自社の税務申告に含め、関連する費用を控除した後に、標準法人所得税率による課税を受ける(この際、税務申告する納税額に対し、支払った源泉徴収税に係る税額控除を適用する)か、または当該所得に対する最終課税として源泉徴収税を取り扱うかを選択することができます。
(h)この源泉徴収税は非居住者に適用されます。EU指令2003/49/ECの原則の下で、チェコ共和国法人がEU/EFTA加盟国に立地する法人に支払ったロイヤルティーは、特定の追加条件を満たす場合、課税を免除されます。
(i)リース契約において、リース期間終了時に借手がリース資産(有形資産に限る)の所有権を所定の価格もしくは無償で取得する旨が規定されている場合、または借手の権利もしくはオプションが規定されている場合には、総賃貸料に対して5%の源泉徴収税が課されます(追加的な条件の適用の可能性あり)。その他の賃貸料の支払いは15%の源泉徴収税の対象となります。一部の賃貸料の支払いは、チェコ共和国の税務上、ロイヤルティーとみなされる可能性があります。
(j)繰戻の上限額は3,000万チェココルナです。
税金の名称 | 付加価値税(VAT) | ||
現地名称 | Dan z pridane hodnoty (DPH) | ||
導入日 | 1993年1月 | ||
貿易圏への加盟 | 欧州連合(EU) | ||
所管 | 財務省 (www.mfcr.cz) | ||
VAT税率 | 標準 | 21% | |
軽減 | 12% | ||
その他 | ゼロ税率(0%)および非課税 | ||
VAT番号の形式 | CZに続く8桁から10桁の番号(0から9) | ||
VAT申告の期間 | 月次、四半期 | ||
月次、四半期 | |||
基準値 | VAT登録 | 国内で設立された事業者 | CZK200万 (約8万3000ユーロ) |
国内で設立されていない事業者 | なし | ||
遠隔販売 | CZK240,000(約1万ユーロ) | ||
EU域内取得 | CZK326,000(約1万3500ユーロ) | ||
電子的に供給されるサービス | CZK240,000(約1万ユーロ) | ||
国内で設立されていない事業者によるVATの控除 | あり(特定の条件あり) | ||
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