2025年ドイツの会計・監査・税務ガイド

本ガイドブックには、ドイツの会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでにドイツへ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。

2025年ドイツの会計・監査・税務ガイド

はじめに

ドイツの会計制度は、ドイツ商法に基づいて行われており、税法基準と近いものとなっています。ドイツ商法はIFRSとのコンバージェンスが積極的に行われていないことから、IFRSとドイツ商法会計には差が生じています。また会計監査については、中規模会社以上の全ての会社にて公認会計士による監査が義務付けられており、多くの会社が対象となります。

ドイツの国内総生産(GDP)は2023年に日本を抜き、世界3位となっています。その一方で CBAM(炭素国境調整メカニズム)や欧州連合(EU)森林破壊防止規制(EUDR)の導入により環境規制が強化されています。


ドイツの会計・監査制度(概略)

項目

ドイツ

非上場企業(日本企業の子会社)のIFRSの適用の可否*

否(ただし連結財務諸表はIFRSも可

IFRSと現地会計基準の主な差異

ドイツ商法会計はIFRSとのコンバージェンスが進んでおらず、複数の領域で差異が残っている。
影響が大きい領域は以下の通り

  • 収益認識に関して、一定期間で収益を認識する方法はなく、一時点で収益認識される
  • 繰延税金資産の計上は任意

決算期の変更

決算期末の選定
(暦年以外の採用可否)

会社法で作成が求められる財務諸表
  • 貸借対照表
  • 損益計算書(小規模会社は不要) 
  • 付属説明書
  • 状況報告書(小規模会社は不要) ・監査人意見(小規模会社は不要) ・利益処分案*
  •  *年度決算書上で明らかでない場合のみ

提出する財務諸表

同上

保存期間

10年 電子連邦官報(eBAZ)に公告

機能通貨適用の可否

不可(表示通貨はユーロ)

法定監査

中規模会社、大規模会社は必要


ドイツの会計・監査制度

非上場企業のIFRS適用の可否

ドイツの商法会計上、単体の財務諸表にはドイツ商法会計を適用しなければならず、IFRS 適用はできません。一方連結財務諸表においては IFRS に基づく財務諸表の作成も容認されています(上場会社の連結財務諸表については IFRS 適用が義務付けられています)。
 

IFRSと現地会計基準の主な差異

ドイツ商法会計は IFRS とのコンバージェンスが進んでおらず、両者の間には大きな差があります。

ドイツ商法会計は、制定後改訂が行われておらず、繰延税金資産の計上は任意(繰延税金負債の計上は必須)、リース(借手)の処理でリースは費用処理等、IFRS とは多くの差異があります。ドイツ子会社が連結レポーティング・パッケージを IFRS に基づいて作成する場合、ドイツ商法会計で現地財務諸表を作成している場合は多くの仕訳および組替が必要となる可能性があります。
 

会社法で作成が求められる財務諸表

企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書(小規模会社は不要) 
  • 付属説明書
  • 状況報告書(小規模会社は不要) 
  • 監査人意見(小規模会社は不要) 
  • 利益処分案 *
    * 年度決算書上で明らかでない場合のみ
     

決算期の変更および決算期末の選定 

ドイツでは会計年度は 1 月 1 日から 12 月 31 日までと規定されており、変更する際には定款への記載と税務署の同意が必要になります。
 

機能通貨適用の可否

ドイツ商法会計では機能通貨についての定義および選定についての規定はなく、税務と同様ユーロで記載するのが通例となっています。
 

法定監査

ドイツでは、商法によって会社が小規模会社、中規模会社、大規模会社に分類され、中規模会社以上の会社においては監査が必要となります。小規模会社、中規模会社、大規模会社の分類は以下の通りです。

 

小規模会社

中規模会社

大規模会社

総資産額

EUR 7,500,000以下

EUR 25,000,000以下

EUR 25,000,000超

売上額

EUR 15,000,000以下

EUR 50,000,000以下

EUR 50,000,000超

従業員数

年平均50人以下

年平均250人以下

年平均250人超

  • 上記 3 つの基準のうち 2 つの基準を連続する 2 営業年度の決算日現在で満たしている会社区分に分類
  • 新規設立の場合には設立初年度の決算日現在で判定した会社区分に分類
  • 会社区分は基準を満たしたその年度から当該会社区分に分類
  • 年間平均従業員数は 3/6/9/12 月末日の各日において雇用されている従業員の平均
  • 上記の基準は 2024 年 1 月 1 日以降開始する営業年度より適用

会計、監査上の留意点

現地財務諸表では、ドイツ商法に基づく財務諸表を作成している会社が多いため、業種によっては連結上本社へのレポーティングの際に組替が必要になります。

また、監査上は、4 月から 6 月は監査繁忙期であり、年によって異なりますが、3 月または 4 月にイースターの休日があり、1 週間程度まとまって休む方が多く、決算日程、監査日程に重なることで 3月決算会社の決算監査では、現場の対応が困難になる可能性もありますので、スケジュールには留意が必要です。

 

ドイツの法人税(概要)

法人所得税率(%)

15 (a)

営業税(trade tax)率(平均税率)(%)

14

キャピタルゲイン税率(%)

15 (a)(b)

支店に対する税率(%)

15 (a)

源泉徴収税(%)

配当金

25 (a)(c)(d)(e)

利息

0/25 (f)(g)

特許、ノウハウなどからのロイヤルティー

15 (a)(b)(g)(h)(i)

監査役会(supervisory board)メンバーへの報酬

30 (i)

建設工事に係る支払い

15 (a)(c)

支店送金税

0

欠損金(年)

繰戻

2 (j)

繰越

無期限 (k)

(a) 5.5% の連帯付加税(solidarity surcharge)が課されます(セクション Bを参照)。
(b) 株式の売却により獲得したキャピタルゲインへの課税については、セクション B の「キャピタルゲインおよびロス」を参照。
(c) これらの税率は租税条約の適用により軽減される可能性があります。
(d) この源泉徴収税は居住者および非居住者に支払われる配当金に適用されます。非居住者である企業体に支払われる配当金について、係る非居住者である配当金の受領者がドイツのトリーティショッピング防止ルールに基づき適格受領者とみなされる場合、この税率は 15% に軽減される可能性があります。
(e) これらの税率は欧州連合(EU)親会社・子会社指令(Parent-Subsidiary Directive)に基づき軽減される可能性があります。ドイツの子法人から EU の親法人に分配される配当金について、係る配当金の分配が行われる時点で連続する 12 カ月間にわたって当該受領者が当該子法人の株式資本の 10% 以上を所有しており、かつドイツのトリーティショッピング防止ルールが適用されない場合は、EU 親会社・子会社指令の適用により、0% の源泉徴収税率が適用されます。
(f) さまざまな利息、とりわけ以下の種類の利息に対し、25% の利息源泉徴収税が課されます。

  • 金融機関が支払う利息
  • 店頭取引に対する利息
  • 特定の種類の利益参加型および転換型債務証券に対する利息 

国内不動産を担保とする利息は非居住者に係る課税の対象となりますが、源泉徴収税の対象にはなりません(自己申告方式)。伝統的な(「プレーンバニラ」の)融資には利息源泉徴収税が課されません。租税条約に基づく免除が適用される場合、非居住者は源泉徴収税の還付を請求することができます。非居住者がドイツで法人所得税申告書の提出を要求される場合、源泉徴収税は賦課された法人所得税から税額控除されるか、または還付されます。

(g) これらの税率は租税条約または EU 利子・ロイヤルティー指令(Interest-Royalty Directive)に基づき軽減される可能性があります。EU 利子・ロイヤルティー指令の適用により、ドイツの居住者である法人が他の EU 加盟国に立地する関連法人に支払う利息およびロイヤルティーにはドイツの源泉徴収税が課されません。関連法人として適格とみなされるためのさまざまな要件が設けられており、とりわけ 25% 以上の株式保有または共通の親法人が要求されます。
(h) 非居住者法人に支払われる特許、ノウハウ、および類似の品目からのロイヤルティーに対する源泉徴収税率は、係る品目がドイツで登記されているか、またはドイツの事業において使用される場合は 15% です。登記された権利に関連する特定のロイヤルティー所得およびキャピタルゲインは、租税条約に基づく保護を受けないグループ内事例、および非協力的な国・地域の EU 禁止リストに掲載されている国・地域が関与する特定事例においてのみ課税されます。
(i) この源泉徴収税は非居住者への支払いにのみ適用されます。
(j) 損失の繰戻(任意)は法人所得税にのみ利用することができ、営業所得税には利用できません。2020 課税年度から 2023 課税年度までについては、繰戻の上限が 100 万ユーロから 1000 万ユーロに暫定的に引き上げられました。 2024 年度以降は 100 万ユーロの繰戻上限が適用されます。2 年間の損失繰戻が利用できるのは 2022 年度からです。
(k) 繰越は法人所得税と営業税の両方に適用されます。法人税および営業税に使用できる損失繰越の上限は、各課税年度につき 100 万ユーロと、100 万ユーロを超過する年間課税所得の 60%(2024 年度から 2027 年度までは 70%。法人所得税にのみ適用され、ドイツの営業税には適用されない)を合計した金額です(いわゆるミニマム課税)。繰越は、所有の変更ルール(セクション C を参照)の対象となります。

 

ドイツの付加価値税(VAT)(概要)

税金の名称

付加価値税(VAT)

現地名称

Umsatzsteuer/Mehrwertsteuer (USt/MwSt)

導入日

1968年1月1日

貿易圏への加盟

欧州連合(EU)

所管

ドイツ連邦財務省
(http://www.bundesfinanzministerium.de)
  連邦州の省

VAT税率

標準

19%

軽減 

7%

その他

ゼロ税率(0%)および非課税

VAT番号の形式

DE123456789 (DE+9桁)

VAT申告の期間

月次、四半期および年次

基準値

VAT登録

国内で設立された事業者

なし

国内で設立されていない事業者

なし

遠隔販売

1万ユーロ

EU域内取得

1万2500ユーロ

電子的に供給されるサービス

1万ユーロ

国内で設立されていない事業者によるVATの控除

あり(特定の条件あり)



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