EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本ガイドブックには、ハンガリーの会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでにハンガリーへ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。
ハンガリーは旧共産圏の国でありながら、資本主義の導入、欧州連合(EU)加盟を経て、順調な成長を続けており、自動車関連を筆頭に多くの日系企業が進出しています。特に近年はアジア勢がEV関連の大型投資を続々と決定しており、今なお多くのグローバル企業を引きつけています。
ハンガリーの会計制度は、Hungarian Accounting Standard(HAS)と国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下IFRS)から成り立っています。国内上場企業、銀行・保険会社などの一部金融機関、特定の基準を満たす大規模企業等においては、IFRSに基づく財務報告が義務付けられています。一方で左記を除く、非上場企業においては現地会計基準に基づく財務報告が一般的となっています。また会計監査については、金融機関などに加えて、売上、従業員数に基づく判定基準により、基準を満たしたす大企業は会社法にて公認会計士による監査が義務付けられています。
ハンガリーの主な税金には、法人税、地方事業税、個人所得税、付加価値税(VAT)、環境税、関税などがあります。特に法人税率においては、税率9%と近隣国に比べて低率を維持していることから、BEPS2.0による影響をどの様に受けるかで注目を受けています。他方、資本主義への転換以来、投資優遇(助成金支給,税額控除)などにより、積極的に国外企業の投資を呼び込むことを重視した政策を取っていることから、これらの会計処理が重要な論点となるケースが多くあります。
項目 | ハンガリー |
非上場企業(日本企業の子会社)のIFRSの適用の可否* | 可能(ただし、IFRSへの移行にあたっては各種要件を満たしたうえで、税務当局への事前届出が必要となっています) |
IFRSと現地会計基準の主な差異 | ハンガリー会計基準(HAS)は改正が重ねられ、IFRSに近づきつつあります。一方で、HASはルールベース(細則主義)の側面のある基準である一方で、IFRSはプリンシパルベース(原則主義)の基準であることから、取り扱いに差異が生じています。 |
決算期の変更 | 可能 |
決算期末の選定 | 可能 |
会社法で作成が求められる財務諸表 |
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提出する財務諸表 | 同上 |
保存期間 | 法定決算書は商業登記所および税務当局に提出する義務があり、帳簿記録および関連書類は、決算日から起算して最低7年間は保存する義務があります。 |
機能通貨適用の可否 | 可(条件あり) |
法定監査 | 国内上場企業、金融機関、公益事業など特定の業種に加えて、一定規模以上の企業に法定監査の義務があります(次ページ以降参照)。 |
国内上場会社,金融機関などの IFRS 適用が義務付けらている企業以外であっても、IFRS を適用することは制度上可能となっています。
IFRSへの移行にあたっては、税務当局への事前の届け出が求められており、加えて準備状況を確認するための監査報告書を作成するにあたり、IFRS の適用資格を有する登録法定監査人または監査法人は、企業が以下の事項を満たしているかを確認するものとされています。
ハンガリー会計基準(HAS)は改正が重ねられ、IFRS に近づきつつあります。一方で、HAS はルールベース(細則主義)の側面のある基準である一方で、IFRS はプリンシパルベース(原則主義)の基準であることから、取り扱いに差異が生じています。
近年のハンガリー会計基準(HAS)の改正は以下の通りです。
相違事項は以下の通りです。
※上記は IFRS と HAS の典型的な相違事項のサマリーであり、相違事項を網羅するものではないことにご留意ください。
企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。
一般的には 12 月 31 日を採用する企業が多いものの、親会社との決算期統一などの背景から 3 月 31 日を採用する日系企業も多く存在しています。
機能通貨については、現地通貨(ハンガリーフォリント、HUF)を採用している企業が多いものの、一定の要件を満たし事前の届け出を行うことで、その他の通貨を選択することが可能となっています。ハンガリーに進出している日系企業では、主要な販売取引,仕入取引がユーロ建てで行われていることを主な理由として、ユーロを機能通貨として選択する企業が多くなっています。機能通貨と取引通貨を整合させることで、為替変動による予期しない決算への影響を排除することができるとの現地マネジメントの意向が反映したものと推測されます。
国内上場企業、金融機関、公益事業など特定の業種に加えて、一定規模以上の企業に法定監査の義務があります。多くの日系子会社が該当する非上場、非金融の会社においては以下の一定規模の要件を満たす場合に、法定監査が求められます。
前 2 会計年度の平均において、以下の条件のうち、少なくとも1つが満たされている場合
なお、国外に所在する親会社が法定監査を受けており、その連結財務諸表にハンガリー子会社が含まれる場合には、当該ハンガリー子会社は法定監査の対象となることに留意が必要です。
法定監査の期限は期末日後 5 カ月となっていることから、12 月決算会社の場合は 5 月末,3 月決算会社の場合は 8 月末が期限となっています。
ハンガリー政府は投資誘致のために積極的に補助金支給,税額控除等のインセンティブを付与してきました。そのため、これらの会計処理が重要となる場面が多数見受けられます。具体的には補助金受領額を固定資産金額から減額するべきか、どの様に按分するべきかは、将来の税額控除の権利をどのタイミングで資産計上すべきかなど、日本では論点となることがまれな会計論点が重要となります。
また、EU 加盟国でありながら独自通貨(ハンガリーフォリント)を使用していることから、ユーロ建て取引とフォリント建て取引が企業内で混在することが一般的であり、為替変動は当期損益に影響するだけでなく、減損や引当金の見積もりに使用される将来計画にも影響を与えることに留意が必要となっています。
法人所得税率(%) | 9 (a) | ||
キャピタルゲイン税率(%) | 9 (a) | ||
支店に対する税率(%) | 9 (a)(b) | ||
源泉徴収税(%) | 配当金 | 企業への支払い | 0 |
個人への支払い | 15 | ||
利息 | 企業への支払い | 0 | |
個人への支払い | 15(c) | ||
ロイヤルティー | 0 | ||
支店送金税 | 0 | ||
欠損金(年) | 繰戻 | 0 | |
繰越 | 5(d) | ||
(a)2017年1月1日以後に開始する課税年度には9%の税率が適用される。全ての納税者は、代替ミニマム税の課税標準が一般規定に基づいて計算された課税所得を上回る場合、その課税標準に基づく税金を納税しなければならない(詳細についてはセクションB参照)
(b)外国企業の恒久的施設は、課税標準の計算上、特別な規定が適用される(セクションB参照)
(c)セクションB参照
2015年課税年度までに発生した欠損金は無期限に繰り越すことが可能。2015年課税年度以降に発生した欠損金は5年間繰り越すことが可能。
税金の名称 | 付加価値税(VAT) | ||
現地名称 | Általános forgalmi adó (ÁFA) | ||
導入日 | 1988年1月1日 | ||
貿易圏への加盟 | 欧州連合(EU) | ||
所管 | 国家経済省(https://kormany.hu/) | ||
VAT税率 | 標準 | 27% | |
軽減 | 5%、18% | ||
その他 | ゼロ税率(0%)および免税 | ||
VAT番号の形式 | 12345678-2-34 | ||
VAT申告の期間 | 全般 | 四半期 | |
新規登録された課税対象者、大規模課税対象者、およびVATグループ | 毎月 | ||
EU VAT番号を有さない登録から3年以内の小規模課税対象者 | 毎年 | ||
基準値 | VAT登録 | 国内で設立された事業者 | なし |
国内で設立されていない事業者 | なし | ||
遠隔販売 | 1万ユーロ | ||
EU域内取得 | 1万ユーロ | ||
電子的に供給されるサービス | 1万ユーロ | ||
国内で設立されていない事業者によるVATの控除 | あり(特定の条件あり) | ||
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