EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本ガイドブックには、マレーシアの会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでにマレーシアへ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。
マレーシアでは、マレーシア会社法において、企業が作成する財務諸表について会計士の監査を受けること、また、その財務諸表の作成基準となる会計基準として、マレーシア会計基準審議会が認可した会計基準を使うものと定められています。ここでマレーシア会計基準審議会は、マレーシア財務報告基準(Malaysian Financial Reporting Standards:MFRS)とマレーシア非上場企業財務報告基準(Malaysian Private Entities Reporting Standards: MPERS)の二つの会計基準を用意しています。MFRSは国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards:IFRS)と同等の会計基準です。また、MPERSは、中小 企 業 向 け 国 際 財 務 報 告 基 準(International Financial Reporting Standards for Small and Medium-sized Entities:IFRS for SMEs)と同等の会計基準です。
MFRSは主にクアラルンプール証券取引所上場会社や銀行・保険などの一定の業種に属する企業に対してその適用が義務付けられます。前記以外の企業は、MFRSもしくは、MPERSのいずれかを選ぶことになります。マレーシアに所在する日系企業は、証券取引所に上場していない企業が多いめ、一般的にはMPERSを選ぶことが多い傾向にあります。
マレーシアの主な税金は次の通りで、全て国税であり地方税はありません。
項目 | マレーシア |
非上場企業(日本企業の子会社)のIFRSの適用の可否* | 可 |
IFRSと現地会計基準の主な差異 |
|
決算期の変更 | 可 |
決算期末の選定 | 可: マレーシアに親子関係がある企業は決算期を統一することが求められる |
| 会社法で作成が求められる財務諸表 |
|
提出する財務諸表 |
|
保存期間 | 7年間 |
機能通貨適用の可否 | MFRS・MPERS共に機能通貨の適用が求められる |
法定監査 | 全ての会社において必要 (休眠企業に対する免除措置有り) |
*非上場企業のIFRS適用可否については、以下の基準で記載しています。
否:税務申告時または規制当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準で提出しなければならない場合。
可:税務申告時または現地当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準以外にIFRS基準であっても良い場合
マレーシアで事業を行う企業は MFRS もしくは MPERS のうちいずれかの会計基準を適用することが必要です。このうち、MFRS は IFRS と同等に取り扱われており、また、非上場企業でも選択適用が認められています。MFRS では、最新の IFRS 基準の適用年度についても、IFRS と同じ取り扱いとしています。
前述の通り、MFRS は IFRS と同等の会計基準であるため、個別の基準の内容について IFRS とほとんど差異はありません。一方で、非上場企業で MPERS を適用している場合においては、各基準の内容についていくつかの差異があること、また、2016 年 1 月 1 日に適用となって以降の更新がなされていないため、最新の基準が反映されていませんので、連結上のレポーティングにおいては必要な組み替え処理を行うことが必要となります。
昨今、親会社での IFRS 採用および決算期統一を契機として、マレーシアの日系企業が決算期変更をすることが見受けられます。マレーシアにおいて決算期変更をする場合は、税務当局への届け出が必要になります。この場合、届け出をする期限に注意が必要です。
マレーシアにおいて、表中記載の例外(マレーシア国内での親子関係)を除いて自由に決算日を選定できます。日系企業としては、一般的には 12 月決算企業が多く、次いで、IFRS を採用した日本本社の決算期に合わせた 3 月決算が多く見受けられます。
税務上の課税期間については会計年度がそのまま適用されますので、通常は会計期間と課税期間は一致しますが、上記の決算期を変更する場合はずれが生じることもあります。
マレーシアにおいて、表中記載の例外(マレーシア国内での親子関係)を除いて自由に決算日を選定できます。日系企業としては、一般的には 12 月決算企業が多く、次いで、IFRS を採用した日本本社の決算期に合わせた 3 月決算が多く見受けられます。
税務上の課税期間については会計年度がそのまま適用されますので、通常は会計期間と課税期間は一致しますが、上記の決算期を変更する場合はずれが生じることもあります。
企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。
会社法で作成が定められた財務諸表一式を CCM(Companies Commission of Malaysia : マレーシア会社登記所)に提出する必要があり、提出する際には財務諸表に次の資料を添付し、製本して提出することが求められます。
また、製本する際には Statutory Declaration に対するマレーシアの公証役場の証印、各種書類への Director のサインや議事録の準備などの実務手続きがあり、実務上は製本手続きのみで 2 ~3 週間程の時間を要します。
帳簿の保存期間について、会社法上は 7 年間と規定されており、税法上においても同様に 7 年間の保存期間が規定されています。帳簿以外の関連証憑類も原本の保管が要求されます。
MFRS および MPERS において、機能通貨の採用が求められています。そのため、企業の機能通貨がどの通貨になるかを検討して記帳することが求められます。
マレーシア会社法においては、免除要件を満たさない企業は全て会計監査人による監査を受けることが求められています。MFRS もしくは MPERS に準拠した財務諸表を作成し、監査済財務諸表は、定時株主総会で承認もしくは株主へ送付されることが必要になります。
※監査の免除要件
1) 休眠会社
2) 以下の基準を全て満たす企業
① 現在および直近の過去二会計年度において売上が 300 万リンギットを超えない
② 現在および直近の過去二会計年度において総資産が 300 万リンギットを超えない
③ 現在および直近の過去二会計年度末において従業員が 30 人を超えない
マレーシアでは、IFRS と同等の会計基準である MFRS や、IFRSfor SMEs と同等の会計基準である MPERS の適用が要求されています。しかしながら、人材不足や高い離職率といったマレーシア特有の労働環境により、十分な経理知識・実務経験を有する担当者を配置した経理・財務部の組織体制の構築が難しいことがあります。また、非上場の日系企業の場合、監査が期末月や期末日後に開始されることが多いです。そのため、期中に不適切な会計処理が適用されていたり、重要な会計上の論点の検討が遅れることなどにより、決算監査の過程で会計処理の修正が発生するなど混乱が生じることがよく見受けられます。経理人材の育成・維持を図りつつ、人材が不足する場合には記帳や決算業務などをアウトソースすることを検討し社内での適切な財務報告体制の構築をするとともに、早い時期から監査人とのコミュニケーションを密にとり、監査のスケジュール(キックオフミーティングやクロージングミーティング、資料の受け渡し時期や監査報告書の受領時期など)を明確に定めた上で進捗管理を行い、監査が終了した後も翌年度の監査・会計上の課題を議論・共有することが重要になります。
法人税率(%) | 24 (a) | |
キャピタルゲイン税率(%) | 10 (b) | |
不動産譲渡益税率(%) | 30 (c) | |
支店税率(%) | 24 (a) | |
源泉徴収税(%) | 配当金 | 0 |
利息 | 15 (d)(e) | |
特許、ノウハウなどからのロイヤルティー | 10 (d) | |
不動産投資信託および財産信託基金からの分配 | 10/24 (f) | |
非居住者請負業者への支払い | 13 (g) | |
特定のサービスおよび動産の使用に対する支払い | 10 (h) | |
その他の所得 | 10 (i) | |
支店送金税 | 0 | |
欠損金(年) | 繰戻 | 0 |
繰越 | 10 (j) | |
(a) 主たる法人税率は 24% です。マレーシアで設立された居住者企業のうち、課税基準期間の期首時点における普通株式に関する払込資本金が 250 万リンギット以下で、かつ関連する課税年度の売上が 5,000 万リンギット以下であるほか、他の所定の条件を満たすもの(中小企業)は、15 万リンギットまでの課税所得は 15%、次の 45 万リンギット分の課税所得は 17%、それを超える部分の課税所得は 24% の率でそれぞれ課税されます。2024 年の課税年度からは、当該企業の普通株式に関する払込資本金の 20% 超を、マレーシア国外で設立された一つ以上の会社またはマレーシア国民ではない個人が直接・間接を問わず所有する場合においては、この優遇税率(すなわち、15% と17%)は適用されません。上掲の税率は、生産物分与契約に基づいて石油・ガス上流事業を営む企業には適用されず、当該事業は 38% の税率で課税されます。詳しくはセクション B を参照してください。
(b) キャピタルゲイン税は、マレーシアで設立された会社の未公開株、または外国で設立された被支配会社で、その価値が間接・直接を問わずマレーシア国内の不動産に実質由来する会社の株式の処分による課税所得に対して 10% の率で課税されます。ただし、当該の株式が 2024 年 1 月 1 日より前に取得されたものである時は、譲渡者は処分受取金総額に対して 2% の率で課税を受けることを選択できます。キャピタルゲイン税はまた、マレーシア国外にある資本的資産の処分にも、利得がマレーシア国内で受け取られる場合には適用されます。適用税率は譲渡者の通常税率になります。セクション B を参照してください。
(c) 不動産譲渡益税は、不動産または不動産会社の株式の処分から生じる利得に対して課されます。最高税率は 30% です(セクション B を参照)。2024 年 1 月 1 日から、不動産譲渡益税は、会社、有限責任事業組合、信託機関、または協同組合による不動産会社の株式の処分には適用されなくなります。これらの主体はキャピタルゲイン税が課税されるようになります。ただし、1990年ラブアン事業活動税法(Labuan Business Activity Tax Act 1990)の対象であるラブアン島の法人は、不動産会社の株式の処分については今後も不動産譲渡益税が課税されます。
(d) これは、非居住者への支払いにのみ適用される最終税です。
(e) マレーシア国内に事業所を持たない非居住者に支払われる銀行利息は、課税が免除されます。国債のほか、証券委員会による承認もしくは認可を得たまたはこれに届け出た、転換社債を除くマレーシアリンギット建てイスラム債(スクーク)または社債について非居住者企業に支払われる利息は、課税が免除されます。証券委員会による承認もしくは認可を得たもしくはこれに届け出た、またはラブアン金融サービス庁(LFSA:Labuan Financial Services Authority)による承認を得た、転換社債を除くマレーシアリンギット以外の通貨建てで発行されたマレーシアに由来するイスラム債に関係して非居住者企業に支払われる利息も、課税が免除されます。この免税措置は、同一グループ内の会社へ支払われまたは割り当てられる利息には適用されません。2022 年 1 月 1 日から、利息が特別目的ビークル(SPV:special purpose vehicle)から会社へ支払われまたは割り当てられる場合、利息が証券委員会に届け出がなされたか LFSA の承認を得たもしくはその両方の要件を満たす資産担保証券(ABS:asset-backed securities)に従って支払われた、または利息を受け取る会社とオリジネーター(すなわち、専ら ABS の発行のために SPV を設立した者)が同一グループに属する場合においても、本免税措置は適用されなくなりました。利息には他の免税措置が適用される場合があります。また、これらの免税措置には他の条件が適用される場合があります。
(f) 24% の源泉徴収税は、特定の分配条件を充足するためマレーシアの所得税を免除された不動産投資信託(REIT)および財産信託基金(PTF:Property Trust Funds)から非居住者企業であるユニット保有者への分配に課されます。そうした REIT および PTF から個人、信託機関、その他企業でないユニット保有者に対して行われる分配は、10% の率にて源泉徴収税が課税されます。
(g) この源泉徴収税は、最終的な納税債務に対する税の前払いとして扱われます。
(h) これは、マレーシア国内で提供されるサービスへの対価としての非居住者に対する支払い、および航海用船、期間用船、または裸用船契約に基づく船舶の使用への対価としてマレーシアの海運会社(法令に定義)によってなされる支払いを除く、動産の使用への対価としての支払いに適用される最終税です。この税率は特定の租税条約のもとでは引き下げられます。
(i) 「その他の利得または利益」に対しては源泉徴収税が課されますが、これに該当する支払いにはとりわけ、非居住者の事業所得の一部を構成しないコミッションや保証料も含まれます。
(j) セクション C を参照。
税金の名称 | 売上税およびサービス税(SST:Sales tax and service tax) | ||
現地名称 | Cukai jualan dan cukai perkhidmatan (CJP) | ||
導入日 | 売上税 | 2018年9月1日 | |
サービス税 | 2018年9月1日 | ||
デジタルサービスに係るサービス税 (SToDS) | 2020年1月1日 | ||
低価格物品に係る売上税(SToLVGs) | 2024年1月1日 | ||
貿易圏への加盟 | 東南アジア諸国連合(ASEAN) | ||
所管 | マレーシア税関局(RMCD:Royal Malaysian Customs Department) | ||
売上・サービス税率 | 売上税 | 標準 | 10% |
その他 | 5%(特定の石油製品については免税措置および特別税率がいくつかある) | ||
サービス税 | 標準 | 規定の課税対象サービスに対して6%(2024年3月1日をもって8%に引き上げられた) | |
その他 | クレジットカードまたはチャージカードのサービスの提供に対して年間25リンギットの特別税率 | ||
デジタルサービスに係るサービス税 (SToDS) | 外国登録事業者提供の課税対象デジタルサービスに対して6% | ||
SST番号の形式 | 15桁(最初の1桁はアルファベット(通常はW)で残りは数字) | ||
SToDS番号の形式 | 8桁(数字) | ||
SToLVGs番号の形式 | 10桁(数字) | ||
SST課税期間 | SST登録事業者 | 隔月(2カ月ごと(すなわちSST-02申告)) | |
SST非登録事業者と売上税のみの登録事業者 | 輸入したサービスに対するサービス税についてのみ毎月の提出(すなわちSST-02A申告) | ||
SToDS登録事業者 | 年4回(3カ月ごと(すなわちDST-02申告) ) | ||
SToLVGs登録事業者 | 年4回(3カ月ごと(すなわちLVG-02申告)) | ||
登録基準値 | 売上税 | 50万リンギット | |
サービス税 | 50万リンギット | ||
SToDS | 50万リンギット | ||
SToLVGs | 50万リンギット | ||
マレーシア国内に事業拠点を有さない事業者によるSSTの回収 | なし | ||
フルバージョンには、EY Tax Guideの日本語版(法人税、個人所得税およびイミグレーション、付加価値税(売上税およびサービス税))が含まれています。本ガイドのフルバージョンをご希望の方は、こちらのお問い合わせより、以下の項目を記載の上ご連絡ください。