EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本ガイドブックには、ポーランドの会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでにポーランドへ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。
ポーランドは欧州の中でも随一の親日国であることや、2004年の欧州連合(EU)加盟後の順調な経済成長などを背景に、自動車関連を中心に350社を超える日系企業が進出しており、近年は中央ヨーロッパで最大の人口(約3600万人)を有することから、食品,衣料品などのコンシューマー向け企業の進出も進んでいます。
ポーランドの会計制度は、Polish Accounting Standard(PAS)と国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、以下IFRS)から成り立っています。国内上場企業、銀行・保険会社などの一部金融機関、特定の基準を満たす大規模企業などにおいては、IFRSに基づく財務報告が義務付けられています。一方で左記を除く、非上場企業においては現地会計基準に基づく財務報告が一般的となっています。また会計監査については、上場企業に加えて、非上場企業においても売上、総資産、従業員数に基づく判定基準により、基準を満たした企業は会社法にて公認会計士による監査が義務付けられています。
ポーランドの主な税金には、法人税(源泉所得税を含む)、個人所得税、付加価値税(VAT)、関税などがあり、頻繁に実施細則が公布されるといった特徴があります。近年のポーランドでは、持続的な経済成長などを主な目的として、投資優遇措置,研究開発に対する優遇など、納税者の税負担の軽減を図るための各種減税策などに注力しています。一方で税収確保の観点から、課税所得が適切にポーランドで計上さている状態を確保するための徴税管理の強化も図っています。電子インボイス(E-Invoice)制度の導入、帳簿データの電子データによる提出義務導入など、デジタル技術を活用した徴税管理も推進されています。
項目 | ポーランド |
非上場企業(日本企業の子会社)のIFRSの適用の可否* | 可能 |
IFRSと現地会計基準の主な差異 | 現地会計基準(PAS)において特段の定めのない事項については、IFRSが準用される定めとなっていることから、IFRSに類似するルールではあるものの、一部の取り扱いに差異があります。 |
決算期の変更 | 可能 |
決算期末の選定 | 可能 |
会社法で作成が 求められる財務諸表 |
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提出する財務諸表 | 同上 |
保存期間 | 年度財務報告書はKRS(登記裁判所)へ提出する義務があり、帳簿記録および関連書類は、決算日から起算して最低5年間は保存する義務があります。 |
機能通貨適用の可否 | 不可(PASの下では、ポーランドズロチ(PLN)で決算書を作成する必要あり) |
法定監査 | 業種,法人形態に応じて異なる要件があります(次ページ以降参照)。 |
IFRS に基づく財務諸表を作成することは、特定の条件が満たされる場合に可能となっており、非上場企業であっても IFRS に基づいて連結財務諸表を作成する親会社が存在する法人の財務諸表は、IFRS に従って作成することができます。ただし、親会社が EU の採用する IFRS に基づいて連結財務諸表を作成していることが条件であり、日系企業が採用する IFRS との差異があることから、実際には条件を満たすことは困難となっています。
ポーランド会計基準(PAS)において特段の定めのない事項については、IFRS が準用される定めとなっていることから、IFRS に類似するルールではあるものの、一部の取り扱いに差異があります。
主な相違事項は以下の通りです。
※上記は IFRS と PAS の典型的な相違事項のサマリーであり、相違事項を網羅するものではないことにご留意ください。
企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。
ポーランドでは決算期は基本的に自由に選択することができ、多くの日系企業では 12 月 31 日または 3 月 31 日が採用されている。
ポーランド会計基準(PAS)では、機能通貨の概念がなく、ポーランドズロチ(PLN)で決算書を作成する必要があります。
業種、法人形態に応じて異なる要件があります。
多くの日系子会社が該当する非上場、非金融の有限責任会社(Sp. z o.o.)においては以下の要件となっています。
対象年度の前会計年度において以下の条件のうち少なくとも 2つが満たされている場合
法定監査の期限は期末日後 6 カ月となっていることから、12 月決算会社の場合は 6 月末、3 月決算会社の場合は 9 月末が期限となっています。
法定監査期限が期末日後 6 カ月以内と、日本に比べて長い期間が許容されているため、期末日後に生じた事情による決算への影響 (いわゆる修正後発事象)に留意が必要です。具体的には貸倒引当金、賞与引当金、在庫評価などにおいて、決算作成時の見積もりと実績に乖離(かいり)が生じていないか留意が必要です。
また、EU 加盟国でありながら独自通貨(ポーランドズロチ)を使用していることから、ユーロ建て取引とズロチ建て取引が企業内で混在することが一般的であり、為替変動は当期損益に影響するだけでなく、減損や引当金の見積もりに使用される将来計画にも影響を与えることに留意が必要となっています。
法人所得税率(%) | 5/9/19 (a) | |
キャピタルゲイン税率(%) | 19 | |
支店に対する税率(%) | 19 | |
源泉徴収税(%) | 配当金 | 19 (b)(c) |
利息 | 20 (d)(e) | |
ロイヤルティー | 20 (d)(e) | |
役務 | 20 (f) | |
支店送金税 | 0 | |
欠損金(年) | 繰戻 | 0 |
繰越 | 5(g) | |
(a)納税者により研究・開発(R&D)活動の一環として創造、開発、または改良された適格知的財産(IP)から得た「適格所得」には、5%の優遇税率が適用されます。キャピタルゲインによる所得に該当しない所得に係る9%の軽減法人税率は、前年(付加価値税(VAT)を含む総額)および当年(VATを除く正味額)による売上高がポーランドズロチ換算で200万ユーロ相当以下だった小規模納税者に適用されます。
(b)この税は、居住者および非居住者に支払われる配当金に課されます。
(c)一定の条件が満たされる時は、この率は租税条約によりまたは国内法に基づき引き下げられる場合があります(セクションBを参照)。
(d)この率が適用されるのは、非居住者に支払われる利息とロイヤルティーに限られます。
(e)一定の条件が満たされる時は、税率は租税条約によりまたは国内法に基づき引き下げられる場合があります(セクションBを参照)。
(f)この源泉徴収税が適用されるのは、非居住者へなされる役務の支払いに限られます。
(g)1年に控除できる過年度の損失は50%までです。ただし、当該損失が500万ズロチを下回る時はこの限りではありません。相殺する欠損金と課税所得は同じ出どころでなければなりません。
税金の名称 | 付加価値税(VAT) | ||
現地名称 | Podatek od towarów i usług | ||
導入日 | 1993年7月5日 | ||
貿易圏への加盟 | 欧州連合(EU) | ||
所管 | 財務省(http://www.mf.gov.pl) | ||
VAT税率 | 標準 | 23% | |
軽減 | 5%、8% | ||
その他 | ゼロ税率(0%)および非課税 | ||
VAT番号の形式 | 123-45-67-890 | ||
VAT申告の期間 | 毎月または3カ月ごと | ||
基準値 | VAT登録 | 国内で設立された事業者 | 200,000ズロチ(約4万3800ユーロ) |
国内で設立されていない事業者 | なし | ||
遠隔販売 | 42,000ズロチ(1万ユーロ) | ||
EU域内取得 | 50,000ズロチ(約1万900ユーロ) | ||
電子的に供給されるサービス | 42,000ズロチ(1万ユーロ) | ||
国内で設立されていない事業者によるVATの控除 | あり(特定の条件あり) | ||
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