2025年シンガポールの会計・監査・税務ガイド

本ガイドブックには、シンガポールの会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでにシンガポールへ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。

2025年シンガポールの会計・監査・税務ガイド

はじめに

シンガポールは、過去一貫して経済的に成長し変化し続け、東南アジアのビジネスハブとしての地位を築いてきました。また、外資誘致のために、透明性の高い法規制、ユーティリティーの完備、効率的な道路・港湾・空港の整備と運営、良好な通信環境や労使関係、自由貿易協定(FTA)や租税協定の拡大、知的財産保護制度といった経済インフラを備えると同時に、住宅、治安、教育、衛生の面でアジアトップクラスの生活環境を整える政策を、クリーンで強力な官僚制度が進めてきました。現在も、シンガポール政府は外国企業に対して積極的に誘致活動を行っており、多くの外国企業が進出しています。シンガポールはグリーン&クリーンカントリーとよばれており、官吏の腐敗や不正といったことは極めて少なくなっています。その反面、高度に発展した管理社会であるため、企業活動に関してもさまざまな法律があり、それに準拠して企業活動を営まないと、罰金などが課せられます。

シンガポールの会計・監査制度は、国際的な基準を積極的に導入し、世界的にも先進的で透明性の高いものです。非上場企業に適用される会計基準であるFRSは、ほぼIFRSと一致しています。一方、FRSに基づく財務諸表を作成するにあたり要求される開示事項が日本基準とは異なる点や、原則として全ての会社や外国会社の支店は公認会計士の監査を受けなければならない点には留意が必要です。

また、シンガポールに進出した日系企業の重大な関心事項の一つが税金です。シンガポールの法人税に関する法令としては、以下のようなものがあります。

  •  Income Tax Act(Chapter 134)
  •  Economic Expansion Incentives Act(Chapter 86)

シンガポールの法人税は賦課課税制度であり、申告納税制度である日本とは大きく異なります。

そのため賦課決定までに時間がかかりますので、会社によっては過去数年間の申告に関して、決着がついていない場合もあります。また、通常は税務調査が直接会社に入らないため、調査事項は全て文書で税務当局とやりとりすることになります。


シンガポールの会計・監査制度(概略)

項目

シンガポール

非上場企業(日本企業の子会社)のIFRSの適用の可否*

IFRSと現地会計基準の主な差異

現地会計基準はIFRSと同等(一部取り扱いに差異あり)

決算期の変更

決算期末の選定
(暦年以外の採用可否)

会社法で作成が求められる財務諸表
  • 財政状態計算書
  • 包括利益計算書
  • 持分変動計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 注記事項

提出する財務諸表

同上

保存期間

5年間

機能通貨適用の可否

法定監査

原則として、全ての会社や外国会社の支店は公認会計士の監査を受けなければならない。

*非上場企業のIFRS適用可否については、以下の基準で記載しています。
否:税務申告時または規制当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準で提出しなければならない場合。
可:税務申告時または現地当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準以外にIFRS基準であっても良い場合。


シンガポールの会計・監査制度

シンガポールの会計基準

シンガポール会計基準委員会から一般に公正妥当と認められたシンガポールの会計基準は、以下のとおりです。

① Singapore Financial Reporting Standards
 (International):SFRS(I)
② Financial Reporting Standards:FRS
③ Singapore Financial Reporting Standard for Small
  Entities:SFRS(SE)
④ Charities Accounting Standard:CAS

このうち、①の SFRS(I)は IFRS と完全に一致しており、シンガポールの上場会社および上場準備会社等に強制適用されます。非上場企業は一般的に②の FRS を適用している場合がほとんですが、SFRS(I)を任意適用することも可能です。
 

現地会計基準とIFRSの主な差異  

非上場会社に一般的に適用される FRS は、IFRS のうちほぼ全てを、シンガポールの一般的に公正妥当な会計基準として認め、採用されたものです。ただし、連結財務諸表作成の免除要件や、一部基準の適用時期など、若干の IFRS との差異があります。
 

シンガポールの会社法で作成が求められる財務諸表

企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。

  • 財政状態計算書 
  • 包括利益計算書 
  • 持分変動計算書 
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 注記事項

なお、会社や外国会社の支店は、決算終了後一定期間内に財務諸表を ACRA(企業会計規制庁)に提出する義務があり、ACRA はこの財務諸表を公衆の縦覧に供しています。手数料を払えば、 ACRA のウェブサイトを通じ、XBRL もしくは PDF データ化された財務諸表を入手することができます。
 

決算期の変更および決算期末の選定

シンガポールでは、会社は決算日を自由に選択することができます。変更にあたっては、ACRA への通知や税務当局(IRAS)への通知など、所定の手続きを行う必要があります。
 

機能通貨について

FRS では、IFRS における IAS 第 21 号「外国為替レート変動の影響」と同等の基準(FRS21)が整備されており、当基準に照らして機能通貨を決定する必要があります。
 

法定監査

シンガポールでは会社法の規定に基づき、公認会計士を会計監査人として選任し、毎年1回監査を受けなければなりません。すなわち、全ての株式会社は公認会計士という外部会計監査人の監査が義務づけられています。外国会社の支店も同様に公認会計士の監査が強制されています。

例外として、以下の免除要件について、3 つの要件のうち 2 つを 2 会計期間連続で満たす一定の小規模企業については、監査が免除されます。

  • 年間売上高が SGD 10 百万以下であること
  • 決算日時点において総資産額が SGD 10 百万円以下であること
  • 決算日時点において従業員が 50 人以下であること

なお、年間売上高、総資産額、従業員数については、連結ベースで判断する必要があります。日系企業の子会社の場合は、親会社が法人株主に該当するため、原則的には全ての会社が監査を受ける必要があることにご留意ください。
 

会計、監査上の留意点

シンガポールの会計制度で特徴的なのは、原則として、全ての会社や外国会社の支店は公認会計士の監査を受けなければならないことです。これは、シンガポールの会計システムが英国法に基づいた制度であるためです。日本やアメリカでは、上場会社や大会社以外の小規模会社については公認会計士の監査は強制されていません。

第二の特徴は、シンガポールの会計基準が、国際会計基準(IFRS)をほぼそのままの形で導入していることです。

第三の特徴は、シンガポールの決算書の登録制度です。登録制度は広く一般大衆に会社の財政状態や経営成績を告知する制度です。この点では日本よりも進んでおり、誰でもインターネットを通じて、ACRA のウェブサイトから会社の決算書を入手することができます。


シンガポールの法人税(概要)

法人所得税率(%)

17(a)      

キャピタルゲイン税率(%)

なし 

支店に対する税率(%)

17(a)

源泉徴収税(%)

配当金

 0

利子 

15

特許、ノウハウなどからのロイヤルティー

10

支店送金税

なし

欠損金(年)

繰戻

 1(b)

繰越

制限なし(b)

(a) さまざまな免税および税控除あり(B の項を参照)
(b) C の項を参照。


シンガポールの物品・サービス税(GST)(概要)

税金の名称

物品・サービス税(GST)

現地名称

Cukai barangan dan perkhidmatan

導入日

1994年4月1日

貿易圏への加盟

東南アジア諸国連合(ASEAN)

所管

シンガポール税務当局(IRAS) 
  (https://www.iras.gov.sg)

GST税率

標準

9%

その他

ゼロ税率(0%) および非課税

GST番号の形式

国内事業者

M2-1234567-8, MR-1234567-8 および 19-9012345-X 

非居住者

F2-1234567-D

GST申告の期間

四半期/月次(認可による)

基準値

100万シンガポールドル

国内で設立されていない事業者によるGSTの控除

不可



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