EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
本ガイドブックには、台湾の会計・監査・税務に関する最新の基礎的概要を掲載しています。すでに台湾へ投資されている企業、および今後投資を検討している企業の皆さまの基本的な理解にお役立ていただけますことを願っております。
グローバル経済では、世界的なパンデミックとその後のインフレーションへの対応、米中貿易戦争や世界各地での紛争による分断とそれらによる先進国と発展途上国の構図の変化など、先行きが見通しにくい大きな変動が繰り返されています。台湾は、これまでIT、半導体、電子部品といった分野において産業基盤が拡充し、グローバルサプライチェーンにおいて不可欠な役割を果たす企業も多く存在しており、ここ数年も実質的な経済成長が継続しています。
歴史的、文化的、地理的に深い絆を持つ台湾と日本では、台湾における安定したインフラ、治安の良さや民度の高さからも、日本から台湾への投資についても近年も継続して見られており、特にIT、半導体、電子部品産業、およびエネルギー産業をはじめ、サービス業も進出が増えています。また、近年では台湾の企業や個人による日本への投資も増加傾向にあり、人、ビジネス、文化など、あらゆる側面において交流が益々盛んとなっています。
台湾の会計制度については、2016年より、非上場企業に対してもIFRS for SMEsをベースとした会計基準が導入されてから、上場企業向けの台湾版IFRSを適用する非上場企業を含めて、ほぼ全ての企業にIFRSをベースとした会計基準が適用されています。
また、2018年11月以降は、法定監査制度の要件が見直され、これまでの資本金基準のみならず、収益や従業員数を基礎とした条件も加わっており、経済成長と共に監査制度の重要性が高まっております。
税務面では、法人、個人、国際税務ともに税務インフラは整っていると言えます。台湾は OECDおよび20か国・地域首脳会合(G20)の加盟国ではありませんが、台湾国内法の自主的な改正を繰り返すことで、BEPSをはじめとしたグローバルの動向の波に後れを取ることなく国際税務における対応も強化しています。
項目 | 台湾 |
非上場企業(日本企業の子会社)のIFRSの適用の可否* | 可 |
IFRSと現地会計基準の主な差異 | 小 |
決算期の変更 | 可 |
| 決算期末の選定 (暦年以外の採用可否) | 可 |
会社法で作成が求められる財務諸表 |
|
提出する財務諸表 | 同上 |
保存期間 |
|
機能通貨適用の可否 | 可 |
法定監査 | 必要 |
非上場企業のIFRS適用可否については、以下の基準で記載しています。
否:税務申告時または規制当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準で提出しなければならない場合。
可:税務申告時または現地当局に提出(添付)する財務諸表が自国の会計基準以外にIFRS基準であっても良い場合。
台湾で事業を行う企業は、台湾企業会計準則公報(EAS: Enterprise Accounting Standard)を適用することが一般的ですが、IFRS を選択適用することが可能です。ただし、ここで言う IFRS は台湾における IFRS(T-IFRS または台湾版 IFRS)であり、Pure IFRS と比べて大きな差はありませんが、若干の差異があります。EAS は、2013 年時点の IFRS for SMEs をベースとして作成された基準であり、適用以降、随時改正がなされていますが、IFRS15、16 等は導入されていない状況です。そのため、 EASに従って現地台湾の財務諸表を作成している場合には、日本において連結をするために、グループで採用している会計基準に合わせるための修正を行う必要があります。
EAS は 2013 年時点の IFRS for SMEs がベースとなっており、開示情報が簡略化されていたり、連結財務諸表に係る基準や退職給付に係る基準などの IFRS で規定されている基準が EAS に存在しないものもあります。規定されている個別の基準の内容については IFRS との差異は大きくありませんが、IFRS における近年の諸種改訂については部分的導入にとどまり、例えば IFRS15、16 といった基準は EAS には織り込まれていない状況です。
今後、IFRS15 に対応する基準である EAS 第 24 号「顧客との契約 か ら 生 じ る 収 益( 暫 定 )」が 追 加 さ れ る 予 定 で あ る 一 方、 IFRS16 に対応する基準は導入に向けた評価を行っている段階であり、いずれも現時点では適用開始時期等は未定となっています。したがって、これらの会計基準差異がある点、および今後の基準の改定について留意が必要となります。
EAS の基準の体系、および IFRS との主な差異は以下の通りです。
メキシコでは、設立・清算の場合を除き、会社法により 12 月 31日が法定決算日とされており、決算期の変更は認められておりません。
また、税務上の課税期間については会計年度がそのまま適用されますので、会計期間と課税期間は一致します。
〈EAS の基準の体系〉
番号 | 基準書名 | 番号 | 基準書名 |
EAS 1 | 財務諸表の概念フレームワーク | EAS 13 | 後発事象 |
EAS 2 | 財務諸表の表示 | EAS 14 | 関連当事者についての開示 |
EAS 3 | キャッシュ・フロー計算書 | EAS 15 | 金融商品 |
EAS 4 | 会計方針、会計上の見積りの変更および誤り | EAS 16 | 投資性不動産 |
EAS 5 | 棚卸資産 | EAS 17 | 生物資産 |
EAS 6 | 関連会社および共同支配企業に対する投資 | EAS 18 | 無形資産 |
EAS 7 | 企業結合および支配力を有する投資 | EAS 19 | 資産減損 |
EAS 8 | 有形固定資産 | EAS 20 | リース |
EAS 9 | 引当金、偶発負債および偶発資産 | EAS 21 | 政府補助および政府援助 |
EAS 10 | 収益 | EAS 22 | 外貨換算 |
EAS 11 | 借入コスト | EAS 23 | 株式報酬費用 |
EAS 12 | 法人所得税 |
|
|
この他に、例えば、退職給付の会計処理などについては、台湾の会計基準を定める会計研究発展基金会より個別に Q&A が出ており、また、EAS 第 4 号によると、該当する会計基準が存在しない場合には、以下の順序で関連規定の検討を行い会計方針を検討する必要がある旨が規定されています。
〈IFRS との主な差異〉
企業会計準則公報(EAS) | 国際財務報告基準(IFRS) | |
のれんおよび耐用年数を確定できない無形資産の償却または減損 | EAS 18の規定によって以下のいずれかの方法により処理をする
| 償却をせず、定期的に減損テストにより評価する。 |
未処分利益に対する追加課税の費用認識時点 | 株主総会の利益配当決議による確定額を、決議が実施された年度において法人税費用として認識する(IFRSに比して認識時点は遅い)。 | 株主総会の利益配当の決議前に、その費用見積額を、課税対象の所得が発生した年度において法人税費用として計上する。 |
退職金(確定給付型) | EAS以前の会計基準から継続適用していることを条件として、数理計算に基づく負債または費用を評価しない処理を選択できる。 それ以外の場合は、数理計算により負債または費用を評価する。 | 数理計算により負債または費用を評価する。 |
子会社、関連会社に対する投資の会計処理 | (個別)持分法を適用 | (個別)IAS27に従い、取得原価、IFRS9による会計処理、持分法のいずれかの選択適用 |
金融資産の取得原価での評価 | 公正価値で評価できない状況を限定的とし、条件を例示している。 | 以下の金融商品の公正価値を信頼性をもって評価することができない場合、取得原価で評価することができる。
|
新基準の導入 | IFRS15:未適用(EAS24が追加される予定であるが、具体的内容や適用時期は未定) | IFRS15:2018年度より適用 |
企業は以下の財務諸表を作成する必要があります。財務諸表の作成言語は、中国語(繁體字)となります。
台湾では、会計年度について、国税局に対して特段の変更申請を行わない限りは、決算日として 12 月 31 日が適用されます。国税局へ変更申請を行い認可を得ることで、12 月決算以外も認められます。通常会計年度と税務年度は一致させますが、法人所得税の申告は決算日から 5 カ月目(12 月決算であれば 5 月、3 月決算であれば 8 月)に行う必要があります。
EAS 第 22 号の機能通貨の規定に従い、企業が事業活動を行う主たる経済環境により機能通貨を決定する必要があります。企業が事業活動を行う主たる経済活動とは、企業が主に現金を創出し、支出する環境をいい、販売価格や財貨またはサービス提供のための各種コストの影響を加味して検討する必要があります。
台湾では、IFRS をベースとした会計基準の適用が要求されていますが、実務担当者の知識や経験が不足しているために、会計基準が十分に理解されておらず、適切な会計処理がなされていないケースも見受けられます。監査の過程で、会計処理の修正が求められる場面も多く、企業としては、適切な知識を持った会計人材を配置し、会計業務にあたらせることが重要となります。また、常日頃から監査人と密にコミュニケーションを取り、会計の論点について適時に助言を得ておくことも期末監査時の混乱を避けるためには有用です。
現在の財務諸表に対する法定監査の要件は以下の通りです。
台湾では営利事業所得税(法人税)の申告に対する監査制度があり、一般的に税務監査と呼ばれます。所得税法第 102 条第 2 項、および營利事業委託會計師查核簽證申報所得稅辦法第 3 条の規定によって、以下のいずれかに該当する会社は会計士による税務監査を受ける必要があります。
証券および先物取扱会社、連結納税申告会社(金融持株会社法などに基づく)など、特別に規定される場合
税務監査を受けた上で期限内に申告を行っている場合、以下の優遇措置があるため、上記の要件に該当しない会社であっても、多くの会社が自主的に税務監査を受けています。
法人所得税率(%) | 20 (a) | ||
キャピタルゲイン税率(%) | 20/35/45 (a)(b) | ||
支店に対する税率(%) | 20 (a) | ||
源泉徴収税(%) | 配当金 | 居住者への支払い | 0 |
非居者である企業および個人への支払い | 21(c) | ||
利息 | 居住者である企業への支払い | 10 (d) | |
居住者である個人への支払い | 10 (e) | ||
非居住者である企業および個人への支払い | 15/20(f) | ||
ロイヤルティー | 居住者である企業および個人への支払い | 10 (g) | |
非居住者である企業および個人への支払い | 20 | ||
支店から送金する際の税金 | 0 | ||
欠損金(年) | 繰戻 | 0 | |
繰越 | 10 | ||
(a)詳細についてはセクション B 参照
(b) 1990 年 1 月 1 日より、証券取引による所得は通常の法人所得税の課税対象となっていません。係る所得には代替ミニマム税が課税されます。セクション B 参照。
(c) 非居住者である企業に関する詳細および定義についてはセクション B 参照。
(d) 金融資産証券化条例(Financial Asset Securitization Act)、または不動産証券化条例(Real Estate Securitization Act)に基づいて発行された有価証券に関連する支払い、および短期コマーシャル・ペーパーから生じる利息は、税率 10% の源泉徴収税の課税対象となります。さらに、それらは居住者である企業の課税所得の計算に組み入れられ、20% の税率で課税されます。
(e) 短期コマーシャル・ペーパー、資産担保証券、債券、仕組み商品および当該金融商品に組み込まれた売り戻しまたは買い戻し条件付き取引から生じる利息は、居住者である個人の納税申告における税額の計算には組み入れられず、 10% の源泉徴収税の課税対象となります。
(f) 短期コマーシャル・ペーパー、資産担保証券、債券、仕組み商品および当該金融商品に組み込まれた売り戻しまたは買い戻し条件付き取引から生じる利息に適用される税率は 15% です。それ以外の種類の利息には 20% の税率が適用されます。
(g) ライセンサーが統一発票(Government Uniform Invoice:GUI)を発行した場合、源泉徴収は要求されません。
税金の名称 | 営業税(付加価値型(加値型)営業税[VAT]および非付加価値型(非加値型)営業税[GBRT]から成る) | |
現地名称 | 付加価値税 (VAT) および非付加価値型営業税 | |
導入日 | 1931年6月13日 (2017年6月改正) | |
貿易圏への加盟 | APEC(アジア太平洋経済協力会議) | |
所管 | 台湾財政部 (MOF) | |
税率 | VAT | 5%、ゼロ税率(0%) および非課税 |
GBRT | 0.1%~25% | |
VAT番号の形式 | 10001111 (8桁) | |
課税期間 | 2カ月ごと | |
登録基準値 | なし(台湾で事業活動を行う事業体は登録が義務付けられる) | |
国内で設立されていない事業者によるVATの控除 | 一定の条件を満たす場合、あり | |
フルバージョンには、EY Tax Guideの日本語版(法人税、個人所得税およびイミグレーション、付加価値税(VAT))が含まれています。本ガイドのフルバージョンをご希望の方は、こちらのお問い合わせより、以下の項目を記載の上ご連絡ください。