シンガポール ‐ 個人所得税およびCPFに係るCOVID-19支援対策措置

COVID-19大流行の発生以来、シンガポール国内の雇用者は、海外に赴任しているシンガポール国籍者およびシンガポール永住者(SPR)を速やかに帰国させ、赴任先の業務をシンガポールからリモートワークで実施させるなど対策を講じてきました。一方で、各国の入国制限によりシンガポールから一時的に出国することができなくなった一部の外国人短期滞在者の中には、滞在期間を延長し、シンガポール国内からリモートワークにより自国での業務を実施することを余儀なくされる場合が生じております。雇用者はシンガポール国内の従業員に対し、シンガポール政府が定める労働環境に関する規制措置に従った代替的労働環境を提供し、事業継続に務めなければなりません。

上記に鑑み、シンガポール税務当局(IRAS)およびCPF Boardは、国内雇用者および従業員に対して個人所得税およびCPFに係る支援対策措置を公表しました。以下はそのサマリーとなります;


現行の税制措置

個人所得税およびCPFに係るCOVID-19支援対策措置

海外出向期間中のシンガポール国籍者・SPRで、シンガポール国内からリモートワークにより出向先の業務を実施する場合

シンガポール居住者である個人について、租税条約に基づく免税規定が適用される場合・非居住者を選択し短期滞在者の免税規定が適用される場合を除き、シンガポール国内滞在期間中に係る給与所得は国内源泉所得とみなし課税対象となる

短期滞在者の免税規定は、シンガポール国内滞在日数が年間60日以下の非居住者に対して適用される(ただしシンガポール国内法人の取締役・芸能人・独立業者をのぞく)

国内滞在日数を数える際は、入国日と出国日はいずれもシンガポール国内に滞在しているとして数える

2020年9月30日*までの間、シンガポール国内からリモートワークにより海外出向先の業務を実施する場合、以下の条件を満たす場合において、当該期間はシンガポール国内雇用期間とみなされないものとする:

  1. 当該個人に係る海外出向規約について、シンガポール帰国前・帰国後で規約の内容に変更がないこと
  2. 現行の労働環境はCOVID-19への暫定的措置であること

上記の条件を全て満たす場合、2020年9月30日までの期間を限度とし、シンガポール国内滞在期間中に係る給与所得は非課税扱いとなる

上記の条件を全て満たさない場合、シンガポール国内滞在期間に係る給与所得は左記「現行の税制措置」が適用される

* 期間はCOVID-19状況の進展に伴い変更される場合がある

シンガポール短期滞在中の外国人非居住者で、COVID-19により一時的に出国することが出来ない場合

短期滞在者の国内滞在期間に係る給与所得は、租税条約に基づく免税規定が適用される場合・短期滞在者の免税規定が適用される場合を除き、国内源泉所得とみなし課税対象となる

国内滞在日数が年間61日以上183日未満の場合、給与所得は課税対象となる。この場合、適用税率は一律15%または居住者として累進税率を用いて計算した額、いずれか高い方が適用される

国内滞在日数を数える際、当初の出向期間に加えて滞在延長期間が生じた場合、当該延長期間も滞在日数に含まれるものとする

当初予定されていた出向期間を超えて滞在延長期間が生じた場合、以下の条件を満たす場合において、当該延長期間はシンガポール国内雇用期間とみなされないものとする:

  1. 滞在延長期間が60日を超えない場合
  2. 滞在延長期間中にシンガポール国内において実施する業務は、COVID-19がなければ本来シンガポール国外において実施されるべきものであり、出向期間中にシンガポール国内において実施した業務とは関連がないこと

上記の条件を全て満たす場合、滞在延長期間中に係る給与所得は非課税扱いとなる

上記の条件を全て満たさない場合、滞在延長期間に係る給与所得は左記「現行の税制措置」が適用される

また、上記の延長期間以外の、通常の出向期間に係る給与所得についても「現行の税制措置」が適用される

納付期限の延長

一括納付:IRASより賦課決定通知を受領後、通知の日付から30日以内に納付しなければならない

GIROによる最大12回(12ヶ月)の分割納付:納付期間は2020年5月から2021年4月までとなる

一括納付:納付期限は3ヶ月後に延長される(例:納付期限が2020年5月15日の場合、2020年8月15日まで延長される)

GIRO:納付期間は2020年8月から2021年7月までに延長される

納付期限の延長を希望する場合、2020年7月31日までに申請書を提出すること。IRASの承認後、新たな納付期限・分割納付期間により上書きされる

資金難等の理由により更なる対応・措置が必要な場合は別途IRASへ文章にて申出ること

申告期限の延長

書面による申告は4月15日まで

電子申告の場合は4月18日まで

書面・電子申告いずれの場合も2020年5月31日まで延長

4月中に申告期限の到来する帰任者に対する個人所得税申告

雇用者は本人の最終勤務日または出国日の1ヶ月前に、帰任者に係る個人所得税申告書(Form IR21)を提出しなければならない

雇用者は帰任者本人から所得税額の源泉徴収を実施。IRASへの納付手続きが完了するまでの間、本人への給与等支払いは一時的に全て差止めなれければならない

4月中に申告期限が到来する帰任者がいる場合、1ヶ月の申告期限の延長措置がとられる。ただし帰任者本人から所得税額の源泉徴収の義務および本人への給与等支払いの一時的な差止めついて変更はなし

COVID-19対策によるCPFの扱い

シンガポール国内における勤務・役務提供に対して金銭的報酬が支払われた場合、シンガポール国籍者およびSPRに対してはCPF拠出の義務が生じる

上記の金銭的報酬には、本人への精算および払戻しも含まれる。ただし経費の実費精算に対する払戻しについては賃金とみなされないためCPFの拠出義務は生じない

以下の条件に該当する場合、従業員への食費・宿泊費・光熱費等の支払いに対してCPFの拠出義務は生じない:

  • 支払いは実費精算への払戻しであること(ただし記録書類の提示が必要)
  • 支払いは当該従業員に対する賃金の追加ではないこと
  • 当該通勤費・食費・宿泊費・光熱費等の支払いは、都市封鎖・在宅勤務・休職・職場の移動等、COVID-19対策に関連してシンガポール国内への滞在を余儀なくされた結果、生じたものであること

シンガポール政府、各政府関係機関、および国内雇用者がCOVID-19の影響を抑え安全な労働環境を守るために協働するなか、IRASおよびCPF Boardは事態の進展を注視するとともに、今後も対策支援措置のアップデートを公表することが予想されます。詳細については順次ニュースレターにてお知らせする予定です。