技術安全保障
科学とイノベーションは平和のために何ができるか

技術安全保障 科学とイノベーションは平和のために何ができるか

出版社

株式会社日経BP 日本経済新聞出版

価格(税込)

3,300円

発行年月

2025.08



概要

どうすればこの尊い平和を維持していけるだろうか、大国間競争と技術加速によって特徴づけられる混迷の現代で

本書は、科学技術イノベーションがどのように国家の安全保障に貢献するのかを、科学技術、安全保障、経済、経営といった複数分野の専門知見を融合させ、包括的に議論したこれまでにない1冊です。

現代では、安全保障しか活用用途がない特殊な科学技術はほとんどなく、人工衛星や先端素材といったいわゆるデュアルユース技術はもちろん、10-20年前に全くの民間用途で開発されたSNSやwebマーケティングといった市場・技術までもが安全保障との“新結合=イノベーション”によって認知戦という新たな戦場を生み出しています。今や技術の用途だけでなく、使用目的や使用者までもが防民デュアルな、フュージョンユース技術が登場しています。

他方で地政学の舞台においては、ロシア・ウクライナ情勢を受け、各国が防衛費を増額させ、伝統的安全保障の領域における大きな変化が進んでいるほか、米中という大国同士が経済的には強く結びつきつつも対立を抱えるという新たな国際構造が登場したことで、急速に経済安全保障政策にスポットライトが当たる状況を生み出しています。

この2つの大きなうねりの中で今、ドローンやAIといった先端技術が、さらにSNSやwebマーケティングといったこれまで安全保障と関係がないと思われていた技術までもが、防衛と経済安全保障という戦略・政策と新結合することで、新たな安全保障の形を生み出し、日々更新し続けています。この複雑な状況を読み解き、科学技術と平和の関わりを明らかにするカギは抑止です。

本書は、防衛と経済安全保障の観点から、抑止のための技術の役割を説明し、数ある技術の中から戦争を遠ざけるために重要となる技術を特定する方策、これから重要技術を創出していくための方策、特定・創出した重要技術を保護していく方策、そして獲得・保護した重要技術を抑止に効率的に結びつけるための活用方策を具体的に提言するとともに、科学者・技術者、大学・製造業企業、技術に携わる官公庁にそれぞれ求められる役割を解説しています。

日経BP BOOK PLUSサイトにて、本書の「序章」の一部を抜粋してお読みいただけます。

  • まいにち「はじめに」『技術安全保障 科学とイノベーションは平和のために何ができるか』
    bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/082001019/ 

目次

序章 科学技術に携わる者は平和への鍵を握っている

  • 戦争も大国間競争もある時代
  • 技術によって戦争を遠ざける
  • 先端技術が持つ時代そのものを変える力
  • 先端技術が戦争を変える
  • 技術力を安全保障の力に変換する技術安全保障政策の必要性
  • 科学者・技術者・製造業企業・科学技術系官公庁が持つ平和への責任は重い

第Ⅰ部 技術安全保障の論理~戦争を遠ざける重要技術とは何か~

第1章 技術で戦争を遠ざける2つの道

  • 米中対立の時代
  • 避けられない対立と避けられる戦争
  • 対立が戦争へ至る要因論
  • 技術安全保障――技術で戦争を遠ざける2つの道

第2章 防衛における抑止と技術

  • 技術発展とともに変化を続ける戦争と社会
  • 防衛における抑止と技術
  • デュアルユースを超えたミクスドユース・フュージョンユースの時代
  • 防衛技術イノベーションの必要性

第3章 経済安全保障における抑止と技術

  • 経済安全保障政策の概略
  • 現代の経済安全保障と課題
  • 米中衝突回避のための経済安全保障戦略――ガーゼのカーテン
  • 適切な選別的デカップリングの対象
  • 米中衝突回避のための経済安全保障戦略の中核をなす技術戦略
  • 技術戦略の実装困難性
  • 技術戦略を実装可能な人材の深刻な不足

第4章 防衛上の重要技術~ゲームチェンジャー~

  • 加速し続けるゲームチェンジャーの登場頻度
  • 先端技術とゲームチェンジャー――AIとドローンによるバトルリズムの高速化
  • 先端技術とゲームチェンジャー――安価なドローンによるコスト非対称性の強制
  • 非先端技術とゲームチェンジャー――デジタルマーケティングと認知戦
  • ゲームチェンジャーとイノベーションと技術の関係性

第5章 経済安全保障上の重要技術~サプライチェーンチョークポイント~

  • 大規模国際貿易網がもたらす敏感性と脆弱性
  • サプライチェーンチョークポイントの概念と事例
  • サプライチェーンチョークポイントの安定性――なぜ1社供給の状態にあるのか
  • サプライチェーンチョークポイントの回避可能性――モノではなくコトまでさかのぼる
  • サプライチェーンチョークポイントにつながり得る技術

第Ⅱ部 技術安全保障の実践~重要技術で戦争を遠ざける方法~

第6章 重要技術の特定~困難と乗り越えるための方策~

  • 重要技術特定の困難①――ゲームチェンジャーの曖昧性
  • 重要技術特定の困難②――サプライチェーンチョークポイントの不可視性
  • 重要技術特定の困難③――サプライチェーンチョークポイントの重大度の比較の実施困難性
  • ゲームチェンジャー技術の特定方策
  • サプライチェーンチョークポイント技術の特定方策
  • 同盟国・同志国との連携体制の構築
  • 科学者・技術者・製造業企業・官公庁に求められる役割

第7章 重要技術の創出~求められるイノベーションの視点~

  • 重要技術が最低限満たすべき要件
  • イノベーションの視点の必要性――GPSを例に
  • マルチ専門性の必要性
  • イノベーション論――死の谷を越えて
  • サイエンス・ベースド・イノベーション
  • オープン&クローズ戦略との親和性
  • ゲームチェンジャー技術の創出方策
  • ディマンドプル型のゲームチェンジャー創出方策
  • 技術プッシュ型のゲームチェンジャー創出方策
  • ゲームチェンジャーの開発計画策定の型
  • サプライチェーンチョークポイント技術の創出方策
  • 科学者・技術者・製造業企業・官公庁に求められる役割

第8章 重要技術の保護~技術を守ることは日本と平和を守ること~

  • 特定・創出した重要技術の“賞味期限”の見極め
  • 最も重要な資産――人とノウハウ
  • 重要技術の流出とは、何が流出することなのか
  • 重要技術を守るためにすべきこと
  • 先端研究機関に求められる開かれた知と安全保障のバランス

第9章 重要技術の活用~抑止を有効に機能させるための方策~

  • 特定・創出した重要技術の使い方
  • ゲームチェンジャーを張子の虎にしない“継戦能力”の確保
  • サプライチェーンチョークポイントを締められるBCP戦略の立案
  • 有効打としてのリマニュファクチャリングと同盟国・同志国との協調の必要性
  • 財政・経済効率性の視点の必要性

第10章 技術安全保障政策を実装可能な体制構築と人材育成

  • 技術安全保障政策を画餅にしないために求められること
  • ゲームチェンジャー技術の実装に必要な体制
  • サプライチェーンチョークポイント技術の実装に必要な体制
  • 政策実装に必要となるマルチ専門チームの体制構築とマルチ専門人材の必要性

終章 平和のために科学技術に携わる者が今なすべきこと

  • 大国間競争と技術加速の時代を直視する
  • 避けられる戦争を避けるために
  • 科学技術に携わる者に求められること
  • 技術安全保障論の発展的なトピック
  • 新たな“ゲームチェンジャー市場”の可能性

執筆等

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジック インパクト 山本 晃平

備考

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