EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
デジタルノマドワーカー(以下DN)とは、ITを活用し、国内外を旅しながら働く人材のことで、既にその人数は世界で約3,500万人、その市場規模は日本円で実に約110兆円にも上ります(2022年9月時点)。近年、そのインパクトに着目した国が、経済効果、高度IT人材獲得、地方経済の生成ツールとなる効果を期待して次々とDN専用ビザを導入する動きを見せています。DNビザ発行国数で見ると2021年2月時点から既に倍増し現在56カ国(2023年3月時点)に上ったそうで、実に3カ国に1国はDNビザが導入済みです。テレワークの浸透やデジタルネイティブなZ世代の台頭も拍車をかけ、2035年には世界で10億人のDNが誕生すると予想される等、一定規模の人材プールとして無視できなくなりつつあります。今回はその導入意義を整理してみました。
まず、DN自身にとってのメリットはライフステージやキャリア志向に合わせた自由な働き方、報酬、ウェルビーイング(情緒的安定性や社会的安定性)でしょう。働き方ではDNの実に81%がワーク/ライフスタイルに満足しており、報酬については物価の高い地域の仕事をしながら低い地域に居住すれば地域的アービトラージの利を得ることができます。
独立事業主に対して「越境ワーカー」と呼ばれる、企業に所属しながら国境をまたいで働く従業員の存在も無視できません。2019年からの数年間で人数が3倍になる等今やDN全体の実に66%を占める程の勢いで増え、EOR(Employer of Record)と呼ばれる給与支払い・納税・労務管理のアウトソースサービスも出てきています。
一方の企業にとってのメリットとしては、何といっても高度IT人材へのアクセスです。以前は人件費の安い国の人材に仕事を依頼するオフショアリングが主流でしたが、今は安さよりもスキルを企業は求めており、高度人材の獲得競争が激化しています。高い教育水準や専門知識を有し、デジタルに精通、継続的訓練への意欲が高いDN人材を取り込むことは競争優位性となり得ますし、人材戦略の観点で今後ますます重要になることでしょう。
しかし所得税や保険の制度が国によって異なるため、人事面では制度的障壁が大きな課題です。雇用法令は雇用主の場所に関わらずその仕事が行われた司法管轄区域に準拠するため、就業者であるDNの滞在場所・期間を企業が把握しないと雇用法令に違反するリスクすらあるのです。
グローバル高度IT人材不足の慢性化、DN人口・注目度共に増え続けているという状況にもかかわらず、DN雇用の正式な方針や施策を設けられている組織は非常に少ないのが現状です。まず企業に下地として求められているのは何といっても会社としての方針の策定、Airbnbのような滞在対象地域や滞在期間等に関する制度作成、DNを活用できる業務の整理でしょう。その上で運用面ではDNの居場所と移動先を把握し給与や税金計算、送金をする仕組み作り等、法律や税・コンプライアンスに関するリスクヘッジが重要となります。グローバルな高度IT人材争奪戦はまだ始まったばかりですが、新しい価値観に沿った新しい働き方の選択肢としてDNを提供できれば、次の時代の人材獲得競争において一歩先を行けるかもしれません。
参考文献
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