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1985年の男女雇用機会均等法制定から30年後の2015年に女性活躍推進法が成立、以降女性活躍や両立支援などの用語・施策が広く語られるようになり、およそ10年がたちました。
概念的には一定の認知を獲得したものと考えられる一方で、逆差別であるといった批判や、そもそもスコープが40代前半あたりまでで、大半の女性は活躍の対象にもされていないという意見にも表されるように芳しい成果は出ておらず、日本のジェンダーギャップ指数は世界125位と低迷を続けています。これに対し近年米国を中心にFamily Careerという考え方が見られるようになってきており、今回はこちらをご紹介します。
日本は労働力不足、米国は世帯収入不足、といった事情の違いはあるものの、女性の社会進出が加速する中で男女に同等のキャリアを求める動きが2010年前半頃に世界的に活発になりました。そして、2018年に“共働き世帯には長期計画が必要だ”という記事がハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載され、そこで初めてFamily Careerという考え方が紹介されています。
冒頭に述べた日本における女性活躍批判の多くは「女性1名」のシングルキャリアに関しての「男性」との対等性、平等性に関する議論です。つまり「同じ労働力」として差が無いようにすべき、という話です。これは日本の議論が「労働力不足」に端を発することの影響ではないかと思われます。
一方のFamily Careerというのは生涯にわたるライフイベント・ライフプランの中で家族がお互いにどのようなキャリアを描くかという中長期計画を「世帯内で」すり合わせ議論を行うことが必要とする考えです。世帯収入から議論がスタートしている米国らしい考えとも言えますが、ジェンダー議論が停滞している日本にとっても有益な示唆を与えてくれます。
実態として共働き世帯の多くでどちらか一方のキャリアがもう一方のキャリアよりも優先されやすいという傾向はカナダの調査で明らかになっており(されなければならないか?という問いに肯定的回答が多かった)、そしてその負担は多くの場合に女性が負う(出産や授乳からの流れなのか、家族の世話イコール女性というのは日米いずれにも根強いことが知られています)という現実が重なることで、結果として女性のキャリア機会が棄損されているということは、皆さまも同意されるところでしょう。
このような環境下にあるため、米国のFamily Career議論も現状の具体レベルではいかに家事負担を分担・軽減するか、いかに組織に理解や共感を醸成するか、など「女性」支援に焦点が当てられやすくなっていることも事実ではありますが、家族視点で捉え直した場合、互いの人生やキャリアの優先事項、それぞれが進んで行う妥協点や柔軟性に関する正直な話し合いなどが必要となることは疑う余地がありません。
一説には共働き世帯ほどお互いの理解が進みバランスの取れた関係になる、Family Careerという共通目標を持ちつつそれぞれのライフスタイルに集中できるようになる、調和や協力などの対人スキルを高める、という効果もあるとも言われています。家族の在り方が多様化する時代、雇用者側からも単なる労働者の属性としての「男性」と「女性」という対立的な枠組みではなく、それぞれの「家族」という視点からの包括的な支援の議論が進むことを期待します。
参考文献
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