EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
未だ終身雇用の傾向が残る日本では馴染みが薄いGreat Resignation(大量自主退職)から数年、コロナ禍収束の兆しとともにIndustry Hoppingという言葉が出回るようになってきました。その名のとおり業界を変えた転職のことを指し、McKinseyの調査によれば2020~2022年の退職者の48%が業界を変えて再就職した1そうです。そこで今回はIndustry hoppingについて考察します。
まず、そもそも転職希望者増加の背景としては、コロナ禍の影響で、例えば出社選択制への移行など働き方を見直す人2が増えているのでは、という指摘が有力です。一方の採用側を見ると、ビジネスや技術が急激な変動を繰り返す中で離職者が増え、慢性的な労働力不足に陥る企業も出ています。そのような企業は採用の網を広げるようになりますので、人材の流動化が加速していると考えられています。
次に、その中でも業界横断的な転職が増えている背景ですが、こちらはデジタル化の影響が示唆されます。2011年にドイツ政府が打ち出したインダストリー4.0という概念は、少子高齢化に伴う労働力不足が懸念される日本においても特に重視され、リスキリングや種々DX施策へと繋がっています。かつて転職頻度の高い人がJob Hopperと呼ばれていた時代は、Functional Skills、すなわち業界知見・経験がものを言う時代でしたが、インダストリー4.03の時代に求められるデジタルスキルは業界汎用的なため、Industryの枠組みを超えた転職が可能になったということです。(かつては、Marketingが業界汎用的な職種の代表例だったようです。)
さて、冒頭で日本ではGreat Resignationというのは馴染みが薄いと書きましたが、本当にそうなのでしょうか。デジタルスキルが重視され、リスキリング施策が展開され始めている今、業界横断で働きやすい環境を求めるのはごく自然な流れです。実際日本国内でも、転職希望者は4年間で1.5倍増加4していますし(転職者数はほぼ横ばいですが)、転職者の7割は異業種転職5という調査もあります。中でも職種転換を伴う転職が急増している点は要注目で、DX化という大きな変革の中で新しい職種が次々と生まれ、これまでにないスキルセットやバックグラウンドを有する人材(異能人材)が重宝され始めている可能性があります。(あるいは単純に、リスキリングしやすいデジタルポジションへの転向が増えているのかもしれません。)
人材確保に悩む企業にとってIndustry hopperは新しい人材プールになる可能性を秘めていますが、彼らの採用にはもちろんメリットとデメリット6があります。一番のメリットは前回コラムでもご紹介したように、イントラパーソナルダイバーシティが高い人材ですので、組織のイノベーションを誘発してくれる可能性がある点でしょう。一方で専門知識は豊富でも業界知識は弱いことが多いため、採用直後から活躍するケースは稀です。とは言え根がHopperな人材ですので定着する保証もなく、教育コスト(と代替人材採用コスト)がかさむリスクがある点はデメリットとなります。そのため、組織の多様性への許容度を高めるとともに、業界知見に長けた人材とのチーミングなど、早期の能力発揮に向けた支援からスタートし、徐々に定着化やスキル向上へとシフトさせてゆくのがよいかもしれません。
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