2. 経営モデルの陳腐化
人的交流を重視し、テクノロジーの導入が遅れている取締役会は、山のような過去のデータやコンテンツに立ち向かっていますが、デジタルツールを駆使し自社のデータを精査し価値を引き出すことができていません。その結果、取締役会が戦略に関して有意義な議論を行う時間が減少し、より良い決定を導くことや、不安定な状況下で効果的に対処するための実践的な洞察力を得られなくなっています。
3. スキルのギャップと未成熟な認識
取締役会の大半で、デジタルリタラシーやソフトスキルにおけるギャップが新たに発生しています。行動科学などのソフトスキルは、現代の組織を適切に運営するために極めて重要です。また、広い意味でのダイバーシティの観点からも後れを取っています。より良い意思決定やイノベーション、価値創造に多様な考え方が必要不可欠であるという認識も、いまだに成熟途上にあります。
4. 利害関係者とESG(環境・社会・ガバナンス)をめぐるアイデンティティ・クライシス
投資家の98%が、非財務情報の開示を評価しています。取締役会は、サステナビリティや長期的価値に関する社会や投資家の期待に応え、さらに短期的な収益の要求との折り合いをつけるために、最善の方法に取り組んでいます。よりインクルーシブな利害関係者資本主義への転換が、全てとは言えないまでも一部の取締役会では始まっています。多くが転換の途上にありますが、変革はまだ始まったばかりであり、今後容易に進展しない場合もあります。企業がどのように「有言実行」できるかはまだ模索中です。
では何をするべきか
取締役が適切なスキルセットとツールを備えておらず、組織を根本的に変容させている要因を十分に認識していなければ、長期的価値創出のために不可欠な、企業レジリエンス、利害関係者からの信頼、成長志向の考え方の構築を支援する役割を十分に果たせないリスクを負います。今回の調査では、2030年の取締役会は、ガバナンスの5つの主要トレンド(1. 多様な集団から高まる利害関係者の声、2. 透明性の高い意思決定、3. アカウンタビリティの強化とその結果、4. 速く、予測のできない変化、5. ガバナンスを難しくする複雑なビジネスエコシステム)による影響下で運営されることが予測されています。この5つのトレンドを踏まえると、古典的な運営モデルの主要要素のすべてが変容し、均質性が薄れていくことが予想されます。均質性を支えてきた「順守か説明か」という原則を変えていく必要があります。取締役会が目的にかなうガバナンス体制の構築を真剣に目指すのであれば、集団から抜け出す勇気を持ち、それを奨励するべきです。