改正実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」のポイント
企業会計基準委員会が平成21年6月23日に公表
平成21年6月23日に、企業会計基準委員会(ASBJ)より改正実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」(以下、改正実務対応報告)が公表されています。本改正は、平成20年10月より排出量取引の国内統合市場の試行的実施の仕組みの一つとして試行排出量取引スキームが開始されたことに伴い、当該スキームの参加企業において必要と考えられる会計処理を示したものです。
なお、本改正の公開草案は平成21年4月10日に公表され、平成21年5月11日までコメントが募集されていました。
1. 適用時期(改正実務対応報告 6(2))
改正実務対応報告は、公表日を含む事業年度から適用するものとされています。
2. 会計処理
① 事後清算により排出枠を取得する場合(改正実務対応報告 4(3)①)
- 取得時には、会計上取引を認識しないこととされています。
- 複数年度にわたってスキームに参加する場合に、事後清算により取得した排出枠を売却したとしても、当該売却を暫定的なものと見て、売却の対価を仮受金その他の未決算勘定として計上することとされています。また、スキームに参加する複数年度を通算して目標達成が確実と見込まれた時点で、当該未決算勘定を利益に振り替える、または目標未達となり費用が発生する場合には、費用の減額に充てることとされています。
- スキーム上無償で取得した排出枠と別に、他者から購入した排出枠を保有している場合には、売却に際して他者から購入した排出枠から先に売却されたものと見なすこととされています。
② 事前交付により排出枠を取得する場合(改正実務対応報告 4(3)②)
- 事前交付時には、会計上取引を認識しないこととされています。
- 排出枠を売却した場合の処理については、事後清算により排出枠を取得した場合と同様の取り扱いとするとされています。
③ 費用の計上(改正実務対応報告 脚注11)
- 試行排出量スキームにおいても、将来の自社使用を見込んで排出クレジットを他者から購入する場合と、費用計上の考え方が同じである旨が示されています。従って、資産計上された排出枠または代替する排出クレジットもしくは国内クレジットを償却した時点で費用が計上されることになります。
④ その他(改正実務対応報告 2(1))
- 改正前の実務対応報告においては、排出クレジットについて活発に取引がなされる市場が整備されているとは言い難いことから、事業投資に該当するものとされていました。改正実務対応報告では、排出クレジットの活発な取引市場が整備されており、会社が金融投資としての取引を行う場合には、トレーディング目的の棚卸資産として会計処理を行うことが示されています。
3. 公開草案から修正された主な点
① 排出枠の償却の際に排出枠を会計処理する順序(改正実務対応報告 脚注11なお書き)
- 排出枠の償却の際に、スキーム上無償で取得した排出枠と別に、他者から購入した排出枠を保有している場合には、無償で取得した排出枠から先に償却したものと見なすこととする定めが設けられています。この会計処理は、スキームの趣旨より、無償で取得した排出枠のみでは償却に必要な数量を賄えない場合に、他者から購入することが想定されていると考えられることを根拠としています。
② 排出枠の売却の際に排出枠を会計処理する順序に対する考え方(改正実務対応報告 脚注14)
- 排出枠の売却の際に、まず他者から購入した排出枠を売却したものと見なす考え方の根拠として、無償で取得した排出枠の売却に係る会計処理(未決算勘定として計上)と購入した排出枠の売却に係る会計処理(資産の売却として処理)が異なることより、両者を簿価通算することが適当でないと考えられる旨が脚注において明記されています。
本稿は「改正実務対応報告第15号『排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い』の公表」の概要および主な論点を記述したものであり、詳細については、以下の財務会計基準機構/企業会計基準委員会のウェブサイトをご参照ください。
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