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会計情報トピックス 吉田剛
平成21年12月11日、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第73号)が公布されています。
この改正は、平成21年6月に企業会計審議会から「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」が公表され、一定の要件を満たす企業に対して、平成22年3月期の年度の連結財務諸表から国際会計基準(IFRS)による作成を容認する方針が示されたことを踏まえ、規則等における取り扱いを規定するために行われたものです。なお、この改正を受けて、関連するガイドラインも所要の改正が行われているほか、金融庁長官が定める企業会計の基準が併せて告示されています。
また、有価証券報告書等の定時株主総会前の提出を可能とするための開示府令の改正等も公布された府令に含まれています。
本改正の公開草案は平成21年6月30日(IFRSの任意適用容認に係る改正)および平成21年10月7日(有価証券報告書等の定時総会前の提出を可能とする改正等)に公表され、それぞれ平成21年7月30日および平成21年11月5日までコメントが募集されていました。
なお、IFRSの任意適用容認に係る規則の改正に関しては、2009年12月 IFRS Outlook 増刊号-3(日本語版)(PDF:291KB)に解説がありますので、併せてご参照ください。
国際的な財務・事業活動を行う国内会社で、一定の要件を満たす会社(特定会社)は、指定国際会計基準((2)参照)により連結財務諸表を作成することができるものとされました。
国際会計基準審議会(IASB)が作成したIFRSのうち、一定の要件を満たすものを金融庁長官が定め、官報で告示する手続きをとることとされました。なお、実際の告示が公布と同日に行われており、平成21年6月30日までにIASBの名において公表された国際財務報告基準(IFRS)および国際会計基準(IAS)ならびにその解釈指針(国際財務報告解釈指針委員会解釈指針(IFRIC)および解釈指針委員会解釈指針(SIC))が含まれています(金融庁告示第69号)。
初めて指定国際会計基準により(四半期)連結財務諸表等を作成した場合やその翌年度の四半期における日本基準の「並行開示」に係る規定が開示府令において定められています。また、日本基準・指定国際会計基準のおのおのによる連結財務諸表の主要な項目の差異に関する事項の記載についても、同様に開示府令において規定されています。
米国基準を採用していた会社についても、IFRSに移行する際に並行開示が必要となります(差異に係る注記は必要がないものとされています)。また、連結財務諸表規則本則において米国基準を適用することができるとする規定自体が、IFRSの任意適用容認規定に置き換えられたため(改正後連結財務諸表規則第93条)、当分の間(平成28年3月31日までに終了する連結会計年度まで)、米国基準による連結財務諸表を提出できるとする規定が内閣府令第73号附則および連結財規一部改正府令に設けられました。
上記(1)~(4)については、2009年12月 IFRS Outlook 増刊号-3(日本語版)(PDF:291KB)において詳細に解説されていますので、そちらをご参照ください。
IFRSに基づいた連結財務諸表を作成する場合にはその旨を記載するとともに(連結財務諸表規則第94条ほか)、特定会社が連結財務諸表等を適正に作成することができる体制の整備(例えば、IFRSに関する十分な知識を有する役員等の配置)を行っている場合には、その旨およびその体制の具体的な内容を記載することとされました(開示府令第2号様式 記載上の注意(59)fほか)。また、提出会社が連結財務諸表等の適正性を確保するための特段の取り組みを行っている場合には、その旨およびその取り組みの具体的な内容を記載するものとされており(開示府令第2号様式 記載上の注意(59)eほか)、IFRS任意適用会社では記載が必須とされるほか、日本基準によっている会社でも、一定の記載を行うことになります。
(1)IFRSの指定プロセスが設けられたことに合わせて、日本の会計基準についても従来の個別的なガイドラインによる承認プロセスから、同様の告示方式によって法令上の会計基準が定められることとなりました(連結財務諸表規則第1条第3項、金融庁告示第69号ほか)
(2)米国基準適用会社に「賃貸等不動産に関する注記」(連結財務諸表規則第15条の24)を求める規定が新設されました(連結財務諸表規則ガイドライン附則)。
(3)有価証券報告書等を定時株主総会前に提出することが可能となりました(開示府令第17条第1項第1号ロほか)。
(4)信託等を利用した従業員持株制度に係る一定の記載が求められることとなりました(開示府令第二号様式 記載上の注意(47-2)ほか)。
(5)株券等の募集・売出しが第三者割当に該当する場合に、割当予定先等の情報を追加的に記載することが求められます(開示府令第19条第2項第1号ヲほか)
(6)行使価額修正条項付新株予約権付社債券(MSCB)等について、内容や行使状況など、一定の情報を記載することが求められます(開示府令第19条第2項第1号リほか)。
IFRS適用初年度における日本基準の開示(いわゆる並行開示)について、公開草案では連結財務諸表規則に従ったものが想定されていましたが、当期分・前期分ともに要約連結財務諸表の開示でよいものとされ、経理の状況以外の部分(事業の状況)で開示されることとなりました。
日本基準による連結財務諸表の主要な項目と、指定国際会計基準による連結財務諸表の主要な項目の差異に関する事項の記載について、公開草案では経理の状況で開示され、監査対象となることが想定されていましたが、上記(1)と同じく事業の状況で開示されることとなり、また監査の対象から除外されました。
有価証券報告書を日本基準で作成・提出した後に、翌第1四半期の四半期報告書において、前期末分(比較年度を含みます)の連結財務諸表等をIFRSに準拠して作成・開示する方式が、IFRSを適用する初年度(年度末から適用する場合)に限って認められました。これにより、年度末からIFRSを任意適用する場合には、その作成期間として追加的に1カ月半ほどの時間が与えられることになり、初年度の実務負担に配慮がなされたものと考えられます。
年度末ではなく、第1四半期からIFRSを適用する場合、公開草案では前年第1四半期のIFRS連結財務諸表のほか、前々期末および前期末のIFRS連結財務諸表が求められるものとされていましたが、前年同期のもの以外は一定の調整開示のみが求められる形となり、要求事項が簡略化されています。
公布日より施行するものとされており、また以下の経過措置が規定されています。
平成22年3月31日以後終了する連結会計年度から適用することとされており、四半期については、平成22年4月1日以後開始する事業年度の第1四半期会計期間から適用されることになります。
それぞれの規定により適用時期が異なるため、留意が必要です。
平成21年12月31日以後終了する事業年度に係る有価証券報告書について適用するものとされています。
平成21年12月31日以後終了する事業年度に係る有価証券報告書について適用するものとされています。
平成22年2月1日以後提出する有価証券届出書・有価証券報告書等について適用するものとされています(臨時報告書に係る規定については、平成22年2月1日以後開始する募集または売出しについて適用するものとされています)。
平成22年2月1日以後開始する事業年度、四半期会計期間等に係る有価証券報告書、四半期報告書等について適用するものとされています。
本稿は改正された規則等の概要を記述したものであり、詳細については、以下の金融庁のウェブサイトをご参照ください。