税制改正に伴う「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」の改正のポイント

2012年2月20日
カテゴリー 会計情報トピックス

会計情報トピックス 吉田剛

日本公認会計士協会から平成24年2月14日付で公表

日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)は、平成24年2月14日付で監査・保証実務委員会実務指針第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」(以下「監査・保証81号」という。)の改正を公表しています。

監査・保証81号では、「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)による法人税法の改正(以下「改正法人税法」という。)において、減価償却資産に関わる定率法の見直し(250%定率法から200%定率法へ)が行われたことに対応して、その監査上の取扱いが示されています。

なお、この定率法の見直しに関しては、当初平成23年1月に国会に提出された税制改正法案に織り込まれており、これに対応して、平成23年2月24日に監査・保証81号の改正公開草案が公表されていました。その後、定率法の見直しが平成23年3月までに国会で成立しなかったことから、監査・保証81号は、過年度遡及に関する取扱いに係る改正のみを反映し、平成23年4月12日にその改正が公表されました。今般、平成23年12月2日に改正法人税法が公布されたことを受け、監査・保証81号は、当時の公開草案をベースとして改正が公表されたものであり、改正法人税法が平成23年度税制改正大綱と特段の差がないことから、再度公開草案とする手続を経ずに、確定版が公表されました(平成24年改正監査・保証81号 常務理事前書)。

1. 改正税効果Q&Aの概要

(1)税制改正の内容

改正法人税法において減価償却方法が見直され、平成24年4月1日以後取得する減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率(1 ÷ 耐用年数)を2.5倍した数から、定額法の償却率を2.0倍した数に改正されています。また、現行の250%定率法を採用している減価償却資産についても、平成24年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることにより、200%定率法に変更することができるものとされました(監査・保証81号第46項)。

(2)監査上の取扱い

① 減価償却方法に係る基本的な考え方

会計上、法人税法に基づく減価償却計算が強制されるものではないため、改正法人税法の適用後であっても、会計上は従来の減価償却方法を引き続き採用することが容認されます(第47項)。

平成23年税制改正後に選択しうる減価償却の方法は以下のとおりです。

区分 従来の方法 今後採用する方法
250%定率法 200%定率法 旧定率法 定額法
新規取得資産 (A) (B) (C) (D)
既存資産 (a)250%定率法 (E)継続 (F) (G) (H)
(b)旧定率法 (I) (J) (K)継続 (L)
(c)定額法 (M) (N) (O) (P)継続

*下線の部分は法人税法で規定する減価償却方法である。ただし、(F)は、現行の償却率による定率法を採用している減価償却資産について平成24年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすることにより、その償却率を改正後の償却率に変更する場合である。

② 新規取得資産についての取扱い

(i)法令等の改正に伴う変更に準じた会計方針の変更
従来、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理している企業において、既存資産のうち平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産がある場合に、当該資産に旧定率法を採用し、かつ平成19年4月1日以後取得した減価償却資産がある場合に、当該資産に定率法(250%定率法)を採用していたときに、新規取得資産について(B)の定率法(200%定率法)を採用する場合には、同一種類で同一用途の資産について、類似の減価償却方法を採用するものと認められるため、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更として取り扱うこととされています(監査・保証81号第49項)。

なお、従来、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理している3月31日決算以外の企業が、平成24年4月1日以後、当該事業年度終了までの期間に取得した資産については250%定率法を継続し、翌事業年度に取得した資産から200%定率法を適用する経過措置(平成23年政令第379号附則第3条第2項)を適用した場合には、当該翌事業年度において、法令等の改正に伴う変更に準じた会計方針の変更が行われる取扱いとなります(監査・保証81号50項)。

(ii)法令等の改正に伴う変更(準じたものを含む。)以外の会計方針の変更
法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更に該当する場合を除いて、減価償却方法を変更するときには、自発的な会計方針の変更として取り扱うことになります(監査・保証81号第51項)。

なお、平成19年度税制改正時に、平成19年3月31日以前取得の資産についても、250%定率法を採用するように会計方針を変更した企業は、今回の税制改正に際し、新規取得資産について200%定率法を採用したとしても、法令等の改正に伴い変更に準じた会計方針の変更とは認められず、自発的な会計方針の変更になります(監査・保証81号第49項)。

③ 既存資産についての取扱い

改正法人税法において、既存資産の減価償却方法は、原則として、改正法人税法適用前の取扱いが継続されますが、企業の選択により、一定の届出を行った上で、250%定率法から200%定率法へ変更することができることとされました。

監査・保証81号では、法人税法上、上記の250%定率法から200%定率法への既存資産の減価償却方法の変更は、企業の選択により決定できるものであることから、当該変更を含め、既存資産について減価償却方法を変更する場合には、会計上、法令等の改正に伴う変更に準じた会計方針の変更とは認められず、自発的に会計方針の変更を行うものとして取り扱うことになります(監査・保証81号第52項)。

既存資産の減価償却方法を変更する場合は監査上、以下のようになります(監査・保証81号第53項)。

従来の方法 今後採用する方法 監査上の取扱い
(a) (F)(G)(H) 減価償却方法の変更であり、会計方針の変更として取り扱うが、変更理由の合理性(変更の適時性等)に留意が必要である。
(b) (I)(J) (L)
(c) (M)(N)(O)

2. 適用時期等

平成24年4月1日以後終了する事業年度に係る監査から適用することとされています。なお、減価償却方法の変更については、会計方針の変更に該当するものの、「会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合」として、遡及適用を行わないことに留意する必要があります(監査・保証81号第59項、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第19項など)。また、システム変更に時間を要するなどの合理的で特殊な事情により、年度末より減価償却方法を変更する場合には、首尾一貫性に係る一定の注記が求められる旨が示されています(監査・保証81号第60項)。

3. 平成23年2月に公表された公開草案から修正された点

従来、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理している3月31日決算以外の企業が経過措置(平成23年政令第379号附則第3条第2項)を用いた場合の会計上の取扱いについて、当該翌事業年度において、法令等の改正に伴う変更に準じた会計方針の変更として取り扱われることが示されました(上記1.(2)②(i)なお書き)。

なお、本稿は監査・保証81号の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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