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会計情報トピックス 柏岡佳樹
企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成28年7月25日に「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(以下「改正修正国際基準」という。)を公表しています。
ASBJは「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013年6月)の記載に基づき、2013年7月に「IFRS のエンドースメントに関する作業部会」を設置し、2012年12月31日までにIASBにより公表された会計基準等に関するエンドースメント手続(以下「初度エンドースメント手続」という。)を行った結果として、2015年6月30日に修正国際基準を公表していますが、今般、2013年中にIASBにより公表された会計基準等のエンドースメント手続を行い、改正修正国際基準の公表に至りました。
ASBJは、2013年中にIASBから公表された、以下の新規の又は改正された会計基準等を対象にエンドースメント手続を行いました。
改正修正国際基準は以下によって構成されます。
改正修正国際基準では、2013年中にIASBにより公表された会計基準等のうち、企業会計基準委員会による修正会計基準第2号「その他の包括利益の会計処理」による「削除又は修正」を行ったもの以外については、「削除又は修正」を行うことなく採択しています。
改正修正国際基準では、IFRS第9号(2013年)に関し、次の2 項目について「削除又は修正」が行われました。
① その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資をヘッジ対象とした公正価値ヘッジのノンリサイクリング処理
② キャッシュ・フロー・ヘッジにおけるベーシス・アジャストメント(ヘッジ会計におけるオプションの時間的価値の会計処理を含む)
IFRS第9号(2013年)では、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資をヘッジ対象とした公正価値ヘッジを行っている場合、ヘッジ手段に係る利得又は損失は、その他の包括利益に残したままとしなければならないとされており、その後のリサイクリング処理が禁止されています(IFRS第9号(2013年)6.5.8項及びBC6.115項)。
これに対して改正修正国際基準では、当該公正価値ヘッジについて、ヘッジ手段に関するその他の包括利益のノンリサイクリング処理を純損益にリサイクリング処理するように、IFRS第9号(2013年)を「削除又は修正」しています。これは、ヘッジ対象である資本性金融商品への投資について、初度エンドースメント手続において、その他の包括利益のノンリサイクリング処理を純損益にリサイクリング処理を行うように「削除又は修正」を行ったことに対応して、ヘッジ手段についても純損益にリサイクリング処理するように「削除又は修正」を行うものです。
IFRS第9号(2013年)では、キャッシュ・フロー・ヘッジについて、対象となる予定取引がその後に実施され、非金融資産又は非金融負債が認識される等の場合に、資本の内訳項目であるヘッジ手段に関して累積されたその他の包括利益累計額(キャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金)を減額して、当該資産又は負債の当初の原価又はその他の帳簿価額に直接含めなければならず、その際、その他の包括利益累計額の変動を包括利益計算書においてその他の包括利益に反映させない(一般に「ベーシス・アジャストメント」と呼ばれる。)とされています。
これに対して改正修正国際基準では、ベーシス・アジャストメントについて「削除又は修正」を行い、資本の内訳項目であるキャッシュ・フロー・ヘッジ剰余金を減額する際に、包括利益計算書のその他の包括利益に含めることとしています。これは、初度エンドースメント手続において、その他の包括利益に含まれた全ての項目についてリサイクリング処理が必要であると主張した理由の1つとして、純損益と包括利益は本質的に認識時期の相違であるとの考え方を示しており、この考え方との整合性を図る観点から、「削除又は修正」を行ったものです。
また、これと同様の取扱いが、将来の商品購入をヘッジ対象とする等の一定の場合にヘッジ手段であるオプションに関して認識される時間的価値の変動部分のその他の包括利益累計額についても求められることから、前述した「削除又は修正」の趣旨を一貫させるため、当該オプションの時間的価値の変動部分の会計処理についても同様の「削除又は修正」を行うこととしています。
2013年中にIASBにより公表された会計基準等のエンドースメント手続を行った結果として、「別紙1 当委員会が採択したIASB により公表された会計基準等」及び「別紙2 企業会計基準委員会による修正会計基準」を改正しています。
企業が修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成する場合、改正後の「修正国際基準の適用」を公表日以後開始する連結会計年度から適用することとしています。
また、IFRS第9号(2010年)とIFRS第9号(2013年)とを併存させることによる複雑さや比較可能性の低下への懸念から、初度エンドースメント手続で採択されたIFRS第9号(2010年)については、「別紙1 当委員会が採択したIASBにより公表された会計基準等」から除外し、IFRS第9号(2013年)のみを採択することとしています。
今回公表された改正修正国際基準においては、2016年3月17日公表の公開草案より、ヘッジ会計におけるオプションの時間的価値の会計処理に関する「削除又は修正」が追加されています。
なお、本稿は改正修正国際基準の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。
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