公共施設等運営事業(PFI事業)における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱いのポイント

2017年5月8日
カテゴリー 会計情報トピックス

会計情報トピックス 武澤玲子

ASBJから平成29年5月2日に公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成29年5月2日に実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表しています。

我が国では、平成11年に民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)(以下「民間資金法」という。)が制定され、PFI事業(注)の枠組みが設けられましたが、その後、平成23年に民間資金法が改正され、公共施設等運営権制度が新たに導入されました。これを受けて、公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的として本実務対応報告が公表されました。

(注) PFI「Private Finance Initiative」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法をいいます。

1. 本実務対応報告の概要

(1)範囲(本実務対応報告第2項)

本実務対応報告は、公共施設等運営事業において、運営権者による以下の取引に関する会計処理及び開示に適用されます。

  • 公共施設等運営権(民間資金法第2条第7項に規定する公共施設等運営権をいう。以下同じ。)を取得する取引
  • 公共施設等に係る更新投資(民間資金法第2条第6項に基づき、運営権者が行う公共施設等の維持管理をいう。以下「更新投資」という。)を実施する取引
(参考)公共施設等運営権制度のイメージ
公共施設等運営権制度のイメージ

(出典:総務省ウェブサイト)

(2)会計処理

① 公共施設等運営権に関する会計処理(本実務対応報告第3項から第10項)

ⅰ 取得時の会計処理

管理者等と運営権者との間で締結された実施契約において定められた公共施設等運営権の対価(以下「運営権対価」という。)について、合理的に見積られた支出額の総額を無形固定資産として計上することとされています。また、運営権対価を分割で支払う場合、資産及び負債の計上額は、運営権対価の支出額の総額の現在価値によることとされています。

ⅱ 重要な見積りの変更時の会計処理

合理的に見積られた運営権対価の支出額に重要な見積りの変更が生じた場合、見積りの変更による差額を取得時に計上した資産及び負債の額に加減することとされています。

ⅲ 減価償却

無形固定資産に計上した公共施設等運営権は、原則として、運営権設定期間を耐用年数とし、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法により各事業年度に配分することとされています。

ⅳ 減損会計における取扱い

公共施設等運営権は「固定資産の減損に係る会計基準」の対象とし、資産のグルーピングは、原則として、実施契約に定められた公共施設等運営権の単位で行うこととされています。また、管理会計上の区分、投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む。)を行う際の単位、継続的な収支の把握がなされている単位及び他の単位から生じるキャッシュ・イン・フローとの相互補完性を考慮し、公共施設等運営事業の対象とする公共施設等ごとに合理的な基準に基づき分割した公共施設等運営権の単位でグルーピングを行うことができることとされています。

② 更新投資に関する会計処理(本実務対応報告第12項から第15項)

ⅰ 更新投資の分類要件

以下の要件を満たすか否かで異なる会計処理とされています。

  • 運営権者が公共施設等運営権を取得した時において、大半の更新投資の実施時期及び対象となる公共施設等の具体的な設備の内容が、管理者等から運営権者に対して実施契約等で提示されている
  • 当該提示によって、更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額及び支出時期を合理的に見積ることができる

ⅱ ⅲ以外の場合

更新投資を実施した時に、当該更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関する支出額(所有権が管理者等に帰属するものに限る。)を資産として計上することとされています。資産計上額は、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法により、当該更新投資の経済的耐用年数(残存する運営権設定償却期間以下とする。)により減価償却することとされています。

ⅲ ⅰの要件をいずれも満たす場合

公共施設等運営権を取得した時に更新投資のうち資本的支出に該当する部分(所有権が管理者等に帰属するものに限る。)に関して、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上することとされています。なお、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる金額及び支出時期に重要な見積りの変更が生じたときは、当該見積りの変更による差額を資産及び負債の額に加減することとされています。

資産計上額は、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法により、公共施設等運営権の運営権設定期間で減価償却することとされています。

③ プロフィットシェアリング条項(本公開草案第11項)

プロフィットシェアリング条項(注)が設けられる場合は、当該条項に基づき各期に算定された支出額を、算定された期の費用として処理することとされています。

(注) 管理者等と運営権者との間で締結された実施契約において、運営権対価とは別に、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回ったときに運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項

(3)開示(本実務対応報告第16項から第20項)

① 表示

  表示区分 表示科目
公共施設等運営権 無形固定資産 公共施設等運営権などその内容を示す科目
(分割支払の場合に計上する負債)
流動負債又は固定負債(ワンイヤールール)
公共施設等運営権に係る負債などその内容を示す科目
更新投資
(上記(2)②ⅱの場合)
無形固定資産 その内容を示す科目
更新投資
(上記(2)②ⅲの場合)
無形固定資産 その内容を示す科目
(更新投資に係る負債)
流動負債又は固定負債(ワンイヤールール)
その内容を示す科目
② 注記事項

原則として、次の事項を公共施設等運営権ごとに注記することとされています。ただし、以下のいずれかの場合には集約して注記することができます。

  • 同一の実施契約において複数の公共施設等運営権を対象とすることにより一体的な運営等を行う場合
  • 個々の公共施設等運営権の重要性が乏しいが、同一種類の複数の公共施設等運営権全体については重要性が乏しくない場合

ⅰ 運営権者が取得する公共施設等運営権の概要

  • 公共施設等運営権事業の対象となる公共施設等の内容
  • 実施契約に定められた運営権対価の支出方法
  • 運営権設定期間、残存する運営権設定期間
  • プロフィットシェアリング条項の概要等

ⅱ 公共施設等運営権の減価償却の方法

ⅲ 更新投資に係る事項

  • 主な更新投資の内容及び投資を予定している時期
  • 運営権者が採用した更新投資に係る資産及び負債の会計処理の方法
  • 更新投資に係る資産の減価償却の方法
  • 上記(2)②ⅱに基づき、更新投資を実施した時に資産計上する場合、翌期以降に実施すると見込まれる更新投資のうち資本的支出に該当する部分について、合理的に見積ることが可能な部分の内容及びその金額

2. 適用時期(本実務対応報告第21項)

本実務対応報告は、平成29年5月31日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することとされています。

なお、公共施設等運営制度の実際の運用は既に開始されていますが、特定の経過的な取扱いは定めず、本実務対応報告を過去の期間のすべてに遡及適用することとされています。

3. 公開草案からの主な修正点

  • 公共施設等運営権を取得した時に更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上する会計処理を行う要件として、公開草案では更新投資の実施内容の大半が管理者等が運営権者に課する義務に基づいていることが求められていましたが、「義務に基づいている」という内容について、「運営権者が公共施設等を取得した時において、大半の更新投資の実施時期及び対象となる公共施設等の具体的内容が、権利者等から運営権者に対して実施契約等で提示され」とより具体的に記載されました(本実務対応報告第12項)
  • 公開草案では「運営事業ごと」の注記とされていましたが、「運営権ごと」とされました。また、ただし書きで集約して注記することができる旨が追加されました(本実務対応報告第20項)
  • 適用時期は公表後とされていましたが、平成29年5月31日以後終了する事業年度及び四半期会計期間からとされました(本実務対応報告第21項)

なお、本稿は本実務対応報告の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

企業会計基準委員会ウェブサイトへ

(ご参考)
公共施設等運営権制度の概要については、リンク先をご参照ください。

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