「改正「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」の公表」のポイント ~IFRS第16号「リース」等を対象としたエンドースメント手続による改正~

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企業会計基準委員会が2018年12月27日に公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013年6月)の記載に基づき、2013年7月に「IFRSのエンドースメントに関する作業部会」を設置し、IASBにより公表された会計基準等に関するエンドースメント手続を実施し、修正国際基準を公表しています。

ASBJは、2018年4月11日に修正国際基準の直近の改正を行っていますが、その対象は、2017年6月30日までにIASBにより公表された会計基準等(ただし、IFRS第16号「リース」(以下「IFRS第16号」という。)及びIFRS第17号「保険契約」を除く。)とされていました。

今般、ASBJは、IFRS第16号及び2017年7月1日から同年12月31日までにIASBにより公表された会計基準等を対象としてエンドースメント手続を行い、2018年12月27日に、改正「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(以下、「改正修正国際基準」という。)を公表しました。
 



1. 改正修正国際基準の概要

(1)エンドースメント手続の対象

エンドースメント手続の具体的な対象は以下の通りです。

  • IFRS第16号

  • その他の会計基準等(2017年7月1日から同年12月31日までの間にIASBにより公表された会計基準等)

  • 「負の補償を伴う期限前償還要素」(IFRS第9号の修正)(2017年10月公表)

  • 「関連会社及び共同支配企業に対する長期持分」(IAS第28号の修正)(2017年10月公表)

  • 「IFRS基準の年次改善2015 - 2017年サイクル」(2017年12月公表)

(2)改正修正国際基準の構成

改正修正国際基準では、以下の(3)及び(4)に記載の通り、上述したエンドースメント手続の対象となる会計基準等について「削除又は修正」を行うことなく採択されており、改正修正国際基準は以下の改正のみで構成されています。

  • 修正国際基準の適用

(3)IFRS第16号に対するエンドースメント手続

ASBJは、次の項目を論点として識別し、「削除又は修正」の要否の検討を行いました。

① すべてのリースに係る資産及び負債の認識

すべてのリースに係る資産及び負債を認識すべきか否かは、財政状態計算書に係る論点であるため、IFRS第16号の根幹をなすモデルの有用性の観点から検討が行われました。

また、すべてのリースに係る資産及び負債を認識することは、適用に実務上の負担を伴うほか、財務指標への影響を通じて経営管理にも影響を及ぼす可能性があるため、実務上の困難さの観点からも検討が行われました。

上記論点に関する評価として、我が国における企業評価の実務でもオペレーティング・リースを資金調達手段の一つとして捉える見方に基づき、最低支払リース料の注記等の情報を用いている場合があり、これにより企業が利用可能な経済的資源や支払義務に関する情報を企業評価に反映していることから、これらのより正確な情報を提供し、比較可能性の向上を図る観点からは、資産及び負債を認識することに相応の有用性が認められると考えられ、原則としてすべてのリースに係る資産及び負債を認識することにも一定の論拠があるとしています。さらに、実務上の困難さに関しても、受け入れ難いとするほどの我が国特有の事情は新たに見出されていないとしています。

② 単一の費用認識モデル

この費用認識モデルは、各期の当期純利益に影響するものであるため、会計基準に係る基本的な考え方の観点から検討が行われました。

上記の論点に関する評価として、我が国における企業評価の実務において、オペレーティング・リースを企業が借入金等で資金を調達して設備投資することと経済的な実態に違いはないと捉えて財務情報の調整を行っている例が見られることから、IFRS第16号の費用認識モデルの論拠のようにオペレーティング・リースを資金提供を含む取引として捉えて費用認識することには相応の有用性があり、単一の費用認識モデルに一定の論拠があるとしています。

③ その他(貸手の会計処理、セール・アンド・リースバック取引、開示)

貸手の会計処理については、借手と貸手の会計処理が対称的でなく、一貫性に欠けた状態でIASBの検討が終了していることに懸念が聞かれたことから、IFRS第16号の根幹をなす考え方に関するものとして、検討が行われました。

セール・アンド・リースバック取引については、各期の当期純利益に影響するものであるため、会計基準に係る基本的な考え方の観点から検討が行われました。

開示(注記事項)については、実務上の負担と便益のバランスの観点から懸念が聞かれたことから、実務上の困難さの観点から検討が行われました。


以上の各論点を検討した結果、以下の総合的な評価が示されています。

  • すべてのリースに係る資産及び負債の認識に関して、一律の資産及び負債の認識がリースの経済的実態の多様性を反映しないという懸念や、必ずしも情報提供の便益が高いとはいえない多くの企業に実務上の負担が及ぶという懸念が聞かれている。

  • また、単一の費用認識モデルに関しても、同一の費用認識パターンの適用がリースの経済的実態の多様性を反映しないという懸念が聞かれている。

  • その一方、これらの懸念はIFRS第16号の開発過程において各国の市場関係者から同様に聞かれていたが、IFRS第16号は、オペレーティング・リースについて指摘されていた情報の透明性の欠如への対応の必要性から使用権モデルを採用して最終化されたものであり、この改善は我が国の企業評価の実務において一定の役割を果たすものと考えられる。

  • すべてのリースに係る資産及び負債の認識や開示に関する実務上の困難さについては、受け入れ難いとするほどの我が国特有の事情は、新たに見出されていない。

  • IFRS第16号の最終化以後、IFRSが適用される各国又は地域からは重要な指摘はなされておらず、現在、IASBにおいて特段の見直しの動きはない。

  • これらの状況を踏まえると、上述した論点はいずれも、これまで「削除又は修正」を行った項目ほどの重要性はないものと考えられ、「削除又は修正」を行わずに受入れ可能と判断した。

(4)その他の会計基準等のエンドースメント手続

ASBJは(1)に記載したその他の会計基準等について、すでにエンドースメントされた会計基準等や対応する日本基準での取扱いとの比較を行い、「削除又は修正」の要否を検討しましたが、「削除又は修正」を行う水準の懸念はないと結論付け、「削除又は修正」は必要ないものと判断したとしています。

(5)「修正国際基準の適用」の改正

前述の検討結果を踏まえて、改正修正国際基準では、「修正国際基準の適用」の「別紙1 当委員会が採択したIASBにより公表された会計基準等」を改正しています。

2. 適用時期及び経過措置

企業が修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成する場合、改正後の「修正国際基準の適用」を公表日以後開始する連結会計年度から適用することを原則とし、公表日を含む連結会計年度に係る連結財務諸表に早期適用することができる(その場合、四半期連結財務諸表に関しては、翌連結会計年度に係る四半期連結財務諸表から適用する)としています。

3. 公開草案から変更された主な点

内容に関わるような公開草案からの変更はありません。
 



本稿は改正修正国際基準の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

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