会社法(平成26年改正) 第6回:決算スケジュール

公認会計士 内川 裕介
公認会計士 武澤 玲子

1. 計算書類等及び連結計算書類の提出と監査のスケジュール

監査役会及び会計監査人を設置する会社の場合、定時株主総会までの決算の流れは以下のとおりです。

定時株主総会までの決算の流れ

(1) 取締役の計算書類等の提出

(2) 会計監査人の監査報告の通知

(3) 監査役会の監査報告の通知

(4) 取締役会による計算書類等の承認

(5) 株主総会招集通知の発送

(6) 定時株主総会

(1)及び(4)については具体的な期限の定めはありませんので、定時株主総会までの決算スケジュールの策定にあたっては、(2)、(3)及び(5)に関する期間の定めを考慮することになります。
 

2. 会計監査人の監査報告の通知

会計監査人は、以下の日までに、特定監査役及び特定取締役に対し、監査報告の内容を通知しなければなりません。(以下、連結計算書類に関する規定を併記します。)

計算書類とその附属明細書

  • 以下のうちいずれか遅い日(計規130 条第1項 1号)。

     イ) 計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日

     ロ) 計算書類の附属明細書を受領した日から1週間を経過した日

     ハ) 特定取締役、特定監査役及び会計監査人の間で合意により定めた日

連結計算書類

  • 連結計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日。
  • 特定取締役、特定監査役及び会計監査人の間で合意により定めた日がある場合にあっては、その日(計規130条 第1項3号)。

「特定取締役」「特定監査役」とは、監査報告の通知を受けることとされる取締役及び監査役をいいます。

特定取締役(計規130条第4項)

  1. 計算関係書類の監査報告の通知を受けるものを定めた場合におけるその取締役
  2. 定めていない場合は、監査を受けるべき計算関係書類の作成に関する職務を行った取締役

特定監査役(計規130条第5項)(監査役会設置会社の場合)

  1. 計算関係書類の監査報告の通知を受ける監査役を定めた場合のその監査役
  2. 計算関係書類の監査報告の通知を受ける監査役を定めていない場合はすべての監査役

監査結果報告の内容の通知を受けた日に、会計監査人の監査を受けたものとされます(計規130条第2項)。また、通知すべき日までに通知がなされない場合には、監査を受けたものとみなされ(計規130条第3項)、次の手続きに進むことができます。
 

3. 監査役会の監査報告の通知

特定監査役は、以下の日までに、特定取締役及び会計監査人に対し、監査役会の監査報告の内容を通知しなければなりません。

計算書類とその附属明細書

  • 以下のうちいずれか遅い日(計規132 条第1項1号)

     イ) 会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日

     ロ) 特定取締役、特定監査役の間で合意により定めた日があるときは、その日

連結計算書類

  • 会計監査報告を受領した日から、1週間を経過した日
  • 特定取締役、特定監査役の間で合意により定めた日があるときは、その日(計規132 条第1項2号)

会計監査人による監査と同様、監査結果報告の内容の通知を受けた日に、監査役の監査を受けたものとされ(計規132 条第2項)、また、通知すべき日までに通知がなされない場合には、監査を受けたものとみなされます(計規132条第3項)。

監査役会は、各監査役が作成した監査報告に基づき、監査役会の監査報告を作成することとされています(計規128条第1項)。監査役会の監査報告が、各監査役の監査報告と異なる場合には、各監査役は自己の監査報告の内容を付記することができます(計規128条第2項)。
 

4. 株主総会招集通知の発送期限(会299条)

株主総会の招集通知は、株主に対して株主総会における議決権行使の準備をする機会を与えるために、計算書類、連結計算書類及び事業報告に監査役及び会計監査人の監査報告書を添付して、以下の期限までに発送します(会437条、施規133条)。
また、書面投票制度や電磁的方法による投票制度を採用する株式会社は、株主総会参考資料を招集通知と併せて交付します(会301条第1項・第2項、施規65条)。

公開会社

株主総会の日の2週間前まで

公開会社でない会社

  • 株主総会の日の1週間前まで
  • 書面又は電磁的方法によって議決権を行使できるとしている会社は2週間前
  • 取締役会設置会社以外の会社は、定款の定めにより1週間を下回る期間とすることができる。

上記の計算書類等の株主総会の招集に際して提供すべき書類について、定款で定めることにより、株主へ書面等による提供の代わりに、インターネット上のホームページに掲載する「WEB開示制度」を採用することもできます(施規第94条、第133条第3項等)。
WEB開示の対象となる事項は以下のとおりです。

WEB開示の対象となる項目

株主総会参考資料

下記の事項以外がWEB開示の対象となります。

  • 議案
  • 株主総会参考書類に記載することとする事業報告の記載事項のうちWEB開示の対象とならない事項
  • WEB開示を行うホームページのURL
  • 監査役等がWEB開示を行うことについて異議を述べている事項

事業報告

  • 一定事項以外の,株式会社の現況に関する重要な事項,会社役員に関する重要な事項,株式に関する重要な事項及び新株予約権に関する重要な事項
  • 株式会社の状況に関する重要な事項
  • 業務の適正を確保するための体制についての決定等の内容の概要
  • 会社を支配する者の在り方に関する基本方針
  • 辞任した会社役員等に関する事項
  • 会社役員の重要な兼職の状況
  • 社外役員に関する事項
  • 会計監査人に関する事項な事項及び新株予約権に関する重要な事項

計算書類

  • 個別注記表
  • 株主資本等変動計算書

連結計算書類

  • 連結貸借対照表
  • 連結損益計算書
  • 連結株主資本等変動計算書
  • 連結注記表

【平成26年改正】
web開示によるみなし提供の対象となる計算書類に、株主資本等変動計算書が追加されました。


5. 計算書類等及び連結計算書類の承認・報告手続

計算書類は定時株主総会の承認を受ける必要があります(会438条第2項)。しかし、会計監査人設置会社では、以下の要件を満たす場合、計算書類の株主総会の承認は不要となり、報告事項となります(会439条、計規135条)。

a) 会計監査人の監査意見が無限定適正意見であること

b) 監査役会等の監査報告において、会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見がないこと

c) 監査役会等の監査報告において、会計監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める監査役等の意見の付記(計規128 条第2項後段・128条の2第1項後段・129条 第1項後段)がないこと

d) 特定監査役が通知すべき日までに監査報告の通知を行わないことにより、監査を受けたものとみなされたもの(計規132 条第3項)でないこと

e) 取締役会を設置していること

連結計算書類は定時株主総会に提出されますが、計算書類と異なり、株主総会での承認は不要で、報告事項として扱われます(会444 条第7項)。


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