金融商品の時価等の開示 第3回: 概要 その3

公認会計士 山岸 聡

4.金融商品の時価等に関する事項(適用指針4項)

金融商品の時価は、金融商品会計基準等に定める時価に基づいて、委託手数料等取引に付随して発生する費用を含めずに、金融商品に関する貸借対照表の科目ごとに、貸借対照表計上額、貸借対照表日における時価およびその差額ならびに当該時価の算定方法を注記します。

(1) 金融商品に関する貸借対照表の科目ごとに、貸借対照表計上額、貸借対照表日における時価およびその差額ならびに時価の算定方法

(2) 有価証券については、保有目的ごとに定める事項、保有目的の変更に関する事項および減損処理に関する事項(※1)

(3) デリバティブ取引(ヘッジ会計が適用されているものを含む)については、取引の対象物の種類ごとに、契約額、時価および時価の算定方法等(※2)

(4) 金銭債権および満期がある有価証券(ただし、売買目的有価証券を除く)については、償還予定額の合計額を一定の期間に区分した金額(※3)

(5) 社債、長期借入金、リース債務およびその他の有利子負債については、返済予定額の合計額を一定の期間に区分した金額(※4)

(6) 金銭債務については、貸借対照表日における時価の開示に加えて、約定金利に金利水準の変動のみを反映した利子率で割り引いた金銭債務の金額または無リスクの利子率で割り引いた金銭債務の金額のいずれかを開示することができます。ただし、金額の算定方法および時価との差額について適切な補足説明を行います(※5)。

※1 有価証券に関する事項

① 売買目的有価証券

当期の損益に含まれた評価差額を注記します。

② 満期保有目的の債券

(ア) 当該債券を、貸借対照表日における時価が貸借対照表日における貸借対照表計上額を超えるものおよび当該時価が当該貸借対照表計上額を超えないものに区分し、当該区分ごとの当該貸借対照表計上額、当該時価およびその差額を注記します。

(イ) 当期中に売却したものがある場合には、債券の種類ごとの売却原価、売却額、売却損益および売却の理由を注記します。
なお、(ア)の注記に当たっては、債券の種類ごとに区分して記載することができます。

③ その他有価証券

(ア) 当該有価証券を、貸借対照表日における貸借対照表計上額が取得原価または償却原価を超えるものおよび当該貸借対照表計上額が取得原価または償却原価を超えないものに区分し、当該区分ごとの取得原価または償却原価、当該貸借対照表計上額およびその差額を注記します。

(イ) 当期中に売却したものがある場合には、売却額、売却益の合計額および売却損の合計額を注記します。
なお、当該注記に当たっては、有価証券の種類(株式および債券等)ごとに区分して記載する。また、(ア)の注記に当たって、債券については種類ごとに区分して記載することができます。

④ 当期中に売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式および関連会社株式ならびにその他有価証券の保有目的を変更した場合には、その旨、変更の理由(満期保有目的の債券の保有目的を変更した場合に限る)および当該変更が財務諸表に与えている影響の内容を注記します。

⑤ 当期中に有価証券の減損処理を行った場合には、減損処理を行った旨および減損処理額を注記します。

※2 デリバティブ取引に関する事項

取引の対象物の種類(通貨、金利、株式、債券および商品等)ごとに、次の事項を注記します。

① ヘッジ会計が適用されていないもの

(ア) 貸借対照表日における契約額または契約において定められた元本相当額

(イ) 貸借対照表日における時価および当該時価の算定方法

(ウ) 貸借対照表日における評価損益

②ヘッジ会計が適用されているもの

(ア) 貸借対照表日における契約額または契約において定められた元本相当額

(イ) 貸借対照表日における時価および当該時価の算定方法

※3 金銭債権および満期がある有価証券に関する事項

金銭債権および満期がある有価証券(ただし、売買目的有価証券を除く)については、償還予定額の合計額を一定の期間に区分した金額を注記します。

※4 社債、長期借入金、リース債務およびその他の有利子負債に関する事項

社債、長期借入金、リース債務およびその他の有利子負債については、返済予定額の合計額を一定の期間に区分した金額を注記します。

※5 金銭債務に関する事項

金銭債務については、貸借対照表日における時価の開示に加えて、次の金額のいずれかを開示することができます。ただし、この場合には、当該金額の算定方法および時価との差額についての適切な補足説明を行います。

① 約定金利に金利水準の変動のみを反映した利子率(貨幣の時間価値だけを反映した無リスクの利子率の変動のみを加味し、企業自身の信用リスクの変化は反映しない利子率)で割り引いた金銭債務の金額

② 無リスクの利子率(企業自身の信用リスクは反映しない利子率)で割り引いた金銭債務の金額

【記載内容の例示】

連結決算日における連結貸借対照表計上額、時価およびこれらの差額については、次のとおりです。

項目

連結貸借対照表計上額(※)

時価(※)

差額

(1) 現金および預金

xxx

xxx

(2) 受取手形および売掛金

xxx

xxx

(3) 投資有価証券その他有価証券

xxx

xxx

(4) 支払手形および買掛金

(xxx)

(xxx)

(5) 短期借入金

(xxx)

(xxx)

(6) 長期借入金

(xxx)

(xxx)

xxx

(7) デリバティブ取引

(※) 負債に計上されているものについては( )で示しています。

(注1)金融商品の時価の算定方法ならびに有価証券およびデリバティブ取引に関する事項

(1) 現金および預金

短期間で決済されるため、時価は帳簿価額にほぼ等しいことから、当該帳簿価額によっています。

(2) 受取手形および売掛金

短期間で決済されるため、時価は帳簿価額にほぼ等しいことから、当該帳簿価額によっています。

(3) 投資有価証券

株式は取引所の価格によっています。なお、有価証券はその他有価証券として保有しており、これに関する連結貸借対照表計上額と取得原価との差額は以下のとおりです。

種類

取得価額

連結貸借対照表計上額

差額

連結貸借対照表計上額が取得価額を超えるもの

株式

xxx

xxx

xxx

連結貸借対照表計上額が取得価額を超えないもの

株式

xxx

xxx

xxx

合計

xxx

xxx

xxx

(4) 支払手形および買掛金

短期間で決済されるため、時価は帳簿価額にほぼ等しいことから、当該帳簿価額によっています。

(5) 短期借入金

一定の期間ごとに区分した債務ごとに、その将来キャッシュ・フローを、返済期日までの期間および信用リスクを加味した利率で割り引いた現在価値によって算定しています。

(6) 長期借入金

長期借入金の時価については、元利金の合計額を同様の新規借入を行った場合に想定される利率で割り引いて算定する方法によっています。変動金利による長期借入金は金利スワップの特例処理の対象とされており、当該金利スワップと一体として処理された元利金の合計額を、同様の借入を行った場合に適用される合理的に見積もられる利率で割り引いて算定する方法によっています。

(7) デリバティブ取引

① ヘッジ会計が適用されていないもの:該当するものはありません。

② ヘッジ会計が適用されているもの :ヘッジ会計の方法ごとの連結決算日における契約額または契約において定められた元本相当額等は、次のとおりです。

表

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