2022年3月期 有報開示事例分析 第7回:グループ通算制度への移行に係る開示分析

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 水野 貴允

Question

2022年3月期決算について、グループ通算制度移行に関する注記の開示の状況は?

 

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2022年8月

  • 調査対象期間:2022年3月31日

  • 調査対象書類:有価証券報告書

  • 調査対象会社:2022年4月1日現在のJPX400に採用されている会社のうち、以下の条件に該当する198社
    ① 3月31日決算
    ② 2022年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ③ 日本基準を採用している
     

【調査結果】

(1) グループ通算制度移行に関する注記分析

調査対象会社(198社)を対象にして、連結納税制度の適用に関する注記、グループ通算制度移行に関する注記の開示状況を分析した結果は<図表1>のとおりとなった。


<図表1>グループ通算制度移行に関する注記の事例分析

連結納税制度に関する注記事例会社数割合
連結納税制度適用の注記ありグループ通算制度移行に関する注記あり連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に注記6787.0%

 
 連結追加情報に注記810.4%

 
 小計7597.4%

 
グループ通算制度移行に関する注記なし22.6%

 
小計 77100.0%

 
連結納税制度適用の注記なし 121-

 
合計(※1)  198-
(※1)対象は、分析対象会社198社

その結果、77社が連結納税制度を導入しており、そのうち67社(87.0%)が会計方針として「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」へ翌期首からグループ通算制度へ移行する記載をしていた。また、グループ通算制度移行に関する注記を追加情報の見出しを設けて記載している会社が8社(10.4%)あった。グループ通算制度適用初年度である2022年4月1日以後開始する事業年度から、グループ通算制度を適用する場合における法人税及び地方法人税並びに税効果会計の会計方針が定められた実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第42号」という。)が原則適用されるが、実務対応報告第42号を2022年3月期から早期適用している会社のうち2社は「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しており、追加情報の見出しに実務対応報告第42号を当年度から適用している記載をした会社も2社該当した。
 

(2) 連結納税制度を適用している会社分析

2022年3月期決算のうち、6月末までに有報を提出しているすべての会社2,570社について、提出会社又は連結子会社が連結納税制度を適用している旨の開示状況に関する過去推移を分析した結果は、<図表2>のとおりであった。10年間の過去推移において、連結納税制度を適用している会社の割合は毎年増加していることがわかる。

 

<図表2> 連結納税制度を適用している旨の開示状況―過去推移

適用会社数

全会社数(※1,2)

適用割合

2013年3月期

352

2,797

12.6%

2014年3月期

395

2,754

14.3%

2015年3月期

421

2,720

15.5%

2016年3月期

451

2,695

16.7%

2017年3月期

455

2,672

17.0%

2018年3月期

473

2,666

17.7%

2019年3月期

498

2,632

18.9%

2020年3月期

504

2,602

19.4%

2021年3月期

543

2,590

21.0%

2022年3月期

544

2,570

21.2%

(※1)対象は、筆者執筆時点の3月期決算のすべての有価証券報告書提出会社
(※2)2022年3月期は、提出日2022年6月30日時点までを集計

(旬刊経理情報(中央経済社)2022年9月20日号 No.1655「2022年3月期「有報」分析」を一部修正)


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