わかりやすい解説シリーズ「退職給付」 第4回:連結上の表示組替

2015年4月23日 PDF
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 内川 裕介
公認会計士 七海健太郎

1. 連結財務諸表における名称の変更

【ポイント】
平成24年改正により、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用(以下「未認識数理計算上の差異等」という)を連結財務諸表上で認識することになりました。これに伴い、未認識数理計算上の差異等を含まない個別財務諸表と、未認識数理計算上の差異等を含む連結財務諸表で、明確に科目名称を分ける必要があります。具体的には連結財務諸表における従来の「退職給付引当金」が未認識数理計算上の差異等を含めて「退職給付に係る負債」となり、同様に「前払年金費用」が「退職給付に係る資産」となっています。

図1 連結財務諸表における名称の変更

上記の勘定科目の名称の変更は連結財務諸表のみの変更となっています。従って、個別財務諸表では従来通り「退職給付引当金」および「前払年金費用」の名称を使用します。
なお、未認識数理計算上の差異等の取扱いが個別財務諸表と連結財務諸表で異なることを明示するために科目名称を分けたという趣旨から、個別財務諸表の勘定科目を「退職給付に係る負債」等へ変更することは認められていません。
会計実務上は、連結修正仕訳において、個別財務諸表上で計上されている「退職給付引当金」等を「退職給付に係る負債」等に組み替える仕訳が必要となります。

2. 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法

【ポイント】
平成24年改正により連結財務諸表上、未認識数理計算上の差異等を、純資産の部におけるその他の包括利益累計額に計上することになりました。
従って、連結修正仕訳において、未認識数理計算上の差異等を退職給付債務に係る負債(資産)に計上するとともにその他の包括利益累計額に計上する必要があります。

図2 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法
  • 未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の即時認識

    平成24年改正により、連結財務諸表において未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用について、即時認識されることになりました。つまり、退職給付に係る負債として連結貸借対照表に認識します。 また、同額が純資産の部におけるその他包括利益累計額(退職給付に係る調整累計額)に計上されます。つまり、未認識数理計算上の差異等について、税効果を調整した後、その他の包括利益を通じて純資産の部におけるその他の包括利益累計額に計上します。

  • 未認識数理計算上の差異等に関する改正基準適用初年度の経過措置

    適用初年度(3月決算会社は平成26年3月期)は、実務上の負担を考慮し、遡及処理は行わないものとされています。従って、適用初年度は未認識の数理計算上の差異等について、その他の包括利益を通さず、税効果を調整の上、直接純資産の部におけるその他の包括利益累計額(退職給付に係る調整累計額)に計上することになります。

  • 未認識数理計算上の差異等に関する改正基準適用2年目以降の会計処理

    適用2年目以降(3月決算会社は平成27年3月期)に発生した未認識数理計算上の差異等は、その他包括利益を通して、税効果を調整の上、純資産の部における退職給付に係る調整累計額に計上します。 また、退職給付に係る調整累計額に計上されている未認識数理計算上の差異等のうち、当期に費用処理した部分については、税効果を調整の上、その他の包括利益の調整(組替調整)を行います。

  • 個別財務諸表には適用されません

    連結財務諸表についてのみ適用され、個別財務諸表の取扱いは従来どおりとなります。従って、連結修正仕訳で仕訳を計上することになります。

  • 仕訳例

    (1) 前提

    ① ×1年度末の個別財務諸表の退職給付引当金700
    ② ×1年度末の未認識数理計算上の差異等300
    ③ ×2年度に発生した未認識数理計算上の差異等100
    ④ ×2年度に費用処理した未認識数理計算上の差異等60⑤法定実効税率30%
    ⑤ 繰延税金資産は全額回収可能であると判定
    ⑥ ×2年度の個別財務諸表の退職給付引当金は未認識数理計算上の差異の費用処理以外の増減はないものと仮定

    (2) 改正適用初年度(×1年度)

    ① 個別財務諸表で計上している「退職給付引当金」を「退職給付に係る負債」に振り替えます。

    図3

    ② 未認識数理計算上の差異等を、連結財務諸表上、退職給付に係る負債に計上するとともにその他の包括利益累計額に計上します。なお、適用初年度はその他の包括利益を通さず、直接純資産の部のその他の包括利益累計額に計上します。

    図4

    ③ 退職給付に係る負債について、繰延税金資産の計上を行います。この場合、法人税等調整額を通さず直接その他の包括利益累計額を増減させます。

    図5

    ※1 90=退職給付に係る調整累計額300×法定実効税率30%

    (3) 適用2年目以降(×2年度) (注)開始仕訳は除きます。

    ① 当期に発生した未認識数理計算上の差異100をその他の包括利益を通して連結財務諸表上で認識します。

    図6

    ② 退職給付に係る負債について、繰延税金資産の計上を行います。

    図7

    ※2 30=退職給付に係る調整額100×法定実効税率30%

    ③ 当期費用処理された未認識数理計算上の差異等について組替調整が発生し、まず個別財務諸表の処理の振り戻しを行います。

    図8

    ④ 未認識数理計算上の差異等について、個別財務諸表上において費用処理され当期純利益を構成している一方で、前期以前のその他の包括利益にも含まれており、組替調整を行う必要があります。

    図9

    ※3 18=退職給付に係る調整額60×法定実効税率30%

    なお、組替調整に関する考え方は、包括利益の表示に関する会計基準 第3回:組替調整額 もご参照ください。

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