ストック・オプション 第7回:親会社が自社株式オプションを子会社の従業員等に付与する場合

2019年6月28日
カテゴリー 解説シリーズ

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸聡

1. 個別財務諸表上の会計処理

親会社が、自社株式オプションを子会社の従業員等に付与する場合も、このような取引はグループ経営上の観点から行われます。企業集団として見た場合、ストック・オプション等に関する会計基準が適用される取引となります。親会社が、自社株式オプションを子会社の従業員等に付与した場合には、親会社や子会社の個別財務諸表上、以下の会計処理を行うことに留意が必要です。

(1) 親会社が自社株式オプションを付与した場合

親会社が自社株式オプションを子会社に付与する場合とは、親会社自身の子会社に対する投資価値を結果的に高めることを目的としていると考えられるため、取引における対価性が認められるとの判断から、親会社の個別財務諸表においてストック・オプション等に関する会計基準に準拠した処理が必要とされます(会計基準第24項)。

(2) 子会社の報酬体系に組み入れられているなどの場合

子会社の従業員等に対する当該親会社株式オプションの付与と引き換えに従業員等から提供された上記サービスの消費を、子会社の個別財務諸表においても費用として計上します(「給料手当」などの科目名称を用いる)。この場合、子会社の個別財務諸表においては、同時に、報酬の負担を免れたことによる利益を特別利益として計上します(「株式報酬受入益」などの科目名称を用いる)(適用指針第22項(2))。

(3) 子会社の報酬としては位置付けられていない場合

子会社の個別財務諸表において (2) の会計処理を行う必要はありません(適用指針第22項(3))。

これらの会計処理の内容をまとめると、以下のとおりです。

取引のパターン 親会社の会計処理 子会社の会計処理

(1) 親会社が、自社株式オプションを子会社の従業員等に付与した場合

(株式報酬費用)

(新株予約権)

仕訳なし

(2) 子会社の従業員等に対する当該親会社株式オプションの付与が子会社の
報酬体系に組み入れられているなど、子会社においても自社の従業員等に対する

報酬として位置付けられている場合

(株式報酬費用)

(新株予約権)

(給与手当)


(未払金)


(未払金)


(株式報酬受入益)

(3) 子会社の従業員等に対する当該親会社株式オプションの付与が
子会社の報酬としては位置付けられていない場合

(株式報酬費用)


(新株予約権)

仕訳なし

2. 連結財務諸表上の会計処理

親会社のストック・オプションが子会社の従業員等に対する報酬として位置付けられており、子会社の個別財務諸表で親会社のストック・オプションが費用計上される場合には、親会社の連結財務諸表では、親会社の従業員等に付与されているものと変わりません。そのため、親会社の連結財務諸表の作成に際して、子会社がその個別財務諸表で計上した給与手当と株式報酬受入益が相殺消去されます。