税効果会計(平成27年度更新) 第6回:その他有価証券の評価差額に対する税効果会計

2016年5月17日 PDF
カテゴリー 解説シリーズ

公認会計士 浦田 千賀子

その他有価証券の時価評価に伴い発生する評価差額は、税効果会計適用上の一時差異に該当し、これについて繰延税金資産又は繰延税金負債が認識されます。
今回の改正においても、監査委員会報告第70号のその他有価証券の評価差額に係る一時差異の取扱いに関する考え方を踏襲しています。

1.原則的な処理

個々の銘柄ごとにスケジューリングを行い、評価差損に係る将来減算一時差異については当該スケジューリングの結果に基づき回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を計上し、評価差益に係る将来加算一時差異については繰延税金負債を計上します。

原則的な処理

2.許容される処理

① その他有価証券の評価差額に係る一時差異がスケジューリング可能な一時差異である場合
評価差額を評価差損が生じている銘柄と評価差益が生じている銘柄に区分し、評価差損の銘柄ごとの合計額に係る将来減算一時差異については、スケジューリングの結果に基づき回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上し、評価差益の銘柄ごとの合計額に係る将来加算一時差異については繰延税金負債を計上します。

② その他有価証券の評価差額に係る一時差異がスケジューリング不能なもの
評価差損の銘柄ごとの合計額と評価差益の銘柄ごとの合計額を相殺した後の純額の評価差損に係る将来減算一時差異又は評価差益に係る将来加算一時差異について、繰延税金資産又は繰延税金負債を計上します。

(ア) 純額で評価差益の場合
純額の評価差益に係る将来加算一時差異については、繰延税金負債を計上します。ただし、当該評価差益はスケジューリング不能な将来加算一時差異ですので、繰延税金資産の回収可能性の判断に当たっては、その他有価証券の評価差額以外の将来減算一時差異とは相殺できないものとして取り扱います。

(イ) 純額で評価差損の場合
純額の評価差損に係る将来減算一時差異は、スケジューリング不能な将来減算一時差異ですので、原則として当該繰延税金資産の回収可能性は無いものとして取り扱います。ただし、その他有価証券は、通常は随時売却が可能であり、長期的には売却が想定される有価証券ですので、会社の業績等の状況を回収可能性の判断基準とすることができるとされます。業績等の状況を判断基準とするということは、回収可能性適用指針における(分類1)~(分類5)への当てはめにより、回収可能性の判断基準とするものであり、以下の場合には、純額の評価差損に係る繰延税金資産についても回収可能性があると判断されます。

(1)(分類1)に該当する企業及び(分類2)に該当する企業((分類2)に該当するものとして取り扱われる企業を含む)
純額の評価差損に係る繰延税金資産につき、回収可能性があると判断します。

(2)(分類3)に該当する企業((分類3)に該当するものとして取り扱われる企業を含む)
将来の合理的な見積可能期間(概ね5年)内の課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額に基づき、純額の評価差損に係る繰延税金資産を見積るときは、当該繰延税金資産の回収可能性があると判断します。

(3)(分類3)に該当し、かつ5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産を合理的に説明する(臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去3年及び当期の課税所得の推移等を勘案)企業
5年を超える見積可能期間の一時差異等加減算前課税所得の見積額にスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額に基づき、純額の評価差損に係る繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産の回収可能性はあると判断します。

<設例>

1.原則的な処理

銘柄 売却
予定
原価 時価 評価
差額
税効果※1
資産 負債
A株式
あり 1,000 2,000 1,000 300
B株式 あり 1,000 500 △500 ※2150
C株式 なし※3 1,000 1,300 300 90
D株式 なし※3 1,000 700 △300
  4,000 4,500 500 150 390

※1 法定実効税率は30%

※2 繰延税金資産は、回収可能と判断された。

※3 売却予定がなくスケジューリング不能であるため、繰延税金資産を計上できないと判断した。

仕訳

A株式

A株式

B株式

B株式

C株式

C株式

D株式

D株式

※ 回収不能として繰延税資産は計上しない

まとめ

まとめ

2.許容される処理

(1) スケジューリング可能なものとスケジューリング不能なものが混在している場合

銘柄  売却
予定
原価 時価 評価
差額
税効果※1
資産 負債 合計※4
A株式 あり※2 1,000 2,000 1,000 300 △300
B株式 あり※2 1,000 500 △500 150 150
C株式 なし※3 1,000 1,300 300 90 △90
D株式 なし※3 1,000 800 △200 60 60
  4,000 4,600 600 210 390 △180

※1 法定実効税率は30%

※2 売却予定ありの銘柄については、スケジューリング可能であり、いずれも回収可能と判断された。

※3 売却予定のない銘柄については、スケジュ-リング不能と判断した。

※4 税効果合計欄は、繰延税金負債に△。

① スケジューリング可能であり回収可能であると判断された銘柄

仕訳

A株式

スケジューリング可能であり回収可能であると判断された銘柄 仕訳 A株式

B株式

スケジューリング可能であり回収可能であると判断された銘柄 仕訳 B株式
② スケジューリング不能と判断された銘柄

仕訳

スケジューリング不能と判断された銘柄 仕訳

スケジューリング不能と判断された銘柄については、純額で評価差益となるので、繰延税金負債を認識します。

①と②の合計

仕訳

①と②の合計 仕訳

(2) 全てスケジューリング不能であり、純額で評価差損となる場合

ア. 2.②(イ)(1) に該当する会社の場合

銘柄  売却
予定
原価 時価 評価
差額※2
税効果※1
資産 負債 合計※3
A株式 なし※2 1,000 800 △200 60
60
B株式 なし※2
1,000 500 △500
150 150
C株式 なし※2 1,000 1,100 100
30
△30
D株式 なし※2 1,000 700
△300 90
90
  4,000 3,100
△900
300 30 270

※1 法定実効税率は30%

※2 全ての銘柄の株式に売却予定はなく、スケジュ-リング不能と判断した

※3 税効果合計欄は、繰延税金負債に△

仕訳

2.②(イ)(2) に該当する会社の場合 仕訳

回収可能性適用指針の(分類1)及び(分類2)に該当する場合には、純額の評価差損に係る繰延税金資産につき、回収可能性があると判断します。

イ. 2.②(イ)(2) に該当する会社の場合

前提:将来5年間の一時差異等加減算前課税所得の見積額 2,000

銘柄  売却
予定
原価 時価 評価
差額
税効果※1
資産 負債 合計※3
A株式 なし※2 1,000 800 △200 60
60
B株式 なし※2
1,000 500 △500
150 150
C株式 なし※2 1,000 1,100 100
30
△30
D株式 なし※2 1,000 700
△300 90
90
  4,000 3,100
△900
300 30 270

※1 法定実効税率は30%

※2 全ての一時差異はスケジュ-リング不能

※3 税効果合計欄は、繰延税金負債に△

※4 将来の合理的な見積可能期間(概ね5年)内の課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額を500とします。

仕訳

2.②(イ)(2) に該当する会社の場合 仕訳

※5 純額の評価差損に係る繰延税金資産の総額=500×30%=150

委員会報告66号の(分類3)に該当する場合には、将来の合理的な見積可能期間(概ね5年)内の一時差異等加減算前課税所得の見積額からスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額に基づき、純額の評価差損に係る繰延税金資産を計上することとなります。

ウ. 2.②(イ)(3) に該当する会社の場合

銘柄  売却
予定
原価 時価 評価
差額※2
税効果※1
資産 負債 合計※3
A株式 なし※2 1,000 800 △200 60
60
B株式 なし※2
1,000 500 △500
150 150
C株式 なし※2 1,000 1,100 100
30
△30
D株式 なし※2 1,000 700
△300 90
90
  4,000 3,100
△900
300 30 270

※1 法定実効税率は30%

※2 全ての一時差異はスケジュ-リング不能

※3 税効果合計欄は、繰延税金負債に△

※4 5年を超える見積可能期間の一時差異等加減算前課税所得の見積額にスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額は600とします。

仕訳

2.②(イ)(3) に該当する会社の場合 仕訳

※5 純額の評価差損に係る繰延税金資産の総額=600×30%=180

2.②(イ)(3) に該当する場合には、5年を超える見積可能期間の一時差異等加減算前課税所得の見積額にスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額に基づき、純額の評価差損に係る繰延税金資産を計上することになります。

3. 減損処理したその他有価証券の取扱い

減損処理したその他有価証券に関して、期末における時価が減損処理の直前の取得原価に回復するまでは、減損処理後の時価の上昇に伴い発生する評価差益は将来加算一時差異ではなく、減損処理により生じた将来減算一時差異の戻入れとなります。このため、原則どおり、個々の銘柄ごとにスケジューリングを行い、当該その他有価証券に係る将来減算一時差異については当該スケジューリングの結果に基づき回収可能性を判断した上で、繰延税金資産を計上することになります。

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