数理計算上の差異を当期の発生額についてのみ一括償却することの可否

2017年7月19日
カテゴリー 会計実務Q&A

Question 

数理計算上の差異の処理方法として10年定額償却を採用している会社において、当期末に割引率に重要な変動が生じており、割引率見直しにより発生する多額の数理計算上の差異を、市場利子率の著しい低下を原因とする臨時かつ多額なものとして、翌期に一括償却することは認められるでしょうか。

Answer 

当期に発生した数理計算上の差異についてのみ一括償却することは認められないと考えます。

数理計算上の差異は以下のようなものから構成されます。

① 年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異
② 退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異
③ 見積数値の変更等により発生した差異

退職給付会計基準が即時認識のほかに遅延認識を認めたのは、数理計算上の差異には予測と実績との乖離のみならず予測数値の修正も反映されることから、各期に生じる差異を直ちに費用として計上することが退職給付に係る債務の状況を忠実に表現するとは言えない点、ある年度の数理計算上の差益が別の年度における差損と相殺されて結果的に消滅することが想定される点を考慮してのことと考えられます。

数理計算上の差異は複数の要素から構成されており、それぞれに発生原因が異なりますが、遅延認識を認めた退職給付会計基準の趣旨は、恣意性や煩雑さを排するために数理計算上の差異をひとくくりして認識し、退職給付に係る負債(個別上の退職給付引当金)残高を平均残存勤務期間内で、実績値に近似するように補正するところにあるものと思われます。

割引率変更により発生した数理計算上の差異は、他の要因により発生した差異と合算し、会社が採用した数理計算上の差異の費用処理方法に従って会計処理することになります。

根拠条文

  • 「退職給付に関する会計基準」第11項

この記事に関連するテーマ別一覧

退職給付会計

企業会計ナビ

企業会計ナビ

会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。 

一覧ページへ