EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2021年1月29日、シンガポール内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore、以下、「IRAS」)は、「新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」)に係る支援措置および税務ガイダンス(COVID-19 Support Measures and Tax Guidance)」を改定しました。この改定により、税務上の居住性の判定および恒久的施設(以下、「PE」)に関する指針の適用期間が延長されました。加えて、シンガポールの二重課税防止協定(以下、「DTA」)における諸規定および建築現場、建設、据付および組立プロジェクトがPEの認定基準を充足したかどうかの判定に対する解釈に関する指針が示されました。
本アラートは、IRASから法人に対して、これまでに公表されたガイダンスを要約したものです。
2021賦課年度(Year of Assessment)および2022賦課年度1において、COVID-19関連の渡航制限のためにシンガポール国内で取締役会2を開催できなかった法人が以下のすべての条件を満たす場合、IRASは当該法人をシンガポールの税務上の居住法人とみなす方針を示しています。
一方、2021賦課年度と2022賦課年度において、以下のすべての条件を満たす法人は、IRASにより非居住者法人とみなされます。
2021賦課年度および2022賦課年度(巻末注1を参照)において、COVID-19関連の渡航制限のためにシンガポール国内に滞在せざるを得ない外国法人の従業員は、当該外国法人が以下のすべての条件を満たす場合、当該外国法人のシンガポール国内におけるPEを生じさせないものとみなされます。
税務上の居住性の判定、およびシンガポール国内にPEを有していないとの税務上のポジションを裏付けるために、企業は関連する文書や記録を保持し、IRASの要求に応じて適切な情報を提供すべきです。
シンガポールのDTAにおける諸規定の解釈について、IRASは、2020年4月3日5および2021年1月21日6に経済協力開発機構(OECD)事務局から公表された、租税条約およびCOVID-19危機の影響に係る分析並びにガイダンスを参照することができることを公表しました。
IRASは、建設PEの期間に関する認定基準を超過したかどうかの判定において、COVID-19の拡大防止に係る公衆衛生対策として業務が停止されていた特定の期間中は「時計を止める(当該期間は判定基準の対象期間に含めない)」ことを決定しました。具体的には、非居住法人が、以下のすべての条件を満たす場合、2020年4月7日から2020年8月6日までのサーキットブレーカー期間の122日間は、PEの判定期間にカウントされません。
今回の税務ガイダンスの改定は、居住性及の判定びPE問題の税務上の取扱いについて確実性と明瞭性を企業に提供するものです。前回のガイダンスは、適用対象期間が2020年12月31日までに限定されていたことから、今回の改定は納税者にとっても前向きな動きといえます。
シンガポール国内の建設契約から2020年にPEが生じた外国企業は、2020年4月7日から2020年8月6日までの期間PEの認定基準の計算から除外することが認められるかどうかを確認することが必要となります。計算期間からの除外によりPE認定を避けられる場合は、支払済みの源泉徴収税の還付を請求することができます。
企業にとって重要なのは、税務上の居住性やPE問題に関する会社の税務上のポジションを裏付ける関連文書や記録を保持し、IRASの要求に応じて適切に提供することです。COVID-19をめぐる情勢は絶えず変化しているため、企業はこのトピックについて、今後もIRASからのガイダンスの公表を注視する必要があると考えられます。
巻末注
※本アラートの詳細は、下記PDFからご覧ください。