メキシコ、非居住者から一時輸入した物品の購入に掛かるVATの源泉徴収を一部免除するVAT規定を廃止

Japan tax alert 2021年7月1日号

この廃止は、「製造・マキラドーラ・輸出サービス産業の振興のための政令」に準拠して認められたプログラム(IMMEXプログラム)に基づいてメキシコに一時輸入される物品の非居住者による販売を伴うマキラドーラまたはIMMEX制度に影響を与えます。この制度を利用する納税者は、自身の業務を分析し、VATの要求事項を遵守するために必要な変更を行うべきです。

メキシコは2021年7月8日を発効日として、非居住者から一時輸入した物品(メキシコを経由して別の国に輸出される物品)の適格購入の一部について付加価値税(VAT)の源泉徴収を免除する「貿易に関する一般規則」5.2.5項を廃止します。

背景

一般に、物品がメキシコで納品されるか、メキシコから出荷される場合、その物品の売買に対してメキシコ国内でVATが課税されます。非居住者から商品を購入するメキシコの居住者は、メキシコ国内にある物品についてVATを計算して源泉徴収しなければなりません。この源泉徴収税の仕組みでは、購入者はVATのために請求金額をグロスアップし、そのVATを税務当局に送金する必要があります。購入者は、源泉徴収額が納付された日の翌月に源泉徴収されたVATの控除を請求することができます。

5.2.5項によれば、非居住者が、IMMEXプログラムの下で活動する企業がすでに一時輸入した物品を当該企業に販売した場合、この販売はメキシコ国外で行われたものとして扱われ、その結果、VATの源泉徴収を免除されます。

5.2.5項は、原材料、廃品材料、資産(機械設備や生産設備など)の売買を伴う取引に関わる料金徴収制度(マキドーラ)との関係で効力を発します。一部企業は、IMMEXプログラムの下で活動するメキシコの流通会社が別のマキラドーラ企業、つまりIMMEX企業によって製造された完成品を非居住者から購入する場合にも5.2.5項に依拠してきました。この取得と同時に、関税上の取り扱いが「一時輸入」から「確定輸入」に変わった場合、その時点でVATが課税されます。この場合、取引に対して二重にVATが課税される可能性があります。

メキシコの税務当局は、取引に対して5.2.5項が適用される結果、メキシコの流通会社が行った購入に対してVATの源泉徴収が課されないことに異議を唱えてきました。こうした5.2.5項の適用に対する異議を受けて、メキシコの多くの流通会社がそうした取引にVATを適用してきました。

2021年5月27日、メキシコの税務当局は「貿易に関する一般規則」に対する第5次改定決議を公示しました。この決議により、5.2.5項は2021年7月8日で廃止されます。

VATの源泉徴収

同項は2021年7月8日まで有効なため、マキラドーラおよびIMMEX制度に関わる適格取引についてはVATの源泉徴収は行われないものの、購入物品に対する関税上の取り扱いが一時輸入(メキシコが中継地となるもの)から確定輸入(メキシコに残留するもの)に変わった場合、引き続きVATが課税されます。同項の廃止が発効すると、一部企業は二重VATによるキャッシュ・フローの影響を受ける可能性があります。

2021年7月8日以降、メキシコの居住者である購入者は、支払時点で非居住者との売買価格に対して16%の税率でVATを源泉徴収する必要が生じます。その購入者がIMMEXプログラムに参加している場合でも、源泉徴収の必要があります。居住者である購入者は、源泉徴収したVATを月次VAT申告の一部としてメキシコ税務当局に送金しなければなりません。関税上の取り扱いの変更のために納入されたVATおよび一時輸入品の購入時に源泉徴収されたVATは、控除または還付の制度を利用することにより回収可能となります。しかし、還付を受ける時期や控除を使用する時期はケースバイケースで異なります。

2021年7月8日が目前に迫り、納税者は自身の仕組みを分析し、VATの源泉徴収の要求事項を遵守するために必要なプロセスを導入することを検討すべきです。

本アラートの詳細は、2021年6月23日付EY Global Tax Alert 「Mexico repeals VAT rule that exempted certain purchases of temporarily imported goods from nonresidents from VAT withholding」(英語のみ)をご覧ください。



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