シンガポール、EP取得に関しポイントに基づく新たな審査制度「COMPASS」の導入

シンガポール モビリティー:イミグレーションアラート ‐ 2022年3月

エグゼクティブサマリー

シンガポール政府は外国人労働者の就労ビザ(EP)申請に関し、ポイントに基づく新たな審査制度(Complementarity Assessment, 通称 ”COMPASS”)の導入を発表しました。本制度は新規申請に関しては2023年9月1日から、既存ビザの更新に関しては2024年9月1日から適用となります。

審査基準

COMPASSはシンガポール国内において専門家、管理職、経営者、技術者(PMET*)として活躍する高度人材を海外から誘致し、国内労働市場の強化と多様性の確保を目的としています。

本制度では、EP申請者は4種の基礎基準と2種のボーナス基準において合計40ポイント以上を獲得する必要があります。各基準は(戦略的経済優先順位を除いて)最高20ポイントとなっており、また個人と企業の2つの観点から評価されます。

  • 給与:申請者の年齢及びセクターによって定められる給与水準を満たす必要があります。所属するセクターにおけるPMET全体の90パーセンタイル以上の場合、最高ポイントを獲得できます。
  • スキル: 申請者の学歴にシンガポール政府の定める一流教育機関(Top-tier institution)が含まれている場合、最高ポイントを獲得できます。
  • 多様性:申請者の国籍が(雇用する側のシンガポール法人の)従業員全体の5%未満の場合、最高ポイントを獲得できます。
  • 現地雇用への貢献:雇用する側であるシンガポール法人の現地従業員(PMET)総数が、属するサブセクターにおいて50パーセンタイル以上の場合、最高ポイントを獲得できます。
  • スキルボーナス:申請者の職種がシンガポール政府の定める「人材不足職種リスト(Shortage Occupation List, またはSOL)」に含まれる場合、ボーナスポイントが加算されます。SOLは現行の国内労働市場において人材不足と考えられる高度専門技術を要する職種が含まれ、2023年3月までに公表される予定です。
  • 戦略的経済優先順位:雇用する側のシンガポール法人が政府公認の特定プログラムに参加、あるいは一定の評価基準を達成するなどにより、国内労働力またはエコシステムの向上・発展への貢献が実証できる場合、ボーナスポイントが加算されます。

*PMETとはProfessionals, Managers, Executives and Technicians の略であり、MOMによれば月額報酬3,000シンガポール・ドル以上の従業員は全てPMETとみなされる。

個人属性企業属性
基礎基準
C1. 給与
(現地PMETの給与水準と比較)

90パーセンタイル以上:20 ポイント
65~90パーセンタイル:10 ポイント
65パーセンタイル未満:0 ポイント
C3. 多様性
(国籍多様性の向上へ貢献するか*)

5%未満:20ポイント
5~25%:10ポイント
25%以上:0ポイント

C2. スキル
(申請者の保有資格に基づく)

一流教育機関:20 ポイント
学位相当の資格:10 ポイント
学位相当の資格なし:0 ポイント
C4. 現地雇用への貢献
(同じセクターの現地従業員(PMET)の比率に基づく*)**

50パーセンタイル以上:20ポイント
20~50パーセンタイル:10ポイント
20パーセンタイル未満:0ポイント
ボーナス基準
C5. スキルボーナス
(申請者の職種がSOLに該当するか)

SOLに該当する場合:20ポイント***
C6. 戦略的経済優先順位
(シンガポール政府との協力関係)

イノベーションまたは国際化活動に関し
特定の評価基準を達成する場合: 10ポイント

* PMETが25人未満の小規模の企業ではC3・C4は無条件で各10ポイントとなる
(なお、MOMによれば月額報酬3,000シンガポール・ドル以上の従業員は全てPMETとみなされる)

** シンガポール法人の現地従業員(PMET)の比率が70%以上(経済全体の20パーセンタイル以上に相当)であれば10ポイント以上加算される

*** ただし従業員全体の3分の1以上が申請者と同じ国籍である場合、スキルボーナスは10ポイントに減点される

COMPASSの詳細に関してはMinistry of Manpower (MOM)ウェブサイト(こちら)もご参照ください。
 

COMPASSの免除要件

以下のいずれかに該当する場合、COMPASSの適用は免除されます。

  • 申請者の月額固定給が20,000シンガポール・ドル以上であること
  • 世界貿易機関のサービス貿易に関する一般協定、またはシンガポールが加盟する自由貿易協定に基づく「海外企業内転勤者(ICT)」として申請する場合
  • 申請者が1カ月未満の短期滞在者であること
     

新制度の透明性向上に向けて

新制度の導入に伴い、シンガポール政府はビザスポンサーとなる企業を支援するためCOMPASSの事前評価ツールを導入することを発表しました。当該ツールは、外国人労働者の雇用に関しシンガポール国内法人に対し新制度の透明性と明瞭性を高めることを目指しています。
 

今後の動向に関して

EYでは本制度に係る今後の動向を引き続き注視していきます。ご不明点等がございましたら、私どもの専門家までお問い合わせください。


お問い合わせ先

木島 祥登 パートナー

中尾 美奈子 シニアマネージャー


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