英国、法人税確定申告書の変更

2021年財政法におけるハイブリッドおよびその他のミスマッチルールの変更に伴い、2022年4月6日、英国歳入関税庁(HMRC)は英国法人税確定申告書の別紙であるCT600Bの修正版を導入しました。この修正版CT600Bにより10の新たな記載欄が設けられ、企業はハイブリッド事業体およびハイブリッド手段に関連する特定の情報を確定申告書に記載することが求められるようになりました。

注目すべき点は以下のとおりです:

  • Ÿ確定申告書を提出するすべての英国企業は、ハイブリッド事業体であるかどうか、および同一の支配関係に属するグループ内のハイブリッド事業体と取引しているかどうかを開示することが必要になった
  • 新CT600Bは、会計期間がいつかに関わらず、2022年4月6日以降に提出される分から適用される。例えば、3月末決算の会社が本来2022年3月31日の提出期限までにすべきであった2021年3月期分の申告書がその期限までに提出されず、2022年4月6日以降に提出された場合、新CT600Bをもって提出する必要がある
  • ハイブリッド金融手段は、課税上の取扱いが異なる結果となる場合にのみ開示する必要がある(ハイブリッドルール第3章)。同様に、多国籍企業への支払いが行われた場合における恒久的施設(PE)に係る過大損金算入(第6章)、およびある支払いが支払者国において控除され、かつ受領者国において通常所得に算入されない場合においても(第8章)、課税上の取扱いが異なる結果となる場合にのみ開示することが要求される
  • また、ハイブリッド効果による影響の有無や、その影響額の合計値についても具体的に開示する必要がある
  • CT600Bには、第12章Aに基づく所得のグループ配分の申告について開示する欄がある

日系企業グループにおいては、その英国子会社がハイブリッド事業体でない場合、また、ハイブリッド事業体と関連がない場合やハイブリッド金融手段を有さない場合であったとしても、開示自体はなお必要となる点が重要です。そのため、対応が未実施の場合には上記開示義務に対応すべくハイブリッド体制に対するレビューを確実に行うことが必要になると思われます。

現在までにハイブリッドルールに関するお問い合わせは少数ですが、これまでのお問い合わせは通常、ハイブリッドルールに関する税額計算に係る特定の開示があった場合に発生するものでした。CT600Bに係る上記変更の結果、確定申告書での開示項目が増え、特に、ハイブリッド事業体に関する開示は取引やアレンジメントからハイブリッド効果が生じない場合でも必要となるため、より多くの開示が必要になります。これを受け、この分野でのお問い合わせが今後増加すると思われます。日系企業グループは、ハイブリッドルールに関するコンプライアンス義務をどのように管理しているかを説明できるように準備をしておく必要があり(これは企業のリスク評価に影響し、英国企業が税務調査の対象となる頻度に影響すると経験上考えられます)、コンプライアンスサイクルの一環としてその状況を見直すことが望まれます。

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リチャード・ジョンストン(Richard Johnston) アソシエートパートナー