EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2022年7月20日、英国政府は、経済協力開発機構(OECD)の税源浸食と利益移転(BEPS)2.0第2の柱に関するコンサルテーション(2022年4月4日に締切済み)に対して寄せられた回答の要約を公表しました。併せて英国政府は、「新たな多国籍トップアップ税の導入」に関する法案(以下、「本法案」)を発表しました。
本法案は、2021年12月20日にOECDから公表された、グローバルミニマム課税ルールの法案のひな型を実質的に各国政府に提供する「グローバル税源浸食防止(GloBE)モデルルール」に基づいています。本法案では所得合算ルール(IIR)の適用が取り上げられていますが、英国の軽課税支払ルール(UTPR)の時期および制度設計の詳細は盛り込まれていません。UTPRに関する最新情報は、幅広い国際的な動向を踏まえた上で今後公表される見込みです。本法案では、IIRが2023年12月31日以降に開始する会計期間に適用される予定であることが確認されています。
当社は今回の発表内容の詳細について検討を継続していますが、本アラートでは、公表済みのさまざまな文書から判明した重要な事項を要約してお伝えします。
明確化が行われた論点や、さらなる国際的な議論が必要とされる論点には以下が含まれます。
管理、コンプライアンスおよび報告をめぐる以下の論点について、コンサルテーションの政府回答における明確化が行われています。
米国が導入している米国外軽課税無形資産所得(GILTI)制度について、GloBEモデルルールとの整合を図るための必要条件の変更がさらに遅延する状況における同制度への対応方法が、コンサルテーションの政府回答に示されています。
GILTI制度に基づき米国で納付されたあらゆる税額は、IIRとUTPR両方の目的において、米国企業の被支配外国法人(CFC)の調整後対象税金に含められると予想されます。ただし、GILTIの合算による追加的な米国の税額、およびかかるGILTIの合算に関わっている構成事業体のCFCに対する当該税額の配賦方法を決定するためのルールが必要であると認識されています。
この仕組みが実務上どのように機能する見込みであるか、そしてこの仕組みが包摂的枠組みの他の参加国・地域によって模倣されるかどうかについてのさらなる詳細は、現時点では不明です。
英国政府は、ある国・地域がモデルルールに密接に整合した適格国内ミニマム税(QDMT)を導入している場合、ルールの運用を停止するセーフハーバーを支持しています。また英国政府は、OECDの包摂的枠組みによって重課税とみなされた国・地域においてモデルルールをおおむね停止する「ホワイトリスト」型のセーフハーバーを、多くの利害関係者が支持していたと認識しています。ただし、モデルルールはある国・地域の実効税率に着目したものであるため、法定税率に基づくセーフハーバーは依然として調整が必要になる可能性が高く、これにより簡素化のメリットが失われる可能性があります。このことを踏まえると、包摂的枠組みの参加国・地域間でかかるセーフハーバーの導入の合意がなされるかどうかについては不確実性が残されています。
英国政府は、英国のDMTへの強い賛成論があるとの見方を維持するとともに、DMTが導入された場合の基準値は第2の柱のルールを反映した7億5,000万ユーロとなること、およびこの基準値が英国本拠のMNEと外国本拠のMNEの両方に適用されることを確認しています。加えて英国政府は、経済的な歪みを防ぐ目的で、完全国内グループにもDMTを適用することのコストとメリットを検討する予定です。ただし、今のところDMTの導入は確約されていないため、英国政府はさらなるコメントを求めています。
本法案へのコメントは2022年9月14日まで募集されています。英国政府は寄せられたフィードバックを分析した上で、予算案発表後の今年末に発表される予定の財政法案に本法案の措置を盛り込む考えです。財政法案の最終的な内容は財務相の決定となり、さらに保守党党首選の決選投票の勝者(リシ・スナク氏またはエリザベス・トラス氏のいずれか)の影響下に置かれることになります。
関谷 浩一 パートナー
Richard Johnston アソシエートパートナー
久保山 直 アソシエートパートナー
荒木 知 ディレクター
大堀 秀樹 ディレクター
Rebecca McKavanagh シニアマネージャー
野々村 昌樹 マネージャー
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