ドイツ財務省、知的財産に係る域外課税に関する規定を含む2022年度の税法改正第一次草案を公表

  • 本法律は、知的財産の権利がドイツの登録原簿等に登録されているという理由のみで、それら権利に関する特定のロイヤルティ収入およびキャピタルゲインについての非居住者課税を撤廃すること提案するものである。これは、ドイツの知的財産に係る域外課税に関して議論されてきた問題において極めて重要な進展である。
  • 本提案は、2023年に知的財産に係る域外課税をおおむね撤廃し、非関連間取引については遡及的に廃止するものである。
  • 本草案が立法化される見込みや時期は現時点では不明であるが、この問題に対応し、次のステップを見定めるため納税者にとっては、この提案を考慮する必要がある。

エグゼクティブサマリー

2022年7月28日、ドイツ財務省(MoF)は2022年度の税法改正第一草案を公表しました。本草案では、ドイツの不動産評価ルールの変更、居住用建物の償却率の引き上げおよび個人の利益に繋がるその他複数の変更等(例えば、年金拠出金の控除額引き上げ、キャピタルゲインの一括控除額の引き上げ)が提案されています。

重要な点は、MoFが、ドイツの登録原簿等に登録されているという理由のみで、それら権利に関するロイヤルティ収入およびキャピタルゲインについての非居住者課税を廃止しようとしていることです。

  • 第三者間取引に遡及して適用。
  • ほとんどのケースでは2023年1月1日付で適用。ただし、欧州連合(EU)の税務面で非協力的な居住地国・地域のリストに記載されている国・地域に居住する納税者(ドイツ関連の知的財産(IP)のライセンサー(特許権許諾者)またはセラー(売主))については、現行ルールを維持。

詳細解説

知的財産に係る域外課税

本草案では、知的財産権取引に関するいわゆる「域外」課税に対処するために、所得税法(ITA)第49条(1)項2f号および6号の修正を提案しています。「域外」知的財産取引の対象には、ドイツ以外の当事者間での知的財産権のライセンス供与または売却、売却の場合はドイツ以外の当事者による売却が含まれます。

  • ドイツ法規定の文言に基づき、ドイツ居住者以外の者が、ドイツの登録原簿に登録されている知的財産(ドイツ関連知的財産)をライセンス、または売却する場合、ドイツは国内法に基づく課税権を主張することができる。
  • この法律を素直に解釈すると、ドイツ非居住者の間でなされた、または売却の場合はドイツ非居住者による、ドイツ関連知的財産権のライセンス供与または売却取引がドイツの課税権の対象になり得る。なお、同法律においては、関連当事者取引と非関連当事者取引は区別されていない。

現行の草案では、非関連当事者間取引(一般に25%以上の株式保有で関連当事者になる)に関するすべての未更正事案、すなわち遡及的に、このルールを廃止しようとしています。企業間取引については、一般に2023年1月1日付で廃止されます。

唯一の例外として、EUの税務面で非協力的な居住地国・地域のリストに記載された国・地域に居住する納税者に対するルールを効果的に維持するため、本草案では、租税回避および不公正な租税競争を防止するための法律に関する追加の変更を提案しています(この法律に関する詳細は、2021年2月17日付、 EY Global Tax Alert「German Ministry of Finance publishes working draft of Act to Combat Tax Avoidance and Unfair Tax Competition」(英語のみ)をご参照ください)。

MoFは、本草案の解説において、最近ドイツ議会の財政委員会に提出された、ドイツの登録原簿等に登録されている権利に係るロイヤルティ収入およびキャピタルゲインに対する非居住者課税の評価に関する報告書に言及し (この法律に関する詳細は、2022年6月17日付、EY Global Tax Alert「German Ministry of Finance issues report on extraterritorial taxation of intellectual property to German Parliament」、2022年6月22日付EY Japan税務アラート「ドイツ財務省、知的財産の域外課税に関する報告書をドイツ連邦議会に提出」をご参照ください)、過去このルールによって見込まれる税収は、将来的に継続せず、こうしたケースでは膨大な行政負担を伴うことが一般的であることが、この変更の主な理由であると改めて強調しています。

本草案が立法化される見込みや時期、および立法過程でどの程度の変更が加えられるのかについては現時点では明らかにされていません。しかし、年度税法改正と同様に、政府および立法機関での議論と最終的な法制化は2022年後半に行われるものと予想されています。

要約すると、知的財産に係る域外課税に関する提案は前向きなものです。しかし、2023年時点でこのルールを廃止するのが企業間のケースに限られるとするならば、租税条約適用ケースにおける「簡易手続」での免除申請は(背景については、 2022年6月29日付、最新の EY Global Tax Alert「German Ministry of Finance extends deadline for applications for retroactive exemption in “clear” treaty cases to 30 June 2023」、2022年7月4日付EY Japan税務アラート「ドイツ財務省、「明確な」租税条約適用事案について遡及免除の申請期限を2023年6月30日まで延長」をご参照ください) 、過去および2022年末までの期間については依然として必要になると考えられます。

さらなる変更案

本草案では、個人に有益な複数の変更を定めており、ドイツでの情報交換および税務手続きのデジタル化を促進するルールが含まれます。

加えて、本草案では、新たに発表された不動産評価基準に現行法を整合させるよう、不動産の評価の見直しについて規定しています。また、これらの改訂規則は、ドイツ不動産譲渡税の評価プロセスに影響を与える可能性があります。

さらに、この草案は、タックスヘイブン対策税制を明確にし、例えば、特定の債券が公募される場合に、この法律に従って源泉徴収税の対象から明示的に除外することが定められています。

お問い合わせ先

mitsunori.ota@jp.ey.com 太田 光範 アソシエートパートナー

gerald.lies@jp.ey.com Gerald Lies シニアマネージャー

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