中国、科学技術革新支援に向けた税引前控除の拡充に関する公告他

中国JBS‐中国税務および投資速報(日本語要約版)2022年10月

税務法規

1. 企業所得税

・科学技術革新支援に向けた税引前控除の拡充に関する公告(財政部、国家税務総局、科学技術部公告2022年28号)

概要

2022年9月7日、李克強国務院総理は国務院常務会議(以下、「会議」)を主催し、就業・創業の支援政策の強化、就業機会の開拓、市場主体と経済の新機能の育成・増強などの施策を打ち出しました。

会議において提起された施策に対応し、財政部、国家税務総局及び科学技術部は2022年9月22日付で、財政部、国家税務総局、科学技術部公告2022年28号(以下、「28号公告」)を公布し、科学技術革新に対する税引前控除の拡充を明らかにしました。

主な内容は以下のとおりです。

① 新規購入する設備・器具に係る企業所得税の税引前控除

ハイテク企業は2022年10月1日から2022年12月31日までに新たに購入する設備・器具について、当年度の課税所得額の計算時に一括して全額控除することができ、かつ、100%の加算控除も認められます。当優遇政策の主な内容は下表のとおりです。

項目

詳細な内容

    適用対象

          2022年第4四半期において、その業績を問わずハイテク企業の資格を持っている企業

   条件を満たす設備・器具    

  • 購入時点が2022年第4四半期である。
  • 貨幣で購入した固定資産は、分割払いまたは信用販売で購入した場合を除き、発票の発行時点により判断する。
  • 分割払いまたは信用販売で購入した固定資産は、固定資産の到着時点により判断する
  • 自社建設の固定資産は、工事完了時点により判断する。
  • 建物、建築物以外の固定資産である。

     管理方法    

  • 納税者自ら判断の上、申告により優遇を享受し、事後の調査に備えて関連資料を保存する。
  • 事後の調査に備え保存する関連資料は、企業が優遇を享受した当年の企業所得税の確定申告期間が終了した日の翌日から10年間保存しなければならない。

② 研究開発費用の税引前加算控除比率の引き上げ

現行制度下で研究開発費の税引前加算控除比率75%が適用される企業は、2022年第4四半期において、その税引前加算控除比率が100%に引き上げられます。

28号公告により、企業が2022年度の企業所得税確定申告において研究開発費用の税引前加算控除の優遇政策を享受し、その計算を行う場合の第4四半期の研究開発費用は、実際発生額または月数により按分計算した金額のいずれかを選択することができます。

按分計算する際の計算式は以下のとおりです。

  • 実際に発生した年間の研究開発費×2022年10月1日以降の経営月数÷2022年度の実際の経営月数

これにより、製造業企業及び科学技術型企業以外の適格企業は、第3四半期までは75%、第4四半期は100%の加算控除を適用できます。

2022年の期首より研究開発費用が継続的に発生している企業(研究開発費用の発生が第4四半期のみでない企業)の多くにとって、第4四半期に実際に発生した研究開発費用の金額、もしくは按分計算した金額のいずれを用いるかによって、最終的な加算控除額が異なることに留意する必要があります。

現行規定により、製造業企業及び科学技術型中小企業には100%の加算控除比率が適用され、その他の加算控除が適用される企業(タバコ製造業、宿泊・飲食業、卸売及び小売業、不動産業、賃貸及び商業・サービス業、娯楽業、財政部及び国家税務総局が定めるその他の業種に従事する企業を除く)には、75%の加算控除比率が適用されます。

28号公告及び国家税務総局の解釈においても、企業が何らかの理由により月の途中で経営を中断した場合の取扱については明らかにされていません。必要に応じ、主管税務当局への確認等が必要と考えられます。

関連する規定の全文は下記リンクをご参照ください。

28号公告
www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2022-09/27/content_5712999.htm
 

2. 投資奨励

・「外商投資奨励産業目録(2022年版)」(国家発展改革委員会、商務部令2022年52号)

概要

2022年10月26日、国家発展改革委員会及び商務部は、国家発展改革委員会、商務部令2022年52号により、「外商投資奨励産業目録 (2022年版)」(以下、「2022年版目録」)を共同で公布し、対外貿易のさらなる安定や外商投資奨励の範囲拡大を目指す意向が示されました。

2020年に公布された「外商投資奨励産業目録 (2020年版)」 (以下、「2020年版目録」)と比較して、「2022年版目録」では239条が追加され、167条が改訂されています。

「2022年版目録」の主な変更点は次のとおりです。

  • 引き続き、製造業を外商投資奨励の重点とし、産業サプライチェーンのレベルを向上させる。
  • 引き続き、サービス業と製造業の融合発展の促進を改訂の重点とする。
  • 各地方の労働力や特徴的な資源などの優位点を結集し、中西部目録の奨励範囲を拡大する。

その他、「外商投資奨励産業目録」で言及された、外商投資企業やプロジェクトが享受できる租税優遇措置は、主に次のとおりです。

  • 投資総額内であり、かつ条件を満たす自社用設備の輸入に対し、関税の免除政策を適用する。
  • 条件を満たす西部地区と海南省の奨励類外商投資企業に対し、15%の軽減税率で企業所得税を徴収する(西部地区の優遇政策適用期間は2021年1月1日~2030年12月31日、海南省の優遇政策適用期間は2020年1月1日~2024年12月31日)。

「2022年版目録」は2023年1月1日より適用され、同時に「2020年版目録」は廃止されます。

関連する規定の全文は下記リンクをご参照ください。

「2022年版目録」
www.ndrc.gov.cn/xxgk/zcfb/fzggwl/202210/t20221028_1339662.html?code=&state=123

 

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