中国、広州南沙における企業所得税優遇政策に関する通知他

中国JBS‐中国税務及び投資速報(日本語要約版)2022年11月

税務法規

1. 企業所得税

・「広州南沙における企業所得税優遇政策に関する通知」(財税2022年40号)

概要

広州南沙(以下「南沙」)の発展と広東・香港・マカオ間の全面的協力をさらに推進するため、財政部及び国家税務総局は2022年9月25日付で、財税2022年40号通達(以下「40号通達」)を公布し、南沙の企業所得税優遇政策を明確にしました。40号通達は2022年1月1日から2026年12月31日まで適用されます。

南沙の企業所得税優遇政策

40号通達における企業所得税優遇政策の概要を、以下の表にまとめています。

優遇政策の内容

40号通達及びその公式ガイドにより明示された具体的な内容

南沙先行起動区で設立され、実質的な運営を展開している奨励類産業企業は、15%の低減税率で企業所得税が徴収される。

適格企業は、次の2つの条件を同時に満たす必要がある。

  • 「広州南沙企業所得税優遇目録(2022年版)」(以下「南沙目録」、40号公告は後述のリンク参照)に規定された産業項目を主要業務とし、かつ主要業務収入が収入総額の60%以上を占めること。
  • 企業の実際の管理機構が南沙先行起動区1で設立され、企業の生産・経営、人員、財務、財産等の実質的かつ全面的な管理と統制を実施していること。

かつ、15%の優遇税率は、次の条件を満たす所得にのみ適用される。

  • 南沙先行起動区内で設立された、規定条件を満たす総機構及び支部機構の所得 または
  • 南沙先行起動区以外で総機構が設立された企業で、南沙先行起動区内で設立された規定条件を満たす支部機構の所得

総機構と、地域をまたいで経営する支部機構間における収入の配分方法は、現行の企業所得税政策を参照する必要がある

税務損失の繰越年限延長2

南沙で設立され、かつ2022年1月1日以降、ハイテク企業または科学技術型中小企業の資格を有する企業の未使用の税務損失は、翌年に繰り越すことができ、その繰越年限は最長13年である。具体的には、適格企業がハイテク企業や科学技術型中小企業として認定される以前の8年間に発生した欠損金を使用していない場合、繰り越しが認められ、繰越年限は最長13年まで延長される。

上記の条件を満たすハイテク企業または科学技術型中小企業は、同時に次の2つの条件も満たす必要がある。

  • 「南沙目録」でハイテク重点業種として列挙される35の産業に従事し、人工知能、集積回路、生命健康、先端装備、省エネ・環境保護等の分野を含んでいること。
  • ハイテク重点業種からの営業収益が収入総額の60%以上を占めていること。

その他の地区の企業所得税優遇政策のまとめ

上記の他、南沙及びその他の地域における、現行の企業所得税優遇政策を簡単にまとめています(優遇政策の適用要件は地域により異なりますので、ご留意ください。例えば、奨励業種の範囲は異なります。政策の詳細は、後述のリンクをご参照ください)。

地域
(対象期間)
参照規定

優遇政策の内容

15%の優遇税率

税務損失の繰越年限延長

単位当たり500万元以下、かつ条件を満たす資本的支出の全額の一括控除3、または単位当たり500万元超、かつ条件を満たす資本的支出の加速償却

新規の海外直接投資により取得した適格所得の企業所得税免除

南沙
(2022年1月1日から2026年12月31日まで)
粤財税〔2022〕38号

適用なし

適用なし

海南自由貿易港
(2020年1月1日から2024年12月31日まで)
財税〔2020〕31号

適用なし

横琴(珠海)
(2021年1月1日から発効)
財税〔2022〕19 号

適用なし

平潭
(2020年1月1日から2025年12月31日まで)
財税〔2021〕29号

適用なし

適用なし

適用なし

前海
(2020年1月1日から2025年12月31日まで)
財政部税務総局<关于延续深圳前海深港现代服务业合作区企业所得税优惠政策的通知>

適用なし

適用なし

適用なし

臨港自由貿易区(上海)
(2020年1月1日発効4)
財税〔2020〕38号

適用なし

適用なし

適用なし

西部地区
(2021年1月1日から2030年12月31日まで)
財政部税務総局 国家発展改革委公告2020年第23号

適用なし

適用なし

適用なし

なお、上記の地区(西部地区を除く)は、条件を満たす人材及び香港/台湾/マカオ居住者を対象とした個人所得税控除または補助金の優遇政策も別途提供しています。個別の状況及びニーズに応じて、これらの地域税制優遇の活用も検討することが推奨されます。

国発2022年13号通達(以下「13号通達」、「広州南沙における世界に向けた広東・香港・マカオ間の全面的協力を深めるための総体方案」)によると、3つの先行起動区は南沙湾、慶盛枢軸、南沙枢軸の3ブロックを指します。

財税2018年76号通達(以下、「76号通達」、「ハイテク企業及び科学技術型中小企業の欠損金繰越年限の延長に関する通知」)によると、2018年1月1日以降にハイテク企業または科学技術型中小企業として認定された企業は、資格を有する年度以前の5年間に発生した欠損金を使用していない場合、最長の繰越年限が5年から10年に延長されます(「企業所得税法」の規定からさらに5年延長されます)。

上の表に挙げた海南自由貿易港と横琴の資本的支出の税引前控除政策に加え、2022年第4四半期において、全国のハイテク企業は、2022年第4四半期の設備購入費用を当期の費用として一括計上し、課税所得額を計算する際に全額控除するとともに、100%の追加控除政策を享受することができます。

適格企業は設立日より5年間、優遇政策を享受することができます。
 

40号通達の内容は、下記リンクをご参照ください。

中華人民共和国国務院・財政部「税务总局关于广州南沙企业所得税优惠政策的通知」
czt.gd.gov.cn/attachment/0/505/505708/4038210.pdf

 

2. 関税

・「税関高級認証企業標準」の公布に関する公告(税関総署公告2022年106号)

概要

現行の規定によると、税関総署はその信用等級に基づき、企業を高級認証企業、信用不良企業、その他一般認証企業に分類しています。高級認証企業の資格を有する企業である、認証された中国の経営者(AEO)は、中国が締結したAEO相互認証協定により、利便的な通関や貿易保全を含む、貨物流通に関する各種の便宜措置を享受することができます。社会信用システム建設を推進し、いわゆる「放管服」改革をさらに深化させるため、税関総署は2022年10月28日付で、税関総署公告2022年106号を通じて、更新された「税関高級認証企業標準(2022年版)」(以下「2022年版標準」)を公布しました。更新前の税関総署公告2021年88号を通じて公布された「税関高級認証企業標準」(2021年版)(以下「元標準」)は同時に廃止されました。

一般標準(「2022年版標準」添付文書2)の他、「2022年版標準」は特殊な類型及び経営範囲の企業のために、単項標準リスト(「2022年版標準」添付文書3)を制定し、今般の更新前の従来標準における同様の標準リストの代替となりました。これにより、「2022年版標準」における標準項目はさらに統合・縮小され、標準項目の総数は「元標準」の269項目から94項目に減少しました。

関連する企業は高級認証企業の認証を行う前に、より高次での貿易利便化を享受するため、「2022年版標準」を参照し、実際の状況に基づいて自主的に評価することが推奨されます。

2022年版標準の内容は、下記リンクをご参照ください。

中華人民共和国税関総署「海关总署公告2022年第106号(关于公布《海关高级认证企业标准》的公告)」
www.customs.gov.cn/customs/302249/2480148/4658463/index.html

 

3. 個人所得税

・「広州南沙における個人所得税優遇政策の実施方法」(穂財規字2022年1号)

概要

「財税2022年29号通達」(以下「29号通達」、「広州南沙における個人所得税優遇政策に関する通知」)を着実に実施するため、広州市財政局と国家税務総局広州市税務局は2022年11月4日付で「穂財規字2022年1号通達」を公布し、広州南沙の個人所得税優遇政策について、その実施方法(以下「実施方法」)を明確にしました。

実施方法の要旨は次の通りです。

① 減免規則 

広州南沙で勤務する香港居住者に対して、その個人所得税の負担額が香港における負担税額を超える部分は免税となります。及び、広州南沙で勤務するマカオ居住者の個人所得税の負担税額がマカオにおける負担税額を超える部分は、免税となります。

南沙の香港・マカオ居住者に対する個人所得税の優遇策と、粤港澳グレーターベイエリアの海外ハイレベル人材と緊急不足人材に対する個人所得税の優遇策は同時に享受することができません。ただし全体的には、南沙の個人所得税の優遇政策がより納税者にとって有利となります。

② 減免条件

  • 納税者が香港またはマカオの居住者であること。
  • 納税年度において広州南沙に登録された香港・マカオ居住者で、実質的な運営企業やその他の機関に勤務・雇用され、または広州南沙で独立した個人労務を提供し、あるいは広州南沙で生産、経営活働に従事し、かつ広州南沙で法律に基づいて個人所得税を納付する者。
  • 法律を遵守し、本弁法の優遇政策を享受する前の3年間において、税収違反の記録がない香港・マカオ居住者。

③ 優遇対象となる個人所得

  • 南沙からの総合所得(給料所得、労務報酬所得、原稿料所得、特許権使用料所得を含む)
  • 南沙からの経営所得

④ 還付の申請

  • 南沙区政府が提供する人材補助に係る所得税の還付に関して、香港・マカオ居住者がその個人所得税につき本方法に規定する優遇を享受する場合は、年度申告時に還付手続を申請することになります。

⑤ 実施期間

実施方法の実施期間は、2022年1月1日から2026年12月31日までです。

 

4. 外商投資

・改定後の「上海市 多国籍企業地域本部設立奨励規定」の公布に関する通知(滬府規2022年17号)

概要

より高いレベルでの本部経済の発展を加速し、外資活用の品質と水準をさらに高めるため、上海市人民政府は2022年10月28日付で、「上海市多国籍企業の地域本部の設立を奨励する規定(2022年改訂)」(以下「2022年規定」)を公布し、より高水準で広範な分野にわたる、高程度の開放を目指しています。「2022年規定」は2022年11月1日より施行され、有効期限は2027年10月31日までです。

滬府規2019年31号通達を通じて公布した「上海市多国籍企業の地域本部の設立を奨励する規定 (2019)」 (以下「2019年規定」)と比較すると、「2022年規定」では以下の変更点に留意する必要があります。

  • 条件を満たす申告企業は、上海で地区本部・本部型機構及び事業部本部(「2022年規定」に追加された地区本部タイプ)(以下「地区本部」)の設立を申請する企業であり、以下の認定基準が提示されています。
    • 海外の親会社が直接または間接的に50%以上の持分を保有すること。
    • 申告企業に3年以内の深刻な信用不良行為がなく、あるいは申告日までに信用不良行為を回復していること。
  • 地区本部は、地区本部機能の発展を推進するための、投資、クロスボーダー資金の使用、通関、科学技術革新、商事登記、プロジェクト投資、人材導入などの利便化措置を享受できます。これには、以下の内容が含まれます。
    • 資金運用と管理において、上海はクロスボーダー資金のプーリング、資本プロジェクト外貨収入の活用、人民元のクロスボーダー決済などの面で企業に利便性を提供する。
    • 貿易の利便化において、上海は企業が海外貿易、物流センター、保税メンテナンスなどの新タイプの国際貿易を展開することを支援する。
    • 出入国において、上海は企業関系者の出入国手続、中国永住権の申請などに利便性を提供する。

2022年規定の内容は、下記のリンクをご参照ください。

上海市人民政府「关于印发修订后的《上海市鼓励跨国公司设立地区总部的规定》的通知」www.shanghai.gov.cn/nw12344/20221107/6fa86f4b65554f43bc9633fca378ffa9.html

 

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